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テンプレをぶち破れ、エゴイストがクソみたいな神を殴り倒して世界をひっくり返すまで。  作者: 強炭酸
3章 世界の真実へ

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42話 外の世界へ

 精霊王の間には、しばし沈黙が落ちていた。

 天井から垂れる淡い光が、床の紋様を静かに照らしている。

 その光の中で、精霊王は微動だにせず立っていた。


 最初に口を開いたのは、衛だった。


「……俺たちは、元の世界に帰れるのか」


 短い問いだった。

 だが、その裏には、ここに来てから積み重ねてきた時間と、選択の重みが滲んでいる。


 精霊王は、ゆっくりと首を横に振った。


「勧められぬ」


 静かな声だったが、拒絶ではなく、忠告だった。


「君たちの世界と、この世界の時間軸にはズレがある。

 仮に帰還できたとしても――君たちが“存在していた時間”より前に着地した場合、世界の法則により存在そのものが拒まれる可能性がある」


 空気が、わずかに張り詰める。


「……消える、ってことですか」


 勇希が確認するように呟く。


「可能性の話だ。だが、私は賭けを勧める立場ではない」


 衛は一瞬、目を伏せた。

 だが、すぐに顔を上げる。


「……分かりました」


 不思議と、声は落ち着いていた。


「はっきりしました。オレは――この世界で、やりたかったことをやる」


 迷いはなかった。


 精霊王は、かすかに目を細める。


「……良い覚悟だ」


 そして、視線を横に移した。


「クラウディア」


「……はい、精霊王様」


 クラウディアは、胸の奥がきゅっと締めつけられるのを感じながら、一歩前に出る。


「君には、長く心配をかけた」


「……」


「彼女は、かつて私の従者だった。

 ハーヴィーの支配の力が及ぶ前に、逃がしたのだ」


 クラウディアは唇を噛む。

 忘れたことなど、一度もなかった。


「君の精神型の“気”は、特異だ。

 それは、この四人の力を束ねる“要”となる」


 精霊王は、静かに手を差し出した。


「クラウディア。こちらへ」


 ためらいは、一瞬だった。


 触れた瞬間――

 頭の奥が、きん、と鳴った。


「……っ」


「これは……新しい力?」


 感応の“幅”が、広がっていく感覚。

 繋がる距離、深度、情報量――すべてが桁違いだった。


「君なら、使いこなせる。

 運命の四英傑――『希望』は、君たちに託した」


 その言葉に、重みが宿る。


 精霊王は、再び四人を見渡した。


「神、ハーヴィーに挑む覚悟は、決まったかね」


 一拍。


 善が、前に出た。


「……やります」


 だが、その声には、盲目的な使命感はなかった。


「あなたのためじゃない。

 俺が――納得できないから挑むんです」


 衛が続く。


「同じく。気に入らない。

 世界の在り方として、どう考えても間違ってる」


 天は肩をすくめ、笑う。


「だって、それ楽しくないじゃん。

 そんな世界、絶対イヤ」


 勇希は、少しだけ考えてから、はっきり言った。


「神がやろうとしてること。

 たくさんの人が、確実に被災する。……それは、見過ごせない」


 精霊王は、静かに息を吐いた。


「……こうも個性が違うのに、結論は同じか」


 微笑みが、浮かぶ。


「君たちは――託したくなる存在だ」


 精霊王は両手を広げる。


「私の力で、君たちを四精霊のもとへ長距離空間移動(ワープ)させる」


 空間が、わずかに歪む。


「そこで、それぞれの精霊に認められよ。

 この大陸で、決着をつけるのだ」


 クラウディアが、ふっと顔を上げる。


「私の、強化された精神感応通信チャット・ウィスプなら、

 皆のステータスウィンドウを繋げて、映像通話もできるわ。定時連絡、しよう」


「それ助かる」


「頼もしいな」


 軽口が交わされるが、空気は引き締まっていた。


「では――」


 精霊王の声が、空間に響く。


「四精霊のもとへ。

 ここまでの試練で、君たちに最も相応しい精霊へ、送り届けよう」


 光が、溢れる。


 視界が白に染まる直前、善は一度だけ振り返った。


 精霊王は、静かに頷いていた。


 ――こうして、俺たちは「神の箱庭」を離れた。


 外界へ。

 本当の決戦へ。


 戻れないかもしれない未来を背負って。


善のメモ


Y(やったこと)

・精霊王から、この世界と「神ハーヴィー」の真実を聞いた

・元の世界への帰還について質問を聞き、戻ること自体がリスクだと理解した

・神ハーヴィーに挑むかどうか、仲間と意思確認を行った

・「使命だから」ではなく、自分が納得できないから挑むと明確に言語化した

・クラウディアが精霊王から新たな力を託され、通信能力が大幅に強化された

・四精霊のもとへ向かうため、精霊王の《ワープ》で外界へ旅立つ決断をした



W(わかったこと)

・この世界は「救われるべき物語」ではなく、誰かの歪んだ選択の結果である

・神ハーヴィーは「倒すべき悪」以前に、放置できない矛盾そのもの

・元の世界に戻れるかどうかは重要だが、それ以上に

今ここで何を選ぶかが重要

・仲間全員、理由も価値観も違うのに同じ結論に辿り着いている

・自分はもう「巻き込まれた側」ではなく選んで前に出ている側に立っている

・精霊王は万能の存在ではなく託すしかない立場に追い込まれた存在

・クラウディアは“補助役”ではなくこのパーティの神経網にして要

・「戻れないかもしれない未来」を理解した上でそれでも進む覚悟が、自分の中で固まっている



T(つぎにやること)

・四精霊の試練を受け、精霊の力を借りる必要がある

・神ハーヴィーの人間的背景を知る手段を探す

・クラウディアの新しい通信能力を前提に戦術・情報共有の更新を行う

・最終的に神に挑む理由を誰のためでもなく、自分自身に説明できる状態で決戦に臨む


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