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第5夜:女の皮を被った

 不倫相手と赤ワインを飲みながらステーキを食べていた。ステーキをナイフでサイコロ状に切り分けると、中から薄赤い汁があふれだす。

 目の前にいる相手は不思議そうに俺の顔を見ながらなぜ結婚したのか問うた。

 「なんでだろうな。」

 俺はそう答えた。

 しいていえばなんとなくだ。

 結婚生活も順風満帆というわけではない。

 最近子供と家族3人で旅行に行き、和室に泊まった時の事だった。

 嫁と息子の寝た後の布団はまっさらなのに、その布団の下の畳は嫁と息子の体液で黒く染まり、何かの落書きのようになっていた。

 旅館には「息子が知らん間に落書きをしてしまって・・・。」と答え、旅館の人も笑顔で応対してくれた。しかしいくら旅館の人がブラシや高圧洗浄機で体液を消そうとしても頑として消えなかった。

 嫁は「フローリングじゃこんなことにならないんだけどなぁ。やっぱり居心地がよかったから、心から帰りたくなくなっちゃったのかしら?」などと呑気なことを言っていた。この女と居る限り畳の生活は無理だと、畳の弁償代を払いながら虚しく悟った。

 いや、実のところ女の皮を被った宇宙人なのだが。

 初めて本来の姿で出会った時に嫁から一目惚れをされ、以後、地球人の女に似た皮を被って生活している。まるで旦那にはすっぴんを見られまいとする女性のように、嫁は俺が居る限りは絶対に女の皮を被っていた。

 俺も最初はそれほど好きと言うわけではないが、男女間の愛だの恋だのというより、嫁にはマヌケな犬に対する無償の愛情のようなものを感じた。

 例えばトイレ付きエレベーターに嫁が間違って乗ってしまい、嫁が用を足してる最中普通に人が沢山乗ってきたらしく

 「もうすごく恥ずかしかった!」

 と普通の人間のように恥じ入る姿を見て、感情や考え方は地球の人間に似ているし、そんなマヌケなことをよく仕出かす嫁の姿が愛おしくてしょうがなかった。


 そして、俺はこの宇宙人と結婚し、ごく普通の生活を送っている。不倫相手がいるのも男の甲斐性というものでごく当たり前のものだろう。


 俺はふとそう思いながらステーキを食べていると、熱くねっとりとした視線を感じた。

 目の前の相手は細身でカジュアル系な服を着こなす男だ。傍から見れば友達と食事に来たように見えるだろう。


 「そうなの・・・。バイ(バイセクシャル)とは思わなかったんだけどなぁ・・・。」


 目の前の男は茶色く染めて軽くゆるいパーマを当てた髪の先を、細くてゴツゴツした指で弄んだ。

 相手の皿はもう空になって、うっすらと牛の血の跡が残っていた。

 俺はミディアムレアに焼けた肉をゆっくり噛み締めながら、口内で肉汁が溢れて溶けていくのをしみじみと味わった。

 

何もかも突っ込みどころの多い夢を見てしまいましたorz

まさに「あ…ありのまま 今 起こった事を話すぜ!」なポルナレフ状態です。

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