11話 報酬確認と所長の遊び
「おーおー盛り上がってるなぁ」
街に帰還した俺は、スティンガー・ビートルから獲得した条件報酬を確認するべく宿屋に向かっていた。
何故宿屋に向かうかと言うと、宿屋は部屋さえ借りてしまえば、部屋を借りたプレイヤーとそのプレイヤーが許可した人物しか入って来れないと言う仕様になっているため、ゆっくりとアイテム整理をしたい時とかにとっても助かるのだ。なので俺も宿屋でアイテムの確認しようと歩いていたのだが、その際、アナウンスを聴いたプレイヤー達が騒いでいるのを見掛けた。
その内容は大きく分けて2つに分かれており、開始2日目でボスを倒す程の実力を持つアテナと言うプレイヤーは誰だ、と言う者や流石アテナさんだなと言う者達であった。
前者は俺の事を知らないプレイヤーで、後者は人伝や掲示板等で俺の情報をある程度知っているプレイヤー達だ。その中にはエレンの姿もあったのだが、昨日ぶっ飛ばしたばかりで特に用は無いのでスルーした。何か用事があったら向こうから連絡が来るだろうしな。
「さて、と……」
その後少しの間歩き続け、宿屋に到着した俺は1日分の料金を払って部屋を借りた。
「今回獲得したのは「初個体討伐」「初回討伐」「単独撃破」「MVP報酬」そして「ラストアタック報酬」か……」
取り敢えず、なんか凄そうな初個体討伐と単独撃破は後回しにするか……。
俺はプレゼントボックスに配布された報酬から、初個体討伐と単独撃破以外の全てを開封した。それにより入手した物はこれらだ。因みに報酬は実体化させると大きな宝箱となる。
ー初回討伐ー
・昆虫王の鋭角×15
・昆虫王の大顎×20
・昆虫王の超魂×10
・超級ATKポーション×5
ーMVP報酬ー
・昆虫王の堅外殻×10
・昆虫王の合成エキス×20
・昆虫王の透明翅支×20
・超級DEFポーション×5
ーラストアタック報酬ー
・昆虫王の腕輪
・昆虫王の宝玉
「へぇ、中々大盤振る舞いじゃないか運営も」
まさかスティンガー・ビートルのレア素材がこんな大量に配られるとは思って無かった。精々普通の素材が大量に入ってる程度の期待であったから、正直驚いたが、このレベルのアイテムが入手出来たと言う達成感があって嬉しくもある。
「それに昆虫王の宝玉か……これって確かドロップ率0.1%未満とかwikiには書いてあったような……」
それが何て事でしょう、報酬に1つ、ドロップとして2つも獲得している。ラストアタック報酬で一個手に入るだけでも十分なのに、だ。
これがLUCKカンストのドロップ率か……凄まじいな。まぁこんなにあっても当分は使い道は無いだろうけど。
「さてさて、次はお待ちかねの「初個体討伐」と「単独撃破」の報酬だ」
俺は昂ぶる気持ちを抑えながら初個体討伐と単独撃破の宝箱を開けた。
ー単独撃破ー
・昆虫王の覇角槍
・昆虫王の覇顎剣
・昆虫王の覇堅鎧
・昆虫王の覇堅盾
・スキル枠拡張チケット
ー初個体討伐ー
・アイテムボックス拡張チケット+10
・特殊スキル獲得チケット
・能力獲得チケット
俺は、言葉を失った……。
「ま、まて、落ち着け俺……」
俺の意識が戻ったのは中身を確認した数十秒後の事であり、急激に冷静になった俺の頭は、改めて獲得したアイテムを一つ一つ確認して行き、漸く落ち着く事が出来た。
「参ったな……これは明らかにゲームの序盤で獲得して良い物じゃ無いぞ……」
先ず、単独撃破の報酬を説明すると、これらは大体ゲームの中盤以降で入手出来る装備レベルの物であり、間違ってもサービス開始2日目で獲得出来る物では無い。恐らくスティンガー・ビートルをソロ討伐出来るようなプレイヤーは既にそのレベル帯まで行っていると判断されるのだろう。レベルを数値で表すと大体50〜と言ったところか。装備する為に要求されるレベルも50となっている。
「ふーむ……これは今市場に出しても意味無いな……。いや、これを武具職人の元へ持って行ったら新たな装備に変えて貰えるかな……」
いや、無理か。この段階でこのレベルの装備を加工出来る程の熟練度を持つプレイヤーはいない。元βテスターですら不可能だ。
「これは取り敢えず保管だな。加工出来るプレイヤーが現れてからどうするか決めればいいや」
そう判断して昆虫王シリーズの装備を倉庫に入れた。
