レアな皆さん
題名の前に一々○○話と書くのがめんどうになってきたのでこの話から付けるの辞めます 笑
ではこの話からHHOのSecond Stage開始です!(≧∇≦)
8月5日。今日は遂にHHO初イベントが開催される日だ。
昨日は結局始まりの街でアクセルジェットホークを倒した報酬の整理をしており、解放された第二の街には行かなかった。やはりアクセルジェットホークら始まりの街周辺の最強のボスだけあって、出た報酬も中々良い物だった。
今日俺は珍しく朝の早い時間帯からHHOにログインしている。と言うのも実は昨日の夜、親友の三船北斗と電話で通話したのだが、その時今まですっかり忘れていた事を思い出したんだ。
『瞬矢、お前が俺と棟方と雫石さんに一緒にやろうぜって言ったんだろ?その本人がその事を忘れるってどんだけHHOが楽しみだったんだよ』
北斗との会話で出た約束とは、俺の学校の友達である棟方響子と雫石楓、それに北斗の四人でHHOをやろうぜって言う話の事だった。
今上げた三人は、俺と同じでHHOの初回当選に当たっており、同時期に第一陣としてHHOを開始していた。それを知った俺がなら一緒にやろうぜって声をかけたんだったんだが……正直すっかり忘れてた。ここ数日はHHOにかかり切りだった事もあって携帯もまともにチェックして無かったし、気付いたら通知が100件近く来ていた。うん、見た時めっちゃ驚いたよね。まさかあまりこう言う物には疎そうな雫石から自作顔文字で怒られるとは思っていなかった。
「あー……いや、ほんとごめん。明日向こうで会えるか?」
『ったく、んじゃリアル時間で朝の9:00頃に始まりの街の噴水の前な。プレイヤーネームはメラクでやってるから見つけたら声をかけろよ?棟方と雫石さんにも伝えておくから今度は忘れないように』
「はいはい、よろしくな」
と言うわけで今日の俺はこの時間からログインしています。
現在時刻はリアル時間で8:58約束の時間まであと少しなので約束の場所へと急ぐ。あ、因みに今日はアイギスは午前に部活動があるので今はいません。
「よし、着いた……ん?なんか人集りが出来てるな」
噴水の前に来た俺が見た物は数十人規模のプレイヤーの人集りと、その中心でわたわたしている三人のプレイヤーだった。
「なんの騒ぎだ?」
気になった俺はその人集りの中心に目を凝らしてみた。このゲームは意識して相手を見れば上部にカーソルが出る設定となっており、その機能を使ってその三人を見ると現れたカーソルの上に出た名前はこうだった。
メラク、シズク、ヒビキ。
(やばい、めっちゃ心当たりある……)
その瞬間俺は全てを察して回れ右で帰ろうかと思った。しかし既に約束を忘れていた手前、ここでも約束を破るのはどうかと思い直し、仕方無く彼等を救出する事にした。
「まぁしゃーないわな」
呟いて俺は背中に翼を展開させた。展開させた翼で浮かび上がった俺は、一旦少し高度を上げ人集りの中心の真上に位置する場所へと移動すると、そこから一気に高度を下げて人集りの中心へと突撃した。
「話は後だ俺に掴まれ」
そう短く告げてシズクと言う名のプレイヤーとヒビキと言う名のプレイヤーをそれぞれ片手で胸に抱え、メラクの襟を不自由な両手首で掴むと、即座に再び空へと飛翔した……ってやばい、めっちゃ重い!アテナのSTRなら行けるかと思ったけどやっぱり三人はきつい!
