22話 宝の守護者1
なんとか間に合った!本日2話目の投稿です!
【カオスフレイムマン:LV65】
【カオスソードマン:LV66】
【カオスアクアマン:LV65】
「はぁっ!」
俺は目の前いるカオスソードマンに斬りかかり、身の丈程もある大剣を弾き飛ばし、即座に縮地でカオスアクアマンに肉薄して戦技『グランドクロス』で一気にカオスアクアマンの体力を削る。
出発してから30分余り。現れた敵はカオスソードマンとカオスアクアマンとカオスフレイムマンの3体。
カオスソードマンは身の丈程もある大剣を振り回す、赤黒い全身鎧のモンスターで、カオスフレイムマンとカオスアクアマンは形こそカオスソードマンに似ているが、その体は魔法で出来ているのかゆらゆら揺れており、カオスフレイムマンは全身から炎を、カオスアクアマンは水を放出している。
「チッ、実態が無いタイプのモンスターか!」
カオスアクアマンを斬り付けた感触はまんま水であった。一応強力な戦技だったためダメージこそ与えたが精々全体の3割程度。
「なら魔法はどうだ!『カオスブラスト』」
「キァァァァ!!」
どうやら物理攻撃攻撃に対する耐性が高い分、魔法に対する耐性は極端に低いようだ。カオスブラストによってカオスアクアマンの残りの体力が2割を切った頃、俺の背後からカオスソードマンが斬りかかって来た。
「見えてるよ!」
俺は回転斬りを行い、残ったカオスアクアマンの体力を全て吹き飛ばし、そのまま背後から迫って来た大剣を迎撃する。
「『クロスエッジ』!」
それにより僅かに体制を崩したカオスソードマンの隙を見逃さず、すかさず剣を振り下ろしながらクロスエッジを叩き込む。
「オォッ!?」
それにより残り7割近く残っていたカオスソードマンの体力を残り2割まで削り取る。
「おっと」
その瞬間、横合いから飛んで来た火属性の魔法をしゃがみ込む事で回避。すかさず瞬歩の豪脚でカオスソードマンを蹴り飛ばし再び飛んで来た魔法の盾にしながら魔法を放った正体、カオスフレイムマンに接近する。
「2体纏めてくたばれ!」
「カオスブラスト」スキルチェイン「カオスレーザー」!
先程の戦闘で上がった熟練度で獲得したカオスレーザーをカオスブラストとのスキルチェインで放つ。まさか魔法でまでスキルチェインが発動するとは思っていなかったが、さっきの戦闘で偶然にも可能と言う事が判明したのだ。……まぁ戦技のスキルチェインとは比べ物にならない程難しいが、こう言った余裕がある状況では問題無く放てる。
光の粒子になって消えて行くカオスソードマンを斬り裂いて俺の剣がカオスフレイムマンに届く。やはりカオスアクアマンと同じで物理攻撃の耐性が非常に高い。それなのに何故態々剣で攻撃したか。それには特に深い理由など無い。強いて言うなら単純に剣の攻撃に慣れているって事が理由だ。と言うのもカオスフレイムマンの体力は既に風前の灯火で、ほんのワンドット辛うじて残っているってだけだったからだ。
俺は問題無く、カオスフレイムマンを倒し、一先ずの戦闘を終える。
「どうも敵の数が少ないな……」
俺はあの大部屋から瞬歩の熟練度上げを兼ねて縮地を使いながら移動して来た。その甲斐あって一応、瞬歩の第二の技「豪脚」を使えるようになったのだが……逆に言えば縮地を使って30分近く移動しているのに遭遇した敵が先程の3体のみなのだ。これはおかしい。
「……なんか拍子抜けだな」
因みにこの時、那須麗子が必死に混沌の神殿に制限をかけるプログラムをしていたため、処理を軽くするためにモンスターがどんどん消えて行き、そのままポップしなくなっていたのだが、それはこの時のアテナが知る由では無かった。
「ま、いっか」
考えても埒が明かないのでとにかく進む事にする。
***
「ん?階段?」
暫く進むと左右に階段が見えて来た。その奥にはこれまた巨大な扉が存在しており、左右にそれぞれ天使の像と悪魔の像が立っている。どちらの像にも何か丸い物を嵌められるような窪みが存在しており、明らかに怪しい。それに手前の階段。左側の階段の手すりには小さな天使の像が立っており、右側の階段の手すりには小さな悪魔の像が立っている。うん、本当に怪しい。
「これどう考えても左右の階段を登ってなんかアイテム的な物を取って来てあそこに嵌める事で扉が開くってシステムだろ」
俺はありがちなギミックに溜め息を吐きながらも、頭はここを攻略する事で一杯になっていた。それを自覚し、とことんゲーマーだなと自嘲気味に首を振り、右側の悪魔の像がある階段の方へと向かって行く。
階段を上ると、そこには一つの大きな部屋があった。どうやら階段はエリア移動扱いになるらしく、階段を上っていた時に急に切り替わった風景に一瞬驚いてしまった。不覚!
