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テンプレをぶち破れ、エゴイストがクソみたいな神を殴り倒して世界をひっくり返すまで。  作者: 強炭酸
4章 外界編

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52話 風の国シルフィード④

エルフの森を抜ける風は、どこか澄みきっていた。

 葉擦れの音が高く低く重なり、森そのものが呼吸しているように感じられる。


 スカイアは、世界樹の根元に立ったまま、こちらを見ていた。


「ここまで来て、どう?」

 柔らかな声音の奥に、鋭い問いが潜んでいる。

「覚悟は決まった? それとも――同情した?」


 善は、しばらく黙ってから、拳を握った。

 その拳を、もう一方の掌で――ぱん、と軽く受け止める。


「最初から、戦うつもりだったよ」


 言葉を選ぶ必要はない。

 胸の奥で燻っていた感情を、そのまま外に出す。


「でもさ……余計に殴ってでも、止めなきゃいけないって思った」

「ショック療法だ。ボケた老人を、現実に引き戻すための」


 スカイアは、ふっと口角を上げた。


「あなたのその物言い……敵がどんな存在でも、“手が届く距離”に引きずり下ろすのね」


「戦いは、同じ次元じゃないと成立しないからな」

 善は空を見上げる。

「神様には――こっち側に降りてきてもらう」


 その言葉を合図にしたかのように、風が一段、強く吹いた。


 スカイアの姿が、ふわりと揺らぐ。

 エルフの輪郭がほどけ、光の粒子が集まり直す。


 現れたのは――妖精のような、小さな姿。

 羽のように透けた光を背に、どこか見覚えのある面差し。


「……クラウディアに、似てる」


「気づいた?」

 スカイアは肩をすくめた。

「私とあの子は姉妹よ。私は元々、妖精だった」

「精霊に“成った”代わりに、肉体は失ったけどね」


 その声に、後悔はない。

 ただ、少しだけ――羨望が滲んでいた。


「だから、あの子には私の分まで、たくさん食べて、たくさん恋愛トークしてほしいの」

「私は、この土地から離れられないし……味覚も、ないから」


「……伝えておきます」


「ええ、よろしくね」


 スカイアは、そっと手を差し出した。


「じゃあ、力を渡すわ。右手を」


 善が右手を伸ばすと、冷たい風が渦を巻く。

 次の瞬間、手首に“何か”が嵌まった。


 金属でも、布でもない。

 風そのものが、形を持ったような腕輪。


「顔に右手をかざして。唱えて」


 善は一度、深く息を吸う。


「――仮面解放ペルソナ・フレア


 世界が、跳ねた。


 視界の端が白く滲み、全身を巡る“気”が、何段階も引き上げられる感覚。

 顔に、確かに“仮面”があるのが分かる。


「……すごいな、これ」


「その仮面が、精霊力を行使する合図よ」

「『支配と隷属』の力からも、あなたを守ってくれるはず」


 スカイアは腕を組む。


「精霊祭まで、特訓ね。妹と違って、私はスパルタだから覚悟しなさい」


 ――その言葉通りの日々が始まった。



夢幻戦士法ファントム・ファイター


クラウディアの周囲に、淡い光が揺らめく。

次の瞬間、戦闘用装備を纏ったエルフの姿の分身が、三体、同時に展開された。


空圧衝(エアー・ブレイク)


三方向から、風を圧縮した魔法弾が放たれる。


善は一歩踏み込み、風属性の気を掌に集めた。

刃を作るのではない。斬撃そのものを“飛ばす”。


「《風魔手裏剣》!」


回転する風の刃が空を裂き、迫る魔法と正面からぶつかる。

衝突音が連なり、三つの攻撃はすべて空中で相殺された。


「オーラショットと違って……溜めが要らない」


善は動きながら、感触を確かめる。


「走りながら撃てる分、実戦向きだな」


スカイアは分身を解除し、軽く腕を組んだ。


「なかなか良い技じゃない」


一拍置いて、視線を鋭くする。


「でも、例の“雷神ごっこ”は封印しなさい」


「天空支配能力だろ? 天候操作も範囲内じゃないか」


「だからって、自分を人間避雷針にする発想が危険なのよ」


 善は肩をすくめる。


 人体は電気信号で動いている。

 ならば、その信号を“呼び水”にすれば――。


「……理屈は通るけど」


自己回復セルフ・ヒーリングがあっても、死ぬと思うわよ」


「命懸けすぎる切り札だな」


 だが、不思議と後悔はなかった。



 そして、精霊祭。


 森が、光り始めた。


 世界樹を中心に、淡い緑と蒼の光が波紋のように広がる。

 葉の一枚一枚が燐光を帯び、風が音楽になる。


 香りも、変わった。

 土の匂いとココナッツに似たハリエニシダの甘い香りが混ざり合い、肺の奥まで満たしてくる。。


 他国からの観光客のざわめきすら、どこか祝福の音色に聞こえた。


「エルフは時間にルーズだし、賢者も少ない」

 スカイアが静かに言う。

「でも、この精霊祭だけは誇れるわ」


 光の粒子が舞い、空と森と人が溶け合う。

 この風景、天にも見せたかったな。

 きっと気にいるだろう。


「自然と精霊と人――その均衡が、この調律を生むの」


 善は、その光景を目に焼き付けながら思う。


 神、ハーヴィー。

 ――仁。


 風の精霊との約束。

 殴ってでも、止めるという覚悟。


 そして――。


「スカイア。神を倒した後の世界で、何をしたいか決まった」


 胸の奥に、はっきりとした像が浮かぶ。


「合流したら、一番にそれを伝えたい人がいる」


 本当にやりたいこと。

 自分自身の気持ち。

 精霊の力を得ても満たされないこの渇望


「……天に、会いたい」


 風が、優しく背中を押した。


Y(やったこと)

・風の精霊シルフ・スカイアと正式に契約

・精霊の力を授かり、《仮面解放ペルソナ・フレア》を習得

・風属性の新戦闘スタイルを確立(風魔手裏剣など)

・精霊祭までの期間、スカイアのスパルタ特訓を受けた

・精霊祭を通して、風の国と自然・精霊・人の関係性を体感した



W(わかったこと)

・ハーヴィーは「倒すべき悪」だが、同時に「救われるべき存在」でもある

・だからこそ、遠慮せず“殴ってでも止める”覚悟が必要

・風の精霊の本質は「天空支配能力」=自然現象そのものへの干渉

・力は大きいが、使い方を誤れば自滅する(雷神ムーブは命懸け)

・精霊の力は「支配」ではなく、「共に在る」ためのもの



T(つぎにやること)


・外界から合流したら、一番最初に、天に会って、自分の気持ちを伝える


・精霊との約束を守る


・神ハーヴィーを同じ地平に引きずり下ろし、真正面から止める


・神を倒した“その後の世界”を見据えて行動する

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