3話 天魔
本日二話目の投稿。不定期更新ならこんな時もあるよね!
そこを一言で表すなら花畑だった。チューリップに似た花(というか多分色を弄っただけで本物チューリップだと思う)やらコスモスに似た花やら何故か季節が違うはずのアサガオやヒマワリまである。
「何だここは……?」
俺はとにかく困惑した。確か扉を潜ったら急に視界が暗転して気付いたら周りは一面の花畑。これで困惑しない奴は凄いと思う。
「どうもー♪チュートリアル天魔担当のお助けNPCラビィで〜す♪」
俺が困惑していると、不意にテンションが妙に高い女の子が現れた。
「えっと……何?」
思わずそう返してしまったが、その女の子は気にした様子も無く、満面の笑みで俺の疑問に答えてくれた。
「んもうちゃんと聞いてよね!プンプン!アタシはチュートリアル天魔担当のお助けNPCのラビィちゃんだよ〜♪ほらほらこっちも自己紹介したんだからそっちも自己紹介してよ〜☆」
とにかく高いテンションと語尾に星が付く喋りに思わずビビってしまったが、とにかく彼女に自己紹介することにした。
「えっと……この度天魔の種族を頂いた「かったーい!もっと砕けて喋ろうぜ☆」あ、はい……」
折角丁寧に話したのにまさかの完全否定ですよはい。
「改めて、今回天魔の種族を運良く引き当てたアテナだ。この種族の使い方を学ぶ為にここに来た。君が教えてくれるのか?」
俺は素の口調で自己紹介と目的を簡単に伝え、相手の反応を待つ。
「ん〜オッケーい♪うんうんやっぱり君くらいの子供はその位が一番可愛いよ☆」
そっちの方が子供みたいだろが!とツッコミを入れたかったが、何か無意味な争いになりそうなのでやめといた。
「でもね〜今回教えるのはアタシじゃ無いんだ〜☆普段はアタシが教えたかったんだけど今日は特別な人に来て貰ってるんだ〜☆おーい那須りーん」
ラビィがそう言うと、奥の方から一人の男性がやって来た。
「おいラビィ!私の事を那須りんなどと呼ぶな!恥ずかしいだろうが!」
「えー良い年して恥ずかしいとか寒いよ〜もうちょいマシな言い方無いのかい☆」
「くそっ!誰だこんなめんどうな性格にプログラミングした奴は!帰ったら見つけ出して説教してやる!」
俺は完全に置いてけぼりだった。えーっと……多分この人の名前は那須さんかな?どうやらこのゲームの制作に関わった人っぽいけど……。
「えーコホンこんにちはアテ「今時コホンとかふっるーい☆」うるさい!少し黙ってろラビィ!……失礼した。改めて自己紹介をしよう。私はHHO制作チームのチーフを勤めている那須 隆一と言う者だ。今回は君が引いた天魔について説明しに来た」
やはり制作に関わる人だったか……しかもチーフって事は結構偉い人何だな。
「ご丁寧にどうも。アテナです。あっ本名を名乗った方がよろしかったですか?」
「もうアテなんってば律儀〜♪那須りんに敬語何て不要なのに〜☆」
「だからお前は黙ってろ!全くホント誰なんだこいつのプログラミングした奴!……っと、少し取り乱してしまったね。本名は不要だ。あくまでも私は説明に来ただけであってリアルの情報とかは求めていないからな。私はNPCとして考えてくれても構わない。寧ろそう考えてくれた方が良い」
何かこの二人のコントが面白くなってきてしまった……いやいや!この人はこのゲームを作ってくれた人で、尊敬するべき人間なんだ!最低限の敬意は持たないと!
「了解しました。ではこのままで。あの、早速ですが製作者自らこちらに来るということは、何かこの種族に問題があるんでしょうか?」
とにかく話を進めるのが得策だろう。そう考えた俺は那須さんにそう尋ねる。
「いや、そういうわけでは無い。ただその種族は特別でね……」
「特別……ですか?」
「ああ。その種族は所長が面白がって入れた種族でね、十億分の一の確率に設定された所謂バランスブレイカーと言える種族なんだ。早速だがステータスを開いて見てくれないか?」
俺は言われた通りにステータスを開く。開き方は簡単で、ステータスと念じながら手を左から右に払うと、その場にホログラムとして出現させられる。そこで観覧モードを解除して、相手にも見えるように設定することで、自分以外の相手にステータスやアイテムを見せる事が可能。
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名前:アテナ
LV:1
武器:無し
防具:無し
装飾:無し
HP:300/300
MP:150/150
STM:無限
STR:150
VIT:100
INT:200
SAN:150
AGI:300
LUCK:999.999(カンスト)
能力:【「天魔翼生成」「天魔従属」「魔王化」「神化」「天魔の瞳」】
スキル:【「天魔創造」「森羅万象」】
称号:「運に愛されし者」「天地統べる者」「ヘルプに好かれし者」
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初めて見たがこれは凄いな……レベル1のステータスじゃないぞこれ……てかSTM無限って……。
「あの……何ですかこのステータス?」
俺は無意識にそう聞いていた。那須さんはその問いに答えよとしてくれたが、そこでラビィが横入りをして来た。
「はいはーい!そこはアタシがご説明しま〜す♪そのステータスはねぇ〜同レベルの通常種族で2倍、他のレア種族では同レベルの1.5倍くらいのステータスなのです!理由は簡単!天魔という種族の設定は、天国側の最上位種族神と地獄側の最上位種族魔王のハーフと言う設定であり、その最上位種族の良いとこ取りをして種族がアテなんの引いた天魔と言う種族なのです!だ・か・ら☆アテなんの種族天魔は、このゲームの中では最強の種族なんだよ☆おめでとー♪」
