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テンプレをぶち破れ、エゴイストがクソみたいな神を殴り倒して世界をひっくり返すまで。  作者: 強炭酸
最終章 夜明けの頂上決戦

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79話 世界の夜明けと興業(フェスト)

瓦礫の上で、ハーヴィーはゆっくりと身体を起こした。

 胸に石板を抱えたまま、よろめきながらも膝をつき、善の前で深く頭を下げる。


 その動作には、もはや“神”の威厳はなかった。

 あるのは、長い歳月を背負ってきた一人のエルフとしての、静かな敬意だけだった。


「……ありがとう」


 声はかすれていたが、確かに届いた。


「そして……ケジメとして聞こう。

 私に、トドメを刺す気はあるのか?」


 一瞬、風が吹き抜ける。

 善は答えず、空を見上げた。


「――精霊王様。いますか」


 呼びかけに応じるように、空間が揺らぐ。


 次の瞬間、仮初めの僧正の姿をした精霊王が現れた。

 超級ダンジョンで見た時と同じ姿。だが、放つ気配は比べものにならない。

 神々しさが、重圧となって場を満たす。


 ――ハーヴィーの支配から、完全に解放されている。


「ほう」


 精霊王は善を見下ろし、穏やかに問いかける。


「ハーヴィーの処置を、私に委ねるつもりかね」


「いえ」


 善は首を振った。


「ハーヴィーの身柄は、俺が預かります。

 ……手伝ってほしいことがあるんです」


 その瞬間も、全世界配信は続いていた。


 善は、深く息を吸い、声を張り上げる。


「――世界中のみんな、聞いてくれ!!」


 ざわめきが、画面越しに伝わる。


「この世界で、俺は世界一の“興業”をやる。

 火の国のボクシングなんて目じゃない。

 誰が一番強いかを競う大会だ!!」


 一拍。


「だから、開国は少し待ってほしい。

 十分に準備してから――開国。

 そして、世界を巻き込む闘技大会を開催する!!」


 鎖国していた国が、ついに扉を開く。

 経済という“流れ”が、この神の箱庭を否応なく蹂躙するだろう。


 だが、無策ではない。

 聖騎士団が動き、各国の投資家や商人と交渉し、地盤を固める。

 儲け話に乗らない者などいない。

 経済とは、貸しと信用で成り立っているのだから。


 世界情勢が安定した後――

 闘技大会は、満を持して開催される。


 善は、ハーヴィーを見た。


「なあ、ハーヴィー。お前も出ろよ。

 どうせ退屈なんだろ?

 また……ボケちまうぜ?」


 ハーヴィーは一瞬目を伏せ、そして小さく笑った。


「……ふふ」


「精霊王。私に《隷属紋》の術を刻んでくれ。

 これは、私なりのケジメだ」


 精霊王は、少しだけ目を閉じた。


「……わかった」


 光が走る。

 ハーヴィーの首筋に、かつて聖騎士団に刻まれたものと同じ隷属紋が浮かび上がった。


 ハーヴィーは静かに息を吐く。


「……一度、エルフの里へ戻る。

 私の力は、どうやら認知症に効くらしいからな」


「それがいいよ」


 天が、優しく言った。


「フリーダさんも、きっとそう願ってたと思う」


「それじゃあ」


 今度は勇希が、ひょいと前に出る。


「僕も宣伝していこうかな」


 放送に向かって、満面の笑み。


「世界中のみんな。

 僕は勇者であると同時に、料理人だ」


「将来、世界中の食材を使った店を出したい。

 水の国には米があるの、知ってる?

 米とカレーって、合うんだ」


「風の国ならスコーンが美味しいって聞くよね。

 そんな料理店を出したい。以上、宣伝でした!!」


 一拍置いて。


「あと、闘技大会の出店は僕が仕切るからね」


 そして――


「……アリス。戻ったら結婚しよう。

 この先忙しくなるけど、僕たちなら大丈夫だ」


 勇者は、完全に放送を私物化していた。


 衛はカメラに映ったタイミングで、シェリルにだけ伝わるようにさりげないジェスチャーサイン。

(必ず帰る)


 クラウディアは、思わず吹き出して笑う。


 画面の向こうで、アリスは真っ赤になり、まるで茹でダコのように固まっていた。

 

 画面の向こうのシェリルは、足取り軽く嬉々として配信儀式台のある広場を後にした。


 こうして――

 この世界は、救われた。


 剣ではなく、

 支配でもなく、

 選択と覚悟によって。


 そして――

 時は流れる。


 十年後。

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