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Heaven&Hell Online  作者: 夜桜
First Stage
27/40

27話 アイテムのお話

お久しぶりです。夜桜です。

普段は忙しくてなかなか更新出来ず申し訳ありません。ですが次の水曜あたりまではそこそこまともな時間が取れそうなのでこの期に色々と更新して行きたいと思います!

「いやー、やっぱり可愛いなこの娘はー♪私も張り切って設計とプログラミングをした甲斐があったってもんだよ!」


「この混沌の巫女を幼くしたようなNPCを設計したのは貴女ですか……それで?これはどう言う事なんですか?」


俺のコートの裾を握っている混沌の幼女 (仮)を撫でようとしゃがんだ麗子さんだったが、混沌の幼女はそれをサッと躱して俺の背中へと隠れた。


()けられた!?……ってそうだった、この娘に人見知りって設定を入れたの私だ」


混沌の幼女に避けられた事に大袈裟な反応を見せた麗子さんだったが、直ぐにこう言う設定にしたのは自分だったと立ち直り、潔く諦めて立ち上がった。


「これはね、アテナちゃんにあげた《主の証》の効果なんだ。

《主の証》の効果はその名の通りアテナちゃんを彼女の主となる存在に変えるものだったんだよ♪」


つまりこの《主の証》ってのは偶にある特定のモンスターをテイムするのに必要なアイテムみたいなもんか?


「まぁそんなところだねー。正確な効果は”使用する事で混沌の巫女を自身の使い魔として召喚する事が可能”って感じだったかな〜」


俺が尋ねると、麗子さんはそう言って頷いた。

俺は相変わらずコートの裾を握って背中に隠れている小さな混沌の巫女に向き直って、しゃがんで目線を合わせながら撫でると、混沌の巫女は気持ち良さそうに目を細めた。


「これからは俺がお前の主だ。よろしくな」


「……うん」


混沌の巫女はコクリと頷きながら小さな声で同意を示してくれた。


「よし、ならお前の名前は月夜(ツクヨ)だ。名前の由来はその夜の闇のような漆黒の黒髪とその中で輝く月のような瞳だ。これから一緒に頑張ろうなツクヨ」


「ツクヨ……ツクヨ……うん!わたしツクヨ!」


混沌の巫女改め、ツクヨは自分の名前を噛み締めるように繰り返し呟くと、嬉しそうな笑顔を浮かべて抱きついて来た。


「ママ!わたしツクヨ!」


「ああ分かった分かっ…………ん?」


嬉しそうにひっついてくるツクヨに苦笑していると、何やら聞き捨てならない単語が聞こえた気がしたが……。


「どうしたのママ?」


気の所為じゃ無かったーーーー!?


「マ、ママぁ!?ツクヨ、念のために聞くがママって言うのは俺の事じゃないよな?」


「え?ママはママだよ?わたしにお名前くれたのはママでしょ?」


はい、完全に俺の事でしたー。何故だ?何故に俺がママとなっている?


「いいかツクヨ。俺はこれでも男なんだ。女と思われる事に対しては最早抵抗は無いけど、流石にママはダメだ」


俺はツクヨに言い聞かせるようにして語るが、ツクヨはよく分かっていないようで可愛らしく首を傾げている。隣では麗子さんが爆笑するのを必死に堪えている姿が見える。いいです、もういっその事遠慮無く笑ってくれた方がこちらも気が楽です……。


「ママって呼んだらダメなの……?」


ツクヨはうるうるとしながら上目遣いで俺を見上げて来る。


やめて!そんな悲し気な顔で俺を見ないで!


「ぷっ、くくっ、ア、アテナちゃん、これは逃げられ無いね。いいじゃないのマ・マ☆」


これは愉快だとばかりに麗子さんがそう言ってくるが俺はもうどうすればいいのか分からなくてあたふたしてしまって麗子さんの声が耳に入って来ない。


「分かった分かった!もうツクヨの好きに呼んでくれていいぞ!だから泣かないで!」


「やったぁ!」


そして遂に俺は折れた……。うん、NPCと分かっていても小さな女の子の涙には勝てなかったよ……。


「あははははっ!お、お腹痛い!でも笑いが止まらない!」


麗子さん大爆笑。


「ねぇママ、あのおばさんは何であんなに笑っているの?」


「グサッ!」


麗子さんの心に大ダメージ!


