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紫の悪魔 6

初めて見たのは、磔にされて炎に包まれた紫の悪魔。

血の涙を流す両目は閉じられたまま。



「ムラサキっ」


最初、なぜ見えないはずの世界を見ているのか、姫はわかりませんでした。

ただ、初めて見た世界で、磔にされ、血の涙を流す紫の悪魔は笑っていました。


彼は、自分の視力(ひかり)を姫にあげたのです。


「恐ろしいでしょ?」


人とは違う姿で、人とは違う異端の色をもった紫色の恐ろしい悪魔。

確かに、紫の悪魔の姿は、周りの人間とは全く似ていませんでした。

しかし、姫は臆することなく紫の悪魔に言います。


「恐ろしくなんてないわ! ムラサキはムラサキで、他の何者でもない。たとえ外見が恐ろしかったとしても、私とお話しした優しいムラサキであることに変わりはない!!」


姫は、紫の悪魔に手をのばします。

炎に巻かれる紫の悪魔を助けようと、手をのばします。

それを、何人もの人々が止めました。


結局、その手は届きませんでした。


……炎はさらに燃え上がり、紫の悪魔はそれはうれしそうに笑って言いました。


「ありがとう。ねぇ、笑って」






かわいいお姫様

知ってる?

君の笑顔は、僕にとって大事な宝物なんだよ

君に会うまで、誰も僕に笑いかけてくれなかった

僕に初めて笑いかけてくれたのが、君だったんだ


君に会えてよかった


君が僕をムラサキと呼ぶたびに、とってもうれしかったんだよ

君は、僕を紫の悪魔としてじゃなく、ただの「ムラサキ」として見てくれた

恐ろしい悪魔だなんて噂に惑わされず、僕を見てくれた

一緒に笑って、一緒に過ごした日々

それがどれだけ嬉しかったか……

こんな姿を見ても僕を受け入れてくれて、ありがとう


ねぇ、大好きだよ、君のこと

だから、僕は逝くね

君のそばにもっといたかったけど、一緒に笑っていたかったけど

きっと、周りは許さないから


最期にわがままを言ってもいいかな?



「お願いだよ。泣かないで。笑顔で見送って」



人々の声と、炎の燃え上がる音に掻き消され、その声は届くことはありませんでした。








姫の光を奪い、たぶらかした最悪の悪魔。

病をまき散らし、飢饉をもたらす傲慢な悪魔。

人とは違う姿をして、人とは違う色を持つ、黒の森の怖ろしい悪魔。


そんな紫の悪魔は、火刑に処されて死にました。



めでたしめでたし



「いや、いやああっ。お願い、やめて! やめてやめてやめて!! ムラサキ! ムラサキっ!!」



お姫様は救われて、光を取り戻しましたとさ。



めでたしめでたし






「認めない。こんなの間違ってる! めでたしめでたしなんかじゃない!!」

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