14話 何してんですか所長
サブタイが中々思いつかない……こんなサブタイでも一応今話の内容としては間違って無いので許してくださいm(_ _)m
「あっ!アテナさんだ!」
「なに!?アテナさんだと!?」
「きゃー!本当に女の子みたい!」
「あんな華奢な身体でもうボス2を体も倒してるのよね!」
「是非俺とフレンドに!」
「いや、私と!」
……どしてこうなった。
いや、理由はわかっているんだ。ボス討伐のアナウンスは全プレイヤーに聴こえる仕様になっているのだから、1日で2体ものボスを倒した俺の名が広まるのは分かる。でもそれはいいんだ。ゲームでは自分の名前が広まる事は寧ろ名誉な事だからな。でも!何故俺の容姿がこんなにも広まっているんだ!
「あ、アテナさんこんにちは。いやー早くも有名人ですね」
俺がたじろいでいると集まって来ているプレイヤーの間から見知った顔が現れた。
「エレン……これはお前の仕業か」
種族人間の軽戦士、エレンである。
「いやーはは、アテナさんがあまりにも凄いので、つい……あの、怒ってます?」
「いやー怒って無いよ?でもちょーっと付き合って貰おうか?」
俺は笑顔でエレンを手招きする。
この後、アテナと連れ立って街の外に出た筈のエレンが何故かボロボロの状態で始まりの街に出現したと言う。一体何があったんだろうか?まったく、不思議な事もあるもんだ。
***
「だー疲れた!」
もしかして感じる疲労感はデススネーク・バイトと戦った時よりも大きいんじゃないだろうか?
あの後、エレンと少しオ・ハ・ナ・シ☆をした俺は、群がって来るプレイヤー達を振り切りながら何とか宿屋まで戻って来た。……もうこれからの移動は街中であっても飛んでしまおうかしら……。いや、そんな事したら更に面倒な事になるか。やめとこう。
「まぁいいや、とにかく今回の戦利品の確認をしようっと」
俺は気怠さの残る体を起こし、デススネーク・バイトから獲得した条件報酬を全て具現化させ、目の前に出現させる。
「獲得したのは「初個体討伐」「単独撃破」「初回討伐」「MVP報酬」「ラストアタック報酬」「制限突破報酬」か……「制限突破報酬」は初めてだな」
ー初回討伐ー
・毒蛇王の鋭牙×15
・毒蛇王の逆鱗×10
・毒蛇王の超魂×10
・毒蛇王の眼球×2
・超級SPDポーション×5
ーMVP報酬ー
・毒蛇王の硬皮×20
・毒蛇王の猛毒液×10
・毒蛇王の赤舌×15
・毒蛇王の猛毒袋×5
・超級回復ポーション×5
ーラストアタック報酬ー
・毒蛇王のイヤリング
・毒蛇王の宝玉
「まぁ安定の大盤振る舞いだな」
報酬のレア素材の大量配布も流石に二回目ともなると、気持ちにある程度の余裕が出来るな。
「まぁこれも今の段階では加工出来るレベルのプレイヤーがいないだろうし、せめて第二の街が解放されるまでは倉庫の肥やしだな」
まぁ明日にでも解放してやるつもりだが。
新たな街を解放するには現在いる街の周辺に存在する四体のボスモンスターを討伐する必要がある。この始まりの街で言えば、東西南北のフィールドにそれぞれ一匹ずついるボスがそれだ。
「後は南と北だけだが……流石に今日は挑むのはやめとこう」
だって二匹倒しただだけでかなり疲れたし。本当は今日中に始まりの街周辺の全ボスを倒したかったんだけど、こればっかりは仕方ない。
今日は後でまた「無音の洞窟」に行って俺とウリエルのレベル上げをして終わろうかな。
「さて、んじゃ次の報酬に行きますか」
俺は初個体討伐と単独撃破を開けた。制限突破報酬は何か不穏な気配がするので後回しだ。
ー初個体討伐ー
・アイテムボックス拡張チケット+5
・特殊スキル獲得チケット
・ランダムボックス
ー単独撃破ー
・毒蛇王の蛇眼×10
・毒蛇王の超硬質ブーツ
・毒蛇王の猛毒鞭
・毒蛇王の伸縮ベルト
・スキル枠拡張チケット
「よし、倉庫行き」
だから単独撃破の報酬はスキル枠拡張チケット以外使い道無いっての。
確かに強力な装備ではあるのだが、いかんせん要求されるレベルが高過ぎる。それに俺の天魔シリーズの方が進化装備である事とかも踏まえると高性能だし、要求レベルも俺のレベルに合わせて高くなるだけなので、俺が装備出来なくなる事は無い。
「でもこの毒蛇王の蛇眼だけは消費アイテムなんだな」
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毒蛇王の蛇眼
敵に向けて使うと、状態異常:硬直を一定時間与える。
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「これは素早い動きをする敵を相手にする時に使おうっと」
毒蛇王の蛇眼をアイテムボックスに仕舞い、他の蛇毒王シリーズの装備は倉庫に入れた。残ったのはスキル枠拡張チケットと初個体討伐の報酬であるアイテムボックス拡張チケット+5、特殊スキル獲得チケット、ランダムボックス、そして制限突破報酬の宝箱のみだ。
特殊スキル獲得チケットにつては最早何も言うまい。ありがたく使わせて貰う。
「チケットはこの後使うとして、早速この制限突破報酬ってのを開けてみようかね」
ー 制限突破報酬ー
・イマジネーションシステム
「なんだこれ?」
入っていたのは何かプログラムのような物が書き込まれている紙だけだ。
「ん?説明があるな」
ジッと見ていると、不意にその紙から説明の書かれたウィンドウが現れた。