分かるよ、純真無垢な小さな子供の指摘ほど心にくるものは無いよね。残念ながら幾らサバ読んでいても子供からしたら皆おばさんなんですよね20代って。


「麗子さん、どんまい」


だから俺は慰めてやる事にした。ただし凄く皮肉気に。


「アテナちゃん怒ってる!?」


「あははー、まっさかー(棒)」


「凄い棒読だよ!?」


別に俺が困ってる時に横でひたすら爆笑していた麗子さんに対して思うとこなんてなーんにもありませんよー。


「そんな事より《混沌主の紋章》って言うアイテムはなんですか?《主の証》の効果は分かりましたけど、まだそっちの方は分からないんです」


「ああ……それはね……」


まだ僅かに凹んでいる様子の麗子さんは、俺の質問に対し力の無い声で返答した。その元凶たるツクヨは何故か必死に俺の肩によじ登ろうとしている。落ちそうになったら俺がさりげなく支えてやっているが、ツクヨはツクヨで何やら奮闘しているようなので今はそっとしておこう。


「《混沌主の紋章』はこの混沌の神殿の主であると証明するものなんだ。さっきアテナちゃんの胸に入って行った光あるでしょ?つまりあれでアテナちゃんは完全に混沌の神殿の主となったのだー」


「はぁなるほど。つまりあれを獲得したプレイヤーだけが要塞ギルドの機能を扱えると言う事ですか」


「うーん……正確には獲得したプレイヤーとそのプレイヤーが許可した人物だけがって感じかな。つまりアテナちゃんとアテナちゃんが集めたギルドメンバーだけが要塞ギルドの使用権があるの」


ふむ、と言う事はこの《混沌主の紋章》を扱えるのは事実上俺と俺の仲間のみって事か。


「これって、俺がギルドを立ち上げるんじゃなくて別の所に入った場合はどうなるんですか?」


「その場合はアテナちゃんが入ったギルドのメンバー全員が扱えるようになるけど、仮にそこのギルドが別の要塞ギルドを獲得したりしたらそっちが優先的に扱われてアテナちゃんが獲得した混沌の神殿は無用の長物になっちゃうかな」


なるほど、つまり他のギルドに入ったとしても旨味は少ない、と。


「でもどうせアテナちゃんはそこら辺のギルドには入ら無いでしょ?」


「おや?何故そう思うんですか?」


「だってアテナちゃん凄く強いじゃん♪そんなアテナちゃんがそこら辺のギルドに入るわけ無いし、仮に強いギルドがあったとしてもアテナちゃんなら入るより戦いたいとか思うんじゃない?」


……確かにその通りかもしれない。

自分で言うのもなんだけど俺はこのHHOでも強い部類に入ると思う。種族的な優位性を抜きにしたとしてもその自信はある。それにせっかくのゲームなんだし、どうせ戦うなら強い存在と戦いたいとも思う。


(やれやれ……短い時間で随分と俺と言う人物の性格が見破られたもんだ)


俺の中での那須 麗子と言う人物の評価がまた大きく上がった。この人は普段は飄々としているが、ここぞと言う場面では油断のならない人物だ。


(ま、だからこそ那須 麗子と言う人物がこのゲームの開発における最高責任者に選ばれたんだろうけどな)


「はぁ……流石ですね麗子さん……」


だから俺はそんな麗子さん相手に素直に観念するしかなかった。


「あははー♪これでも私HHOプレイヤーの全てを取り仕切るGMですから♪」


麗子さんはパチンッ☆とウィンクをしながらそう言った。


「っと、あー時間だー……ごめんねアテナちゃん。私そろそろ仕事に戻らないとならないからここらで失礼するね」


「あ、はい。わざわざ来ていただいてありがとうございました」


「いやいやー☆今回の件は完全にこちらのミスだったんだしアテナちゃんは気にしなくていいよー♪」


「ははっ、でもそれのおかげで混沌の神殿とか言う大層なものを獲得出来たので俺としては文句なんてありませんけどね」


「いやいや、もう一度言うけどサービス開始数日の段階で混沌の神殿をクリア出来るのってアテナちゃんくらいだからね?」


そうとも限らないと思うけどな……。例えばβテストの時のトッププレイヤーとかなら問題無くクリアしてしまいそうだ。


「あ、やばい、隆ちゃんに怒られる!じゃあねアテナちゃん!また何処かでお話ししようね!じゃあまた!」


麗子さんは時計をチェックした後、慌てた様子でログアウトして行った。


「ふぅ、まいったな……予定より相当遅くなってしまった……」


麗子さんがいなくなった混沌の神殿のコンソール室で俺は一人呟いた。横では遂に俺の肩への到達を果たしたツクヨが嬉しそうにドヤ顔を決めている。


「……取り敢えず暫くは混沌の神殿は使えないし留美との約束を果たすか……」


時間的にもそろそろ戻って来るところだろうし。


俺はそう判断し、肩へ腰掛けて楽しそうにしているツクヨを落っこち無いように片手で支えながらコンソール室を後にした。

今回の話は少し短かったですかね?次回からはアイギスもとい留美ちゃんとのお話しを少し書きますのでなるべく文章量を増やす努力をします。

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