めでたしめでたしじゃないけれど
紫の悪魔と、のちに菫姫と呼ばれた姫。
二人の物語が歪曲されて、童話として騙られてしまうほど時は経ちました。
本当の物語を語る女性は、最後に言います。
「そして、姫は見たヒトすべてに光を与えるような笑顔で言いました。『……見ててね、ぜったい、絶対変えてみせるから』……だから、菫姫と紫の悪魔の物語はめでたしめでたしで終わらないの」
それを聞いていたのは、まだ幼い子どもたちでした。
獣の耳を持った少年や、鳥の羽をもつ女の子、周りとは色の違う肌の少女。
人種も種族もばらばらの子どもたちたちでした。
女性の横にいた男の子が、無邪気に問います。
「めでたしめでたしでおわるらないの?」
「めでたしめでたしで終わるのは、美しい菫色の瞳をもらった姫の国が、誰もが一緒に暮らせる国になった時なのよ」
「だれもが?」
「そうよ。誰もが一緒に、笑って暮らせる国になった時なの」
その横にいた女の子も、女性に問いました。
「そんな国になったら、おひめさまはむらさきとずっといっしょにいられるのかな?」
女性は、優しく笑いながら言います。
「えぇ、きっと……」
「ねぇ、わたしたちがめでたしめでたしにしてあげようよ」
「めでたしめでたしに?」
「どうすればいいの?」
「なかよくすればいいんじゃないのかな」
「わらっていればいいんだよ」
「そしたら、めでたしめでたしなの?」
「どうだろう?」
「ねぇ、それよりはやくあそぼうよ」
「そうだよ!」
「うん! なにする?」
子どもたちは、それは楽しそうにお話をしていました。
だれもが笑いながら、一緒に遊んでいました。
どんなヒトでも関係なく、ただ一緒に。
それを、女性はほほえみを浮かべながら、見つめます。
姫が思い描いたその国は、はるか遠き理想郷。
しかし――
薄紫の瞳の女性は、子どもたちに聞こえないように、小さな声で呟きます。
「私の代では、めでたしで終わらせることができなかった。でも、君たちなら……」
紡がれ続ける歴史の中でその国は、姫の子どもたちは、理想郷に近づこうとあがき続けるのでした。
まだ、めでたしめでたしじゃないけれど、おしまい。
ここまでお読み下さり、ありがとうございました。
これにて、菫姫と紫の悪魔、終了となります。
未熟者の書く物語でしたが、少しでもおもしろかったと思っていただけたら僥倖です。
本当に、ありがとうございました。