さっきはスルーしたけどラビィの中では俺の名前はアテなんに決定しているのか……まぁ取り敢えず今はそれは置いとこう。
俺は確認の為に那須さんに視線を向けると、那須さんは頭が痛いと言わんばかりの態度で小さく肯定した。
「所長さんは何てものを作ったんだ……」
無意識に口から出た言葉に那須さんも同意を示してくれた。
「所長は能力は高いんだが、如何せん遊び癖が多過ぎる方なんだ……まぁつまり何が言いたいかと言うと、きちんとその種族の能力を把握して無いと宝の持ち腐れと言うことだ。君がその種族を使いこなせるようにするため私はこうして直接出向いて来たんだ」
成る程な……確かにこの種族はバランスブレイカー過ぎるからな、上手く使いこなさないと本当に宝の持ち腐れだ。それどころか他のプレイヤーからの反感を貰うかもしれない。
「まあ良い。とにかく次は能力やスキルの効果を確認してみてくれ」
那須さんはやり方は分かるだろう?と言う目線を寄越して来たので、それに大丈夫だと目線で返し、能力の「天魔翼生成」から見ていく。
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天魔翼生成
自らの意思で天使の翼と悪魔の翼を自由に生成が出来る。慣れれば空を飛ぶ事も可能。その際にスタミナを消費しながら飛ぶので、スタミナの残量には注意が必要。
魔王化
一定時間悪魔系最上位種族魔王の能力を扱う事が可能。効果終了後は一時的に全てのステータスが通常時の50%になる状態異常呪いを受ける。
神化
一定時間天使系最上位種族神の能力を扱う事が可能。効果終了後は一時的に全てのスキルが一定時間使用不可になる状態異常呪いを受ける。
天魔の瞳
ありとあらゆる攻撃を見切る事が出来る天眼の能力と、相手を状態異常にする魔眼の能力が発動可能。また、同時使用も可能になるが、MPの消費量が倍になる。
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うん分かっていたけどチート過ぎる。何だよこの天魔翼生成って。スタミナ無限の俺は永遠に飛んでられるじゃん!
天魔の瞳とかは最早チートの域を超えている。MPは無限じゃ無いけどそれでも十分過ぎる能力だ。だけど二つだけ変だと思える所がある。魔王化と神化だ。
「バランスブレイカーと言うのはよく分かりましたが、この魔王化と神化は変だと思うんですが……だってこの種族は神や魔王より上位の種族なんですよね?」
那須さんは気付いたかと言う風に眉を少し動かし、俺の問いに答えようとしてくれだが、またしてもラビィに邪魔されて。
那須さんの額に青筋が浮かぶ。
結構本気でラビィをプログラミングした人は危ないと思う。
「それは……」
「それはねぇ進化能力なんだ!」
「進化能力?」
意味が分からず同じ言葉を返してしまう、
「進化能力とはプレイヤーの成長に合わせて進化して行く能力の事だ。それと同じで進化スキルってのもある。魔王化と神化は最終的に統合されて魔神王化となる。ま、それはかなり先の事だから今は気にしなくていい。それよりスキルも調べてみてくれ」
俺は那須さんの勧め通りスキルの説明を確認した。
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天魔創造
自分より下位の天使系モンスターと同じく自分より下位の悪魔系モンスターをMPと引き替えに創り出す事が可能。これによって創造させられたモンスターは戦闘終了時プレイヤーの経験値として取り込まれ、消滅する。
森羅万象
自身の実力に見合った場合に限り、ありとあらゆる事象に干渉する事が可能。
天魔従属
天使系モンスター及び悪魔系モンスターを従魔にする事が可能。成功率は自身の実力と行動に依存。
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分かっているはずなんだがやはりチートだ。確か天使系と悪魔系の魔物は従魔に出来ない筈なんだが……。
天魔創造はレベリングにはもってこいの能力だ。自分より下位ということは余り効率は良く無いけど、通常の戦闘より多くの経験値を取り込めるのは素直に嬉しい。森羅万象については最早チートとしか言えない。何だよ事象に干渉って!
「うわぁ……スキルまでチートくせー……。流石十億分の一の確率の種族だわ……」
「まぁ、普通は引けない種族だからな。
でもま、これで君の能力は大体分かっただろ?それをどう使って行くかは君次第だ。
さて、私はもう行くとしよう。能力やスキルの試し撃ち等にはラビィを使ってくれ。私はラビィをプログラミングした者に説教に行って来る」
そう言って那須さんはログアウトして行ってしまった。
「あーあ那須りん行っちゃったー楽しかったのになぁ」
「そうだな。俺もさっさと遊びたいからサクッとチュートリアル終わらせてくれよ」
「んーりょーかい♪と言っても大体は那須りんが教えちゃったからアタシが教えられる事と言っても余り無いけどねー☆」
ラビィは先程と変わらずのテンションで説明をしくれる。何故か妙に分かり易いって、事に腹立つが、教えを理解出来ることは良いことだ。俺は素直にラビィの説明を聞いては実戦。聞いては実戦を繰り返した。
三話を読んでどうでしたか?僕的にはちょっと下手くそかな〜って思っているので、おかしい点があったら感想等にドンドン送って下さい。皆様の意見をなるべく聞き入れて改訂させて頂きますので。