13話 西のボス
戦闘の連続ですみませんm(_ _)m
「なるほど……テイムってのはこう言うスキルだったんだな」
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テイム
モンスターとの戦闘の際、特定の条件を満たすと発動する。
モンスターを使い魔にする事が可能となる。
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「成功率とか関係無いじゃん……」
天魔従属の成功確率UPのために取ったのに恥ずかしい……。
「まぁ結果オーライだよな。な、ベルセルク」
「ゴォオ♪」
俺は今、「毒撒き散らす湿地帯」と「試練の熱帯雨林」の境界に存在するセーフティエリアにいる。傍には先程使い魔にしたユニークモンスター、デビルアリゲーター・ドラゴことベルセルクが気持ち良さそうに寝転がっている。
「にしても、まさかこんな懐かれるとはねー」
「ゴオゴオ!」
あの後グッタリしているベルセルクを俺の中に一度入れ、再び出したら、何かめっさ懐いてた。
恐らくテイムする際に満たしたと言う条件が起因しているのだろうが、生憎テイムの条件は知る事が出来無い。いや、何らかのスキルを取れば可能なのだろうけど、少なくとも俺はまだ持って無いから分からないのだよ。
「さて、消費したHPとMPも回復したし、天魔ポーションのクールタイムも丁度終わったところだ。そろそろ進むか。行くぞベルセルク!」
「ゴオ♪」
俺とベルセルクは共に試練の熱帯雨林へと足を踏み入れた。
「試練の熱帯雨林」はその名の通り、アマゾンの熱帯雨林に似た作りになっており、「毒撒き散らす湿地帯」より更に濁った水に足首の上辺りまで飲み込まれる。
「ふむ、やっぱりこう言うタイプのフィールドか……ベルセルク!」
「ゴォ!」
俺の呼び掛けに短く返事をしたベルセルクは、のそのそ俺の横まで歩み寄って来て、乗れとばかりに伏せる。
「よいしょっと。頼んだぞベルセルク!」
「ゴォォ♪」
俺はそれに従い、ひらりとベルセルクの背に飛び乗り、頭を撫でながら声を掛けてやる。
するとベルセルクはスッと立ち上がり、戦った時同様にその巨体からは考えられない速度で走り出した。
これぞベルセルクを使い魔にした時に思い付いた移動方法だ。
ベルセルクの種族、デビルアリゲーター・ドラゴはある程度の量がある水の中では、通常のプレイヤーの1.5倍〜2倍の速度での移動が可能のなるのだ。
俺がこいつと遭遇した時を思い出して欲しい。俺が待ち構えたとは言え、こいつは俺の全索敵に引っ掛かってからたった2分足らずで俺の元までやって来たのだ。その速度は推して測るべし。
「よーし!このままボスまで突っ切るぞ!」
「ゴオ!」
俺とベルセルクは高速で移動しながら、時折遭遇するモンスター達をサーチ&デストロイの精神で瞬殺しつつ、試練の熱帯雨林を突き進む。
***
走り続ける事数時間。俺とベルセルクは遂にボスが存在するだろうエリアの目の前までやって来た。
「スタミナは大丈夫か?ベルセルク」
「ゴォオ!」
途中にあったセーフティエリアで一旦休んだとは言え、数時間は走り続けたのだからスタミナは大丈夫かと心配になったのだが、どうやらベルセルクも気合十分の様子だ。まったく、頼りになるぜ。
「いいか、ベルセルク。これは俺とお前の初のまともな共闘戦だ。俺を信じてきちんと指示を聞くんだぞ?」
「ゴオ!」
俺とベルセルクはお互い頷き合い、同時にボスエリアに足を踏み入れる。
「シャアアア!」
スティンガー・ビートルの時と同様に、中心まで進んだ所で退路が塞がれ、その瞬間耳をつんざくような鳴き声が辺りに響き渡った。
「こいつが「デススネーク・バイト」か……デカイな」
