紫の悪魔 5
「……ムラサキ!」
姫がそこに辿り着いた時、紫の悪魔は火刑に処されるところでした。
「やめて! ねぇ、なんでこんな事をするの?! ムラサキはなんにも悪いことなんてしてないのに。お願い、やめて!!」
あぁ、可哀想なお姫様。
愛しい可愛いお姫様。
姫様は悪魔に悪い魔法をかけられているのです。
そこで悪魔が処刑されるのを待っていてください。
そしたら、きっと正気に戻るでしょう。
その瞳に、光が灯るでしょう。
それは、まぎれもない姫への好意でした。
かわいそうなお姫様。
大丈夫。
恐ろしい紫の悪魔を殺してあげる。
それが、姫にとっては悪意でしかなかったとしても、確かに好意でした。
「違う、違うっ」
なんで、みんなわかってくれないの?
「ムラサキは何もしてないわ!」
なんで、みんな酷いことを言うの?
「私の目が見えないことなんて、関係ない!!」
なんでムラサキを……紫の悪魔だなんていうの?
「去年の秋が不作だったのも、伝染病がはやったのも、ムラサキのせいじゃない!!」
誰も、姫の話を聞いてはくれませんでした。
いえ、独りだけいました。
じっと、紫の悪魔だけがその言葉を聞き、泣き叫ぶ姫を見ていました。
紫の悪魔は、姫だけに聞こえるように、小さな声でこう言います。
「もう、いいよ。ありがとう。あのね、『光』をくれてありがとう。だから君に僕の『光』をあげる。僕にはもう、必要ないから」
火が放たれる。
真っ赤な炎が、全てを焼きつくすために燃え上がる。
悪魔を焼き尽くす焔が……。




