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その部屋

作者: 麻道 傾

【注意】

 ・この話は、麻道が実際に(夢の中で)体験した物語です。

 ・登場する人物は全て架空のものです。実在する人物との関係は一切ありません。

 どうして?

 そうやって問いかけても、答えをくれる人はこの場にはいない。

 何故、こんなことになっているのか。

 記憶を探ってみても、やっぱり答えなんて出なかった。



 僕……いや、僕たちは閉じ込められているのだ。




 部屋は六畳ほどの広さで、窓際にはシングルベッドがひとつ置かれており、ホテルの一室を思わせる作りになっている。

 窓はさっき確認したところ、はめごろし型ではなくて普通に開閉式だった。けれど分かったことは、外が真っ暗でよく見えないということと、この部屋が地面から相当高い位置にあって窓から出ることは出来そうにないことだった。閉めきってしまっては暑いので今は半分くらい開けてある。

 窓の対角側にはドアがある。これも見た感じは普通にホテルにあるようなドアだけれど、普通と違うのは鍵かないと内側からも外側からも開けられないタイプのドアであることだ。

 この部屋で外と繋がっているのは、ドアと窓を除くと、あとは換気口くらいだ。もちろん人が通れるような大きさではない。

 そこまで確認して、閉じ込められているということを理解した僕は自力で脱出することを諦めた。


 今はドアの近くの床に座って、背中を壁に預けている。

 いや、だってベッドには――

「あなたのせいよ! こんなはずじゃなかったのに!」

 そうやってヒステリックに僕を罵倒する女の子がいる。

 この女の子はユキノという名前で僕のクラスメイトだ。クラスではちょっとしたアイドル的な存在で大半の男子生徒は彼女に好意を寄せていたりする。

 僕は正直、ユキノさんに興味はない。

 危機的な状況に直面すると性欲が高まってくると聞いたことがあるが、ユキノさんとそういうことをしたいという気持ちは欠片も湧いてこない。

 閑話休題。

 まあ、そんなわけで僕は現在、部屋に女の子と二人きりで閉じ込められているわけである。


「こんなはずじゃなかったのに! どうして私なのよ!」

 ユキノさんはずっとこんな調子で叫ぶだけで、僕が話しかけても返ってくるのは罵倒だけだ。

 彼女はベッドの上で自分の身体を抱いて、震えている。

「ねぇ。ユキノさ――」

「話しかけないで! 全部、全部あなたのせいなのよ! 出してよ! 私をここから出して!」

 ほら、こんな調子だ。

 ユキノさんは僕から遠ざかるようにベッドを足で蹴って窓際へ移動する。肩が窓枠に触れたところで彼女は足を動かすのを止め、また口を動かし始める。

「あなたのせい! ぜんぶぜんぶぜんぶ! どうしてくれるのよ!」

 僕に言われたって困るんだけどなぁ。

「こんなことになるくらいなら死んだ方がマシよ! どうするの!? ちゃんと責任とってよ!」

 僕はユキノさんに苦笑を返すことしか出来ない。

「あなたが悪いのよ! 私は悪くないの! ねえ!? ねえねえ!」

 その後もユキノさんの罵倒は続いた。僕は、というと『死んだ方がマシ』って死亡フラグになるんじゃないのかなぁ、なんて考えながら彼女の言葉を聞き流していた。



 それからいくらかの時間が流れた。

 部屋に時計はなく、正確な時間は分からない。

 ユキノさんが何度目かの「死んだ方がマシだった」を発した直後―――それは起こった。




 まず最初に眼に入ってきたのは、窓の外を落ちて来た人影だった。


 次の瞬間。

 "そいつ"は開いていた窓から褐色の両手を侵入させて―――


 ガッ!! とユキノさんの肩を掴んだ。


 心臓が飛び跳ねる。ドクドクという心音が異常に大きく聞こえる。

 恐怖に身体が竦んで動けなかった。

 ユキノさんの表情が驚愕に歪み、すぐに苦悶に変わる。両手は助けを求めるように宙を彷徨っている。


 褐色の手はユキノさんの肌を強く掴む。力が入れられるたびにユキノさんの表情は痛みで強張っていく。

 ひときわ大きな力が加えられ、ユキノさんの口から声にならない悲鳴が漏れた後、窓の外に懸垂(けんすい)の要領で身体を持ち上げた"そいつ"の顔が映った。


 瞬間、僕の思考は停止した。

 手と同じような褐色の肌。スキンヘッド。犬歯が見え隠れする大きな口。………眼。顔の中心に存在する大きな、1()つしかない(・・・・・)眼。


 ユキノさんは脚をジタバタさせて、僕に助けを求めるように手を伸ばしていた。

 だけど僕は動けなかった。ユキノさんの後ろに控えている怪物に恐怖する身体はどうやっても動いてくれそうにはなかった。


 怪物と視線が交錯する。

 "そいつ"の視線は僕を睨みつけるようなものではなくて、懇願するような……僕に『助けてくれ』と懇願しているような視線だった。

 眼を()らせなくなる。


 どうするべきか?

 無意識のうちに自問していた。

 決まってる。何もせずに傍観するというのが最も安全な選択肢。自己保身したいのならこれ以外に用意されるべき選択肢なんてないはずだ。 

 だが、僕の中には異質なモノが知らないうちに入り込んでいた。

『怪物を助けるべき?』

 自身に対し、そんな質問をしていた。

 僕を見つめる怪物の眼。懇願するような眼。表情は苦悶に歪んでいる。

 どうしてか僕の眼は"そいつ"に釘付けになっている。ユキノさんだって苦しんでいるはずなのに。……何故?


 結局、僕は答えを出すことが出来なかった。

 そして最後まで僕の身体は動こうとしなかった。


 怪物は苦悶の表情を浮かべ、悲痛な低音で悲鳴を上げる。


―――そこで僕の意識はブラックアウトした。

お読みいただきありがとうございます。

やっぱり恐怖を文章で表現するというのは難しいですね。書けた気がしません。



以下注意点です。


・この物語は麻道の夢の話です。

・状況説明の部分は分かりやすいように多少脚色してあります。

・ユキノさんは架空の人物です。麻道の知り合いにはユキノという名の人物はいません。

・矛盾点があっても、ご容赦下さい。

・この物語は麻道の夢の話なんです!

・大事なことなので二回と言わず何度でも言います。いや、書きます。

・この物語は麻道の夢の話なんです!!

・以上です。

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