現れたのはぱっと見でベルセルクの倍の体躯はあると分かる蛇であり、毒々しい紫の色合いをした皮膚に、人一人丸々飲み込めそうな口に生える二本の牙からは見るからに危険そうな毒が滴っている。……あっ、滴っている毒が落ちた地面が溶けた……。
デススネーク・バイトはその黄金の双眸で俺達を鋭く見据え、口から時折チロチロと見える真っ赤な長い舌が得も言えぬ不気味さを醸し出している。
「シャアアア!」
デススネーク・バイトの咆哮を合図に俺達は一斉に動き出した。
「先手必勝!『グランドクロス』!」
俺は一瞬距離を詰め、現段階の瞬間火力が最も高いグランドクロスで攻撃を仕掛けるが、デススネーク・バイトはこれを色んな方向に体を曲げる事で器用に回避し、そのまま反撃とばかりに噛み付こうとして来た。
「っと、あっぶね」
俺はそれを体を後方に倒す事で回避した。その瞬間、後方から高圧縮した水が飛んで来て、俺を噛み付こうと広げていた口内に直撃した。
「シャアアア!?」
デススネーク・バイトは唐突に口内に浸入して来た異物に驚き、俺から距離を取り、異物が飛んで来た方向を睨み付ける。そこには大きく口を開いた状態のベルセルクがいた。
今ので削れたHPは2割程であったが、デススネーク・バイトのタゲはベルセルクへと移り、一瞬俺から意識が外れた。
「おいおい、俺を忘れんなよ?」
俺はその一瞬の隙に、離れてしまった距離を詰め、再びグランドクロスを放つ。
「シャアッ!?」
今度のグランドクロスは避けられる事無く、きちんとデススネーク・バイトを捉え、3本あるHPバーのうち1本を7割程を一気に削った。
意識の枠外から喰らった大ダメージに狼狽えるデススネーク・バイトに更に追い討ちを掛けるべく、ベルセルクが連続でブレスを放つ。俺もそれに便乗してクロスエッジからダブルスラッシュのスキルチェインを叩き込む。
「シャアアア!」
それらの攻撃の全てがデススネーク・バイトを確実に捉え、奴のHPをゴリゴリ削って行く。
「シャア!」
HPバーが2本目の半分まで至ったところで、デススネーク・バイトはベルセルクの倍の体躯……即ち10メートル程体躯を生かした大回転を行い、俺達と俺達の攻撃を全て弾く。そしてそれと同時に猛毒性を持つ毒球を連続で吐き出し、俺達を攻撃して来た。
「ベルセルク!お前のブレスでこいつらを撃ち落とせ!」
「ゴオ!」
ベルセルクは俺の指示に、了解!とでも言うように返事を返し、次々とブレスで毒球を撃ち落として行く。
「よし、毒球はベルセルクがどうにかしてくれる。俺はこの隙に攻撃だ」
毒球を吐いている時、デススネーク・バイトの動きは止まる。ベルセルクを信じてここで一気に体力を削る!
「はぁぁ!『ダブルスラッシュ』『乱舞撃』!」
俺は離された距離を一瞬で詰め、そのまま走る事によって生じた力を使いダブルスラッシュを放つ。そして技後硬直に入る前にスキルチェインで乱舞撃に繋げる。
「オオオオオオオ!」
連続で斬る、斬る、斬る。
俺は無心に乱舞撃を叩き込み続けた。今思えばそれが、油断の原因だったのだろう。
「シャアアア!」
「なっ!?しまった!」
「ゴオ!?」
唐突にデススネーク・バイトが咆哮したと思うと、次の瞬間には俺とベルセルクに強靭な尻尾が叩き付けられた。
「ぐあっ!」
「ゴオッ!」
咄嗟に自分から吹き飛ばされた方向に跳び、衝撃を逃すが、それでも俺の体力は4割程一気に持ってかれた。防御面に問題があるベルセルクは更に危険で、今の一撃だけで体力の7割が持って行かれている。
俺はアイテムボックスから回復ポーションを2本取り出し、ベルセルクの方向へ投げた。
それを見事キャッチをしたベルセルクは回復ポーションを瓶ごと噛み砕き、一気に咀嚼する。それによりベルセルクの体力は何とか8割程度まで回復した。
「チッ!ベルセルクの時と言い、俺は尻尾の攻撃には反応が遅れるな!」
俺は自身に悪態を付きながらも油断無くデススネーク・バイトの様子を伺う。