部屋の奥には下にあったデカイ扉の右側に設置されていた悪魔の像と同じような像が存在しており、口に当たる部分に禍々しい色合いの宝石が咥えられていた。部屋と言っても天井の高さは20メートル以上もあり、部屋と言うにはかなり高い。流石はゲーム。リアルでは出来無い事を平然とやり遂げる。
「あれを下の悪魔の像の窪みに入れればいいんだな」
俺は意を決してその宝石へと近付くと、ゴォーッ!って音と共に唐突に動けなくなった。これはシステム的な物でボスが出現するアクションの時によく発生するものなので特に動揺すること無く唯一動かせる首で辺りを見回す。
(階段への道が閉じたか……)
見ると悪魔の像の周囲には柵が出現し、それを守るかのように巨大な魔法陣が俺と悪魔の像の間に出現した。
(オイオイ、マジかよ……)
そこから現れたのは赤黒い皮膚をし、頭部から山羊を彷彿させるような角が生えた異形。隆起した筋肉は丸太のごとく太く、背中から恐怖を煽るようなおぞましい翼が生えている。獣のような腕は四本もあり、そのそれぞれが違う魔法を帯びている。体躯は5メートル程だろうか。その姿は完全に悪魔のそれであった。
【グレートデーモン・ガーディアン:LV72】
「グワァァァァッ!!」
だから登場するモンスターの強さおかしいだろっ!
「っ!?」
動けるようになった俺は咄嗟にその場を飛び退きグレートデーモン・ガーディアンの先制攻撃を回避した。
「『カオスボール』」
周囲に浮かべた10個のカオスボールを全てグレートデーモン・ガーディアンに撃ち込む。10個のカオスボールが狙い違わず全てがグレートデーモン・ガーディアンに吸い込まれるようにして激突して行った。 だがそれでも削れたダメージは2本あるHPバーのうち1本目の1割程度。
「硬すぎるだろうがちくしょう!」
俺は反撃にとばかりに四本の腕から飛ばされて来る多数の魔法を縮地とスカイウォークを使って立体的な動きを用いて次々と回避して行く。
「ウオォン!」
魔法があたら無い事に苛立ったグレートデーモン・ガーディアンがぱかりと口を開く。そこに魔力が集束して行くのを確認した俺はぶるりと身震いした。
ーーあれはヤバイ!