「うわっ!?なんだなんだ!?」
「きゃあ!今度は何よ一体!」
「空を飛んでますね。気持ち良いです」
「言ってる……場合、か、馬鹿……マジで重いんだが……」
ヨタヨタと危なげに飛ぶ俺と、唐突な出来事に混乱している三人。いや、シズクだけはなんか落ち着いているな。出来ればここで事情を説明したかったが無理。重過ぎる。
「やべ、も、無理……」
「ち、ちょっと待ってくれ!誰だか知らないけどもう少し頑張ってくれ!ここで離されたら落ちちまう!」
「落ちたら私死んじゃうんだけど!?」
「ゲームですから大丈夫ですよ。ですから今は空の旅を楽しみましょう」
「あそこに着地する……それが限界……」
俺は最後の力を振り絞って近くの建物の屋上に着地する。
このゲームで建物はとても忠実に再現されており、屋上にも立ち入る事が出来るような設定となっている。那須さんが頑張ったそうだ。
「はぁ、はぁ、さ、流石に三人同時に運ぶのはきつかった……お前ら重過ぎ……」
「ちょ、言うに事欠いて重いって失礼じゃない!?」
「ありがとうございました」
「ヒビキ止めとけ、この人は助けてくれたんだぞ。何処の誰かは知らないが助か……って、えええぇぇ!?ア、アテナ!?」
うん、この感じ間違い無くあいつらだわ。
「え?アテナってアレ?現在間違い無くHHO最強のプレイヤーの【戦男女】アテナ?」
「そう言えば確かに伝え聞く容姿に合致していますね」
「あーもう、お前らうるせぇ……こっちはお前ら運んで疲れてんだよ北斗、棟方、雫石」
「え、なんでアテナ……さんが俺たちのリアルネームを?……ってまさか!?」
そこでようやく察したようだ。
「そうだよ、俺だよ瞬矢だよ」
「「ええええええええ!!??」」
「あらあら」
どうでもいいかもしれないけど、さっきから雫石さん冷静過ぎませんかね?
***
数分後、ようやく落ち着いた北斗達が俺に詰め寄って来た。いや、雫石はずっと落ち着いていたんだけどな。
「え?マジで瞬矢がアテナなの?」
「ああ、お前も知ってるだろ?俺が神話とかが好きなの」
「だとしても驚いたわ。まさかHHO最強のプレイヤーが瞬矢だなんて」
「ですが妙に納得が行きますね。早神君ならそう呼ばれてもおかしくありません」
落ち着いて来たところでようやく事情説明には入れる。ここまで長かった……。
「ああ、ランダムにしたら偶然レア種族の天魔を引いたんだわ。んで、そこから更に隠しエリアの無音の洞窟を発見してな、そこで暫くレベリングしていたらいつの間にか現段階の最高レベルになっていた」
「マジか、確かに学校では朝にお前ら兄妹を見るとその日はいい日になるってジンクスはあるが、まさかそれがお前自身にも発揮されるとはなー」
北斗改めメラクがからかうような口調でそう言ってくるが何時もの事なので取り敢えず顔面にグーパンをしておいた。街中なら決闘モードにしなきゃダメージは通らないから問題無し。
「まぁ俺の事はどうせ広まってるからいいだろ。それより俺は何故お前達があんな集られてたのかが気になるね」
「三船が伸びちゃったから私が説明するね。と言っても見ての通りなんだけどね」
「だろうな、だってお前達……全員が未確認のレア種族なんだもんな」
そう、彼女達の種族は見るからに人間、エルフ、獣人、竜人、ドワーフ、妖精のどれにも当てはまらない姿をしているのだ。
メラクから説明を引き継いだ棟方……改めヒビキが言うには自分達の種族はメラクが死神、シズクが女神、自分が神狼らしい。
「ほへー……死神に女神に神狼ね。そりゃまた凄い」
そう言いながら俺はGMコールを行った。
『はい、こちらHHOゲームマスターです。どうなさいました?』
「どうも、アテナです。そちら、所長の那須麗子さんはいらっしゃいますか?」
「え?なんでGMコールしてるの?」
「早神君には何か考えがあるんでしょう」
「」←まだ伸びてる。
『はい、アテナ様ですね。所長から事情はお聞きしております。暫くお待ち下さい』
「よろしくお願いします」
そう言うと電話でよくある待ちのBGMが流れる。
『はいはーい♪お待たせしました麗子ちゃんだよー♪』
待つ事数十秒、コール先からやかましい声が響く。ハイテンション麗子さんだ。
「麗子さん、お忙しい中失礼します。ちょっと訪ねたい事がありまして」
『なになにー♪アテナちゃんからの電話なら私、重要な会議の最中でも出ちゃうよー☆』
「それは会議に集中して下さい。訪ねたいのはレア種族の事なんですよ」
注意しておかないとこの人なら本当にやりかねないからな。まぁ取り敢えず質問してしまおう。
『レア種族?それまたなんで?』
「実は俺の友人もHHOやってましてその全てがレア種族引いてるんですが、麗子さん何か仕込みました?」
『えぇ!?仕込んでなんか無いよ!?私そんな何かしそう?』
「はい、しそうです。それでどうなんですか?」
寧ろ常に何かを目論んでそうです。
『えーっと……ちょっと待ってねそのお友達のプレイヤーネーム教えてくれる?』
「メラク、ヒビキ、シズクです。後一応アイギスも」
『アイギスちゃんに仕込んだのは認めちゃう☆
中立種族のデータが欲しかったし、どうせならアテナちゃんに近しい人にそのアバターをあげようと考えたからねー♪あ、でも調べたところメラク、ヒビキ、シズクってプレイヤーには特に何もしてないねー☆完全に偶然♪』
やはり仕込んでたんかい!