「さっきの攻撃で2本目のバーも削り切ったか……ここからが本当の勝負だ!気を引き締めろよベルセルク!」
「ゴオ!」
俺がベルセルクに声を掛けた瞬間、デススネーク・バイトに変化が起こる。
デススネーク・バイトの皮膚が輝きを見せたと思うと、唐突にその皮膚が破れ、中からさっきより目測で2メートル程大きくなったデススネーク・バイトが現れた。
「これがこいつの奥の手、脱皮か……確か全ステータスと全攻撃の脅威度が1.2倍になるんだったな……」
「シャアアアアアアア!」
俺が呟いた瞬間、デススネーク・バイトは高らかに咆哮を上げ、一瞬にして俺の目の前に迫って来た。
「っ!?早いっ!」
咄嗟に剣をクロスさせる事で突進を受け止めるが、それでも受け止め切れなかった衝撃で俺のHPが1割程削られる。
俺は受け止めたデススネーク・バイトをクロスした剣を開く要領で弾き飛ばし、後方に連続バックステップを行い、距離を取る。
「ゴォ……」
ベルセルクも脱皮をしたデススネーク・バイトを前に攻めあぐねており、舞台は静寂に包まれた。
「シャアアア!」
そんな中先に動き出したのはデススネーク・バイト。
デススネーク・バイトは遠方にいる俺とベルセルクに向けて連続で毒球を放って来る。その量は先程までの比では無く、全ては避け切れずにダメージを受けてしまう。
削られた体力こそ2割程度と微量ではあるが
状態異常:猛毒にかかり、毎秒1ずつ体力が減って行く。
「チッ!」
俺は舌打ちしながら天魔ポーションを取り出し、一息に煽った。これにより状態異常:猛毒は消え、残り3割まで減っていた俺のHPも一気に8割まで持ち直した。
「ベルセルク、無事か!?」
自身の回復を終えた俺は、現在共に戦っている相棒に声を掛ける。すると、「ゴオ!」と言う短い返事が返って来た。見るとどうやらベルセルクの方は全弾回避に成功したらしく、俺が回復している間にブレスでデススネーク・バイトのタゲを取ってくれていた。
「よし、良いぞ!ベルセルクはそのままブレスによる攻撃を続けてくれ!俺も攻撃を一時的に魔法に変える!」
「ゴオ!」
ベルセルクはおう!と言わんばかりの鳴き声をあげ、フィールドを動き回りながらブレスを放に続けた。これは止まっているとただの的にしかならないため、その状態を回避するための処置であったが、結果としてデススネーク・バイトの撹乱に成功した。
「『カオスボール』」
その隙に俺はカオスボールを連続で出来る限り放ち、デススネーク・バイトの最後の1本のHPバーを削って行く。
「シャアアア!」
間髪入れず飛んで来る魔法とブレスに苛立ったのか、デススネーク・バイトは一際大きな咆哮をあげながら、その巨体を地面に叩き付けた。
「うおっ!?」
「ゴオ!?」
それはフィールド全体を大きく揺らし、地上にいる自身以外の者の動きを阻害する。
「シャアアアアアアア!」
体制を崩した俺とベルセルクに、デススネーク・バイトの強靭な顎と強靭な尻尾がそれぞれ迫る。
(マズイ!このままじゃ噛み付きを喰らって、直接毒が体内に注入される)
頭では理解していても崩れた体制はまだ戻らない。
デススネーク・バイトの鋭い牙は最早眼前に迫っている。
(ちくしょうが!ここまで来て殺られたまるかよ!!)
眼前に迫るデススネーク・バイトの牙。俺の体制はまだ崩れたまま。
誰から見ても明らかに俺の敗北だ。
だが、その瞬間、俺の体はシステムで定められた法則を破った。
「うおおおおお!」
崩れた体制を力尽くで無理矢理整え、そのまま剣を構え身を乗り出すようにデススネーク・バイトの口内へ飛び込んだ!
口内に飛び込んだ俺は牙と牙の隙間を綺麗に通り抜け、デススネーク・バイトの喉に当たる部分まで転がったところで漸く立ち上がる事に成功した。
俺はすかさずデススネーク・バイトの喉を内部から斬り裂く。
「と、ど、め、だーーー!」
「ダブルスラッシュ」「クロスエッジ」「グランドクロス」!