俺は全力で警笛を上げる脳に従い、上空に向けて縮地を使って大きく跳躍する。その直後少し前まで俺がいた所に極太のブレスが吹き荒れる。
「あれを喰らった絶対死ぬな……」
俺は流れもしない冷や汗が背中を撫でる感覚に襲われる。あの一撃は恐らく体力が全快であったとしても間違い無く俺のHPを全て吹き飛ばせるだけの威力を孕んでいる。
ーーだが
「大技の後ってのは総じて隙が表れるもんだよな!」
俺はスカイウォークを使い空中で縮地を使って真っ逆様かつ、一直線にグレートデーモン・ガーディアンに迫る。
「『グランドクロス』『セイクリッドクロス』」
元々の攻撃の威力と落下の威力が相まり、ドガァン!と凄まじ音を立てて俺の剣がグレートデーモン・ガーディアンに激突する。
「ウォォオン!?」
これには流石のグレートデーモン・ガーディアンも苦悶の声を上げ、HPバーも1本目の7割を吹き飛ばす事に成功した。
「冗談じゃねぇ……」
だが俺の面持ちは深刻であった。と言うのも俺が使ったセイクリッドクロスは悪魔のような種族のモンスターに有効な聖属性を孕んた攻撃であったのだ。だがそれがどうだ。直撃のスキルチェインで与えられたダメージがこの程度。本当ならあの一撃で1本目のバーを全て吹き飛ばすつもりだったのだ。
「参ったな……グレートデーモン・ガーディアン、硬すぎるだろうよ」
だが思いとは逆に俺はニヤリと笑っていた。それを見たグレートデーモン・ガーディアンが気圧されたきがした。そんなAIは無いだろうから気の所為だろうが、そんな事はどうでもいい。
「いいねぇ……このステージは最高だな!」
俺は獰猛な笑みを浮かべたまま剣を構える。そこに振り下ろされる二本の拳の一撃をパリィで弾く。
「ウオオ!」
だが油断はしない。グレートデーモン・ガーディアンの腕は四本。二本弾いたからと言って気を抜くと残った二本の拳から手痛い反撃を受ける。
「おっと!」
俺は咄嗟に跳び上がり、パリィで一瞬止まった動きの隙を狙って振り下ろされた拳を回避し、そのまま腕を駆け上がる。
「『クロスエッジ』『ダブルスラッシュ』『セイクリッドクロス』!」
制限破壊とイマジネーションシステムを使った三連スキルチェイン!俺の攻撃は全て狙い違わずパリィで弾いた腕の付け根に吸い込まれる。
「ウォォオオオオォォオォオ!?」
そしてこれまでに無い大音量の絶叫がグレートデーモン・ガーディアンから放たれる。それに伴いグレートデーモン・ガーディアンの右手が一本、光の粒子となって消えて行く。
「成功したか!」
俺が狙ったのは部位破壊。
ボスや中ボスの中には特定の部位に特定の武器で一定以上のダメージを与える事で部位破壊と言う現象を引き起こす事が可能なモンスターが存在する。
部位破壊を行うメリットとしてはドロップアイテムが増えたり相手の攻撃手段を減らしたりと色々とあるのだが、それ以上に敵の動きを限定出来るようになる事が大きい。特に今回のような強敵が相手の場合は僅かな動きの限定だけで難易度に劇的な違いが出る。
「もう一本貰おうか!」
俺はそのまま駆けていた腕を蹴り、もう片方の腕の方へと跳躍する。だがそれをやすやすと許すグレートデーモン・ガーディアンでは無く、ぐるりと一回転をして俺の足場を奪うと同時に裏拳での反撃を行ってくる。
「ぐあっ!」
唐突なその動きに空中にいた俺はそれを回避出来ず、咄嗟に剣を身を守る形でクロスする事で直撃こそ防ぐが、俺の体はまるでピンポン球のように軽々と吹き飛ばされる。
「カハッ!」
吹き飛ばされた俺は部屋の壁に物凄い勢いで叩き付けられて、腹から思いっきり空気が吐き出される。これがゲームじゃなければ思いっきり血を吐き出しているところだ。勿論そんなダメージを受けたんだ、HPもガクンと持ってかれている。
「一撃で全快しているHPから7割も持ってかれたか……剣でガードしてなかったら今の一撃で死に戻りしてたかもな……」
俺はジュエリーの露店で買った初級回復ポーションを二本、一気に煽る。それによりHPを全快時の8割辺りまで回復させた。
「これは出し惜しみしてる場合じゃないな……」
俺は油断無くグレートデーモン・ガーディアンの様子を確認しながら立ち上がり、新たに取り出した二本のポーションを一息に煽った。その直後、攻撃力と防御力が爆発的に上がる。