「そうでしたか、でもどうしてこんな新しいレア種族がばんばん出て来るんですか?β版にはレア種族と言ったら天使と悪魔しかいなかったじゃないですか」
『あー……それはね……』
おや?麗子さんが珍しく歯切れが悪いぞ?
『実はβ版にも天使や悪魔以外のレア種族も幾つか入れていたんだけど、ちょっとレア種族の排出確率を低く設定し過ぎちゃって、本当に天使と悪魔しか引かれなかったんだよねー……だから本格稼働の時は排出確率を少し上げようって話になったんだけど……』
「だけど?」
『ミスって排出確率の桁を一つ大きくしちゃった♪それと今後の実装予定だった種族も間違って排出しちゃった♪てへっ☆』
おおい!?なにやってるんだこの人は!?
「何やってるんですか麗子さん……つまり確率が上がった上に新たな種族を追加しちゃったってことですか?」
『うん、本当はレア種族の排出確率は0.1%にしたかったのに1%にしちゃった♪後そのお友達の種族は今後追加する予定だった種族です♪』
現在のHHOの普及数は初版の1万本。そのうちの1%だから約100人程レア種族の人がいると言う計算になる。
「旦那さんに怒られませんでした?」
『あははー……1時間正座させられてこってり説教されました……あ、でもその後はベッドで優しくしてくれたよー☆』
「高校生に何て話するんですか……お忙しい中すみません、ご迷惑でしょうしもう切ります。何かありましたらまたその時にお伝えください」
『はいはーい♪アテナちゃんも何かあったら遠慮なく電話してねー☆』
そんな風に会話を終えた俺は改めて三人に向き直る。
「悪い、待たせたな」
「別に全然いいんだけどなんでGMコールしてたの?」
まぁ、それは気になるよな。別に隠す気もないし構わないんだけど。
「いや、実はなぜか俺の周辺にはレア種族を引く奴が多くてな。何か仕込まれてるんじゃないかと気になったから今GMに聞いてみたんだ。まぁ完全に偶然だったんだけどな」
「そうでしたか。確かに私達が三人でいたら毎回皆さんが集まってこられたので何か変だとは思っていたのですが、よく考えれば未確認のレア種族が三人も纏まってたら注目を浴びてしまいますよね」
そう言う事だ。まぁ約束をすっかり忘れていたのは俺にも多少責任はある。もっと早く気付いていれば、三人が厄介な目に遭う数を減らせていたかもしれないからな。
「まぁ何にせよ、約束忘れてて悪かったよ。これからイベントが始まるから、その内容次第ではパーティ組もうな」
「ほんとよもう。まぁ良いわ、あのアテナとパーティ組めるなんて光栄だしねー」
「まったくだ。そういやイベントって何時からだったっけ?」
「あら、やっと起きましたね三船君」
「10時からだ。現実時間の9:30に情報が公開されるらしい。その後こっちの時間の90分で準備を終えてイベント開始になるらしい」
時計を見ると今は9:20。こっちの時間で後30分ほどでイベントの情報が公開される。
「まぁなんだ、まだ少し時間あるみたいだからどうせなら決闘でもしようぜ。パーティ組むにしても誰がどんな役目でどんな風に動くかは把握しておかないとだしな」
俺は立ち上がり腰の剣に手を掛けながら言った。
「おっ、いいね。【戦男女】アテナの腕前を拝見させて貰おうかな」
「ふふーん♪私達、初日からパーティ組んでて中々連携取れてるのよー?簡単には負け無いんだから!」
「私も早神君とお手合わせしたいです。その胸お借りしますね」
あれー?ここにいるのは四人なんだから普通は2対2のタッグマッチじゃないの?三人とも完全に俺と3対1で戦う雰囲気なんですけど……
ま、いっか。その方が楽しそうだし。
「よし、かかってこい!俺がソロで磨いてきたプレイヤースキルをみせてやるぜ!」
そうして、俺対メラク達のPVPが始まった。