システム上、2つまでしか繋げる事の出来ないスキルチェイン。しかし俺はそのシステムによる制限を突破し、3発目のスキルチェインを成功させた。
「シャアアアアアアアアアアア!!」
何の防御も施されていない喉の内部からの攻撃に、デススネーク・バイトはこれまで以上に大きな断末魔の咆哮をあげ、最後のHPバーを0にした。
【Congratulations!タイム20分36秒!】
スティンガー・ビートルの時と同様に、大量の経験値とドロップアイテムが流れ込んで来る中、俺は光の粒子へと姿を変えて行くデススネーク・バイトの内部から飛び出し、咄嗟に尻尾による攻撃を喰らったと思われるベルセルクの様子を確認する。
「ベルセルク!」
「ゴオッ!」
俺の呼び掛けに反応したベルセルクのHPは9割程が削られているものの、確かにそこには僅かなHPが存在した。
「その体制、ベルセルクお前咄嗟に爪と牙でデススネーク・バイトの尻尾に喰らいついただろ」
「ゴォオ……」
俺はベルセルクの抱き枕に抱き付いたような珍妙な姿勢に思わず吹き出してしまった。ベルセルクも恥ずかしそうに立ち上がると、のそのそと俺の元へ近付いて来た。
「ゴオッ!ゴオッ!」
「ん?疲れたのか?」
何かを訴えて来るベルセルクに俺はそう聞くと、ベルセルクはうんうんと顔を上下させて答えてくれた。
「そうか。なら俺の中でゆっくり休め。使い魔になってからまだ数時間しか経って無いのに、よく頑張ってくれた!」
「ゴォォォオ!」
俺の労いの言葉にえっへん!とばかりに一鳴きしたベルセルクは、そのまま青白い光の粒子になって俺の中へと入って行った。
『フィールドボス「デススネーク・バイト」の討伐に成功しました。
条件報酬「初個体討伐」「初回討伐」「単独撃破」「MVP報酬」「ラストアタック報酬」「制限突破報酬」を獲得しました』
《フィールドボス「デススネーク・バイト」が討伐されました。達成者名:アテナ》
脳内に響くレベルアップのファンファーレと、同様に脳内に響くアナウンス。それを聞いた事で、漸く俺は気を抜かした。
「ったぁー、疲れたー!」
俺は出現したワープゲートをチラリと見やり、少し休んでからでいいやと決めてその場に座り込んだ。
一応ここも試練の熱帯雨林のフィールドの一部なので、先程まで通って来た道と同様、水に浸されているのだが、今の俺にはその水の冷たさが心地よい。
「これで2匹目のボス討伐成功か……あー、しんど……」
とは言えやっぱりゲームをやるからには全力で楽しまないと損なので辞めるつもりは無い。
「でも運営もえげつないよな。こんな序盤でユニークモンスターを出してくるなんて。それもボスモンスターが存在するフィールドの近くで」
まぁその結果ベルセルクを使い魔に出来たんだし、俺的には良かったけどな。
「んー……よし、そろそろ帰るか」
ボーッと座り込む事数分、俺は一つ伸びをして、ジャンプするようにして立ち上がった。
「次は南のボスモンスターに行こうっと」
俺は意気揚々とワープゲートを潜り、始まりの街へと帰還した。
デススネーク・バイト討伐後のベルセルクちゃんのステータスです♪
使い魔になるとステータスがリセットされるのでこのレベル、ステータスになっています。
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名前:ベルセルク
種族:デビルアリゲーター・ドラゴ(ユニーク)
LV:19
武器:無し
防具:無し
装飾:無し
HP:480/480
MP:220/220
STM:280
STR:300
VIT:110
INT:80
SAN:150
AGI:250
LUCK:110
能力:「水棲」「咆哮」「水圧ブレス」
スキル:無し
称号:「ユニークモンスター」「天魔の僕」
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使い魔は最初は能力のみでスキルを持っていません。使い魔の主人になった者がスキルを決めるのです。




