紫の悪魔 1
紫の悪魔
昔々の話
すばらしい王と民に恵まれた、平穏な時代がありました。
王の一人娘であった姫は愛らしく聡明で、民から慕われていました。
一点を除けば。
姫は生まれながらに盲目であったのです。
王は悲しみ、娘をそれは大切に育てました。
目の見えない姫の為に香りのよい花を城の庭に植え、姫の為に城を整備し、姫の為に姫を城に閉じ込めました。
「つまらないわ」
姫は、それが姫の為だと分かってはいました。
それでも姫はやはり寂しくおもっていました。
外は危険だから、出てはいけないよ。
でも……。
盲目の姫が唯一外に出られたのは、城の庭だけでした。
目は見えなくても、周りの気配はわかります。
使用人達が離れている内に……。
ある時、姫は一人で城を抜け出して近くの森に入り込んでしまいした。
ちょっとした冒険でした。
入ってはいけないと言われる森。
恐ろしい悪魔が棲んでいるという真っ暗な森。
姫にはその森が真っ暗なんて解らなかりません。
どれほど不気味な森だろうと、美しい森だろうと、姫の眼には映らないからです。
だから、その森がどんな森だとも知らずに姫は森に入りました。
馴れない森を、姫はどんどん進んでいきます。
小川のせせらぎに酔いしれ、風の囁きに耳を傾けて。
森の動物達に誘われて、何時しか姫は森の奥へと足を踏み入れました。
そこで出会ってしまいました。
「ごきげんよう。貴方は……どなた?」
「……目が見えないの?」
「そうよ。ねぇ、貴方の名前は?」
「名前なんて、ないよ」
「名前が無いの? 困ったわ。なんて呼べばいいのかしら」
「……」
「そうね。決めた!」
「?」
「今日から貴方は、妖精さんね!」
紫の悪魔に。