「っと!回復くらいゆっくりとやらせてくれよ」
俺はグレートデーモン・ガーディアンから飛んで来た魔法を回避し、スカイウォークで空中に逃げる。そしてまた新たなポーションを取り出し、同じく一息に煽る。
「ふぅ、準備完了だ。悪いが一気に片を付けさせて貰うぞ」
飲んだものは超級ATKポーションと超級DEFポーションと超級SPDポーション。どれも第四の街以降で漸く普通に獲得出来るようになる通常のポーション系の最上位ポーションだ。ボスモンスターの条件報酬で獲得したそれの性能は劇的で、俺のステータスを倍にしても足りないようなステータスを一時的に叩き出す。
「先ずはその邪魔そうな腕を全部落としてやるよ!」
俺は縮地を使い一気にグレートデーモン・ガーディアンに接近すると、二本の左腕のうちの下側にある腕に攻撃仕掛ける。
「『クロスエッジ』『ダブルスラッシュ』!」
「ウオオオオオン!?」
超強化された攻撃力を以ってして放たれる戦技はスキルチェインも相俟って、あっさりと腕を破壊した。先程までとは比べ物にならない痛みにグレートデーモン・ガーディアンは絶叫を上げるが、俺からすればそれはただの隙にしかなり得ない。
「まだまだぁ!」
俺はその場で跳躍した。そしてそのまま翼を展開して、超強化されたAGIを存分に活かして超速で残った二本のグレートデーモン・ガーディアンの腕を削る。
グレートデーモン・ガーディアンのHPはがりがりと削られて行き、遂に残った二本の腕も光の粒子となって消えて行く。
「ウオオオオァァア!!」
グレートデーモン・ガーディアンは悲鳴にも似た声を上げ、遂にその巨体は膝をついた。
「止めだ!」
俺は一気に上昇。そして上がれる限界まで上昇仕切った俺は、その場で一瞬だけ停止。そして次の瞬間には縮地を使った爆発的移動力でグレートデーモン・ガーディアンに目掛けて飛び掛かる。
(さっきは大して効かなかったが今ならどうだ!)
激突と同時に戦技「グランドクロス」と「セイクリッドクロス」を放つ。今の攻撃力なら三連スキルチェインは使う必要無い筈だ!
グレートデーモン・ガーディアンはそんな俺の一撃に正面から迎え撃って来た。先程も放った極光のブレスが超速で落下してくる俺目掛けて放たれる。
「うおおおおお!」
「ウオオオオン!」
ブレスと俺が激突する。両者の力は拮抗していたが、徐々に俺が押され出した。
「負・け・る・かァァァァァ!」
俺は咄嗟にスカイウォークを発動し、足での踏ん張りを入れる。
「ウオオオオオン!!」
そして遂に拮抗は完璧破れ、グレートデーモン・ガーディアンのブレスが斬り裂かれる。
「俺の勝ちだ!」
そしてグレートデーモン・ガーディアンに到達した俺は全身の力を込めてセイクリッドクロスを叩き込む。グランドクロスは先程のブレスを破るのに使ってしまった。だが今の攻撃力ならセイクリッドクロスだけでもグレートデーモン・ガーディアンの残り少ない体力なら削り切れる筈だ!
「ウオオオオオオォォオォオン!!」
グレートデーモン・ガーディアンは攻撃を受けた瞬間、本日最高にして最後の大きな悲鳴を上げてズズーンと倒れ込んだ。そのHPは2本目の最後の輝きを失い、真っ黒に染まると同時に消え失せ、グレートデーモン・ガーディアンは光の粒子となって消えて行った。それと同時に階段を塞いでいたギミックと悪魔像を覆っていた柵が解除され、部屋に元の静けさが戻った。
「ふぅ……なんとか勝てたけど……これ左の階段の方にも同じくらいの強さの中ボスがいるんだろうなぁ」
グレートデーモン・ガーディアンが消えて行くのを見送った俺は武器を仕舞い、一先ずの安堵の吐息を吐く。
「超級ATKポーション達の効果が切れるまでは後役20分か……それまでに向こうの敵も倒さないとな」
俺は悪魔像から宝石を取り出し、アイテムボックスに仕舞うと、駆け足で元来た道を戻る。天使像の方にいる敵もグレートデーモン・ガーディアンと同様な強さを持っていると言うなら超級ポーションの効果が切れる前に倒さないと戦闘は厳しいものとなるからだ。
「さて、向こうにはどんなモンスターが待っているのやら……」
俺はワクワクしながら悪魔像が設置されている階段を駆け下りる。