倉庫とはアイテムウィンドウから選択出来る項目であり、持ち切れ無いアイテムや保管しておきたいアイテムを仕舞っておけるシステムの事だ。街にいる時や、セーフティーエリアにいる時にしか操作出来ないが、それでもアイテム1種類につき99個×1000種類を預ける事が可能と言うとても便利なシステムなのだ。
「単独撃破報酬で入手出来た物で現状使えるのはこれだけだな」
そう言って俺は保管しないで残していたスキル枠拡張チケットを手にした。
「確かwikiの情報によると、これは現存のスキル枠拡張出来る物だったっけな」
スキル枠はレベルが10上がる度に1増え、現在レベル30の俺のスキル枠は8だ。そのうち5つはチュートリアルを終える時に選択した物で埋まっている。「天魔創造」と「森羅万象」と「天魔従属」は天魔と言う種族の固有スキルなのでカウントはしない。
このスキル枠拡張チケットは一枚消費することでその枠を無条件で1上げる事が可能なアイテムだ。
「そういや、まだスキル何を取るか決めて無いな……。まぁそれは追い追いでいいか」
俺はスキル枠拡張チケットを消費し、スキル枠を9に増やし、単独撃破報酬の確認を終えた。
「次は初個体討伐報酬か……」
これもこれでちょっと頭おかしいんじゃないのか運営?と言う感じの物ばかりだ。
先ずアイテムボックス拡張チケット+10。これはまぁ、その名の通りアイテムボックスの上限を10拡張すると言う物だ。現在のアイテムボックスの上限は、チュートリアルの報酬で貰ったアイテムボックス拡張チケット+5を使った事で55になっている。
俺は早速使用して枠を65にした。これで少しフィールドに篭れる時間が伸びた。やったね。
次は特殊スキル獲得チケットだが……これをこんな序盤で渡して良いのか運営。
特殊スキル獲得チケットとはその種族毎に設定された数多のスキルか能力を一つ獲得出来ると言う物である。
通常、スキルを獲得する方法は特定のモンスターのレアドロップだったり、イベント報酬だったりと言った方法で獲得出来るスキル獲得チケットで新たなスキルを獲得する。能力は能力ごとに設定された特定の条件を満たす事で獲得する。または、プレイヤーや現存スキルや能力の成長でスキルを獲得出来たりと言った方法もある。
この特殊スキル獲得チケットも通常はイベント等の上位報酬であったりするのだが、今回は初個体のボスモンスターを討伐する事で獲得出来た。まぁ、全プレイヤーで何万人もいる中、初の個体であるボスモンスターを倒したとなれば、まぁ納得出来る……のか?
「まぁいいや、これはありがたく使わせて貰おう」
正直、天魔と言う種族に設定された天魔専用スキルには一人のゲーマーとして非常に興味がある。
「んで、最後が能力獲得チケット……なんだこりゃ?」
名前からして何らかの能力を獲得出来るアイテムなのだろうが……いかんせん聞いた事が無い。先程も述べたように能力は能力ごとの特定条件を満たす事か、既に持っている能力の成長でしか獲得出来無い筈なのだ。それにβ時代にはこんなアイテムは無かった筈だ。
「うーむ……これは正規サービス開始に伴い実装された新アイテムか?」
よし、分からないなら使ってみよう!
少しの週順の後、俺はこのアイテムを使ってみる事にした。やっぱり見て分からないなら実際に使ってみるしか無いよねー。
この時俺は知らなかった、このアイテムがランダム仕様な事を。
この時俺は失念していた。自身のLUCKがカンストしている事を。LUCKはモンスターのポップからドロップ、果てはランダム仕様な物にまで関係する事を……。
「うおっ!?」
気付いた時には既に時遅く、俺のステータスには新たな能力が追加されていた。
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【能力:制限破壊 (パッシブ)】
システムで定められた法則から外れた動きが可能となる。
メモ)この能力は私が勝手に作ったお遊びよ♪獲得した人はこのゲームをもっと面白くしてみせてね♪
因みにこの能力の入手確率は驚異の0.0000001%だよ!はたしてこの能力を獲得出来るプレイヤーはいるのかね?
HHO製作所所長:那須 麗子より☆
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へぇ、HHO製作所所長さんねー。那須さんと同じ苗字だし夫婦なのかなー……って、所長ーーー!?
この俺、アテナこと早神 瞬矢。サービス開始2日目にて、システムの法則から外れました。