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イマジネーションシステム
自身のある特定の事柄に限り、強く想うことで想像を現象として扱う事を可能とさせる。
メモ)やっほー☆HHO製作所所長の那須 麗子だよ♪このシステムは今のところ、制限破壊を持っているアテナちゃんにしか扱う事が出来無いシステムだよ☆
実はアテナちゃんがデススネーク・バイトを倒した時、私が直接報酬として紛れ込ませたんだ♪
制限破壊とこのイマジネーションシステムは今後、見込みのあるプレイヤーを筆頭にどんどん配布して行くつもりだけど、今のところはアテナちゃんしかいないから実験データを取らせてね♪あ、勿論お礼はするし危険な事はさせないから安心してね♪
因みに設定している事柄はフィールドでのプレイヤーの動きだからなんとか戦闘に取り入れてみてねー。まぁ詳しい事は後日改めて☆それじゃあバイバ〜イ♪
HHO製作所所長:那須 麗子☆
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何してんですか所長。
「一プレイヤーになんて事やらせるんだこの人は」
まったく……那須さんの苦労が目に浮かぶようだ。
イマジネーションシステムがプログラミングされているだろう紙はウィンドウを消すと同時に俺の体にスッと入って行った。恐らくこれでイマジネーションシステムと言う物が俺のアバターにプログラミングされたのだろう。
「断る権利は無しかい……」
まぁ入ってしまったのは仕方ないので諦めよう。
天魔と言う種族のように自分の運で獲得したと言う物でなく、本当のチートのようで少し嫌だが、所長の話が本当ならば今後、他のプレイヤーにもこれらは配布されるらしいのでそれまでは辛抱するとしよう。良くも悪くも俺は物事を受け入れ易い性格なのだ。
「ま、いっか。それよりスキル枠拡張チケットと特殊スキル獲得チケットを使わせて貰おっと」
これで俺のスキル枠は10。スキル獲得チケットを入手したら早速新しいスキルを取ってみよう。
「うーん……でも特殊スキル獲得チケットでは何を取ろうか……」
現状、近接手段は二刀流があり、遠距離手段は混沌魔法がある。それに加え、探索手段では全索敵があり、自身の強化手段は魔力強化と神魔眼がある。はっきり言って必要な物が無い。
「おっ!これは!」
眼前のウィンドウにズラリと並ぶ数多な固有スキルの名前と効果。そんな中、俺の興味を惹きつけたのは特殊スキルではあるのだが、取ろうと思えば全ての種族で獲得出来るスキル。
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能力:成長促進 (パッシブ)
レベルが上がった際に上昇するステータスに補正がかかる。
また、レベルアップに必要な経験値が僅かに減少する。
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「これ、β時代じゃ、全然変わった気がしないとか批判されてたんだよな」
この能力の有用性に気付け無いとは馬鹿な奴等だ。
確かにこの成長促進でステータスに掛かる補正は精々、+2か3……大きくても+5が良いところだ。減少する経験値も通常時の1割にも満たない。序盤ならともかく、中盤以降から出現するモンスターが相手となると本当に気持ち程度にしか感じないだろう。確かにこれだけなら批判されても仕方ない。だが俺は気付いたんだ、これが適用されるのは何も一人のプレイヤーだけでは無い事に。
そう、この能力の効果はパーティ内の全てのプレイヤーに重複するんだ。
これに気付いたんだのは本当に偶然で、配信されていたβテストの動画で、6人のプレイヤーがパーティを組んで戦闘を行う動画があった。
そのパーティには成長促進を持っているプレイヤーが3人いた。
そのパーティがモンスターを倒した際、成長促進を持っていなかったプレイヤーの一人がレベルアップした。そしてそのプレイヤーのステータスの伸びが、明らかに1レベルアップしただけの伸びでは無かったのだ。
その時のプレイヤーはレベルが上がった事だけを確認して自身のステータスをよく見なかったのだが、俺は食い入るように動画を見ていた為、それに気付く事が出来た。
つまりこの能力を使い魔達にも獲得させれば、一緒に戦うだけでお互い、ばんばんとステータスが上がって行くと言う事だ。
「確か、使い魔は最初の一回だけは無条件で主人の好きな能力を獲得させられるんだったな……」
俺はまだウリエルにもベルセルクにもその権利を使っていない。
「善は急げだ」
俺は早速使い魔の欄からウリエルとベルセルクに成長促進を獲得させた。
「よし、これで一気に戦力が上がるぞ!」
俺は早速「無音の洞窟」に向かい、ウリエルとベルセルクと共に時間の許す限り永遠とモンスターを狩り続けた。
蛇足だが、ウリエルとベルセルクを同時に出した時のウリエルの驚き様はとても滑稽だった。
ふむ、どうやら同じ主人の使い魔であっても、主人の中にいる時は別々に隔離されているようだ。
レベルも上がり、新たな情報も知れた事でホクホク気分でログアウトする事が出来た。
さて、明日は最初、ジュエリーの露店に行き、その後は残りのボスを討伐するとしよう。
主人公のステータスは最後のボス討伐後、公開します。




