海底行きのホーム
掲載日:2025/12/28
夕方のホームは、潮の匂いがしていた。
電車の窓には、海水が満たされ、魚たちがゆったりと回遊している。
赤いタイが切符をくわえて改札を通り、タコが吊り革を器用に握っている。
車掌は笛を吹き、「次は深度三百メートル、海底市場前」とアナウンスした。
隣の席では、見知らぬクラゲが新聞を読んでいる。
やがてホームの端から潮が満ちてきて、足首をさらう。
乗り遅れた者はその場で溺れ、やがて光の粒になって天井へ昇っていった。
その光は星となり、海の上からこちらを覗き込んでいる。




