41話 神が『本当に』クソだった件
「……結論から言おう」
精霊王は、わずかに苦笑した。
「この世界で“神”を名乗っているあの男は――
本当に、どうしようもない存在だ」
その一言に、空気が張り詰める。
善は喉の奥で唾を飲み込んだ。
「奴の名は、ハーヴィー。
外界――風の国出身のエルフだ」
精霊王の声には、怒りよりも疲労が滲んでいた。
「転生者であり、前世の知識と、この世界の“気”への異常な適性を併せ持っていた。
特に精神型の気――“支配と隷属”の術において、奴は異常だった」
ローブの袖の中で、精霊王の指がわずかに震える。
「……認めよう。
奴は、私――精霊王ですら、完全に支配できる存在だ」
その言葉に、天が息を呑み、勇希の背筋が強張る。
「ハーヴィーは“楽園”を作ると称し、この大陸を切り取り、歪め、
『神の箱庭』と名付けた」
精霊王は、ゆっくりと語る。
「ソレスティア。ルナリス。
お前たちが知る二つの国家は、すべて奴が設計し、配置した箱庭国家だ」
七百年。
その数字が、重く落ちる。
「この人工世界は、約七百年間維持されてきた。
だが、それは秩序ではない。停滞だ」
精霊王は、善をまっすぐに見た。
「お前たちが当然のものとして受け入れてきた“ステータス制度”。
あれは成長を促すための仕組みではない」
言葉が、鋭くなる。
「人を数値に落とし、
限界を決め、
考えることをやめさせるための――まやかしだ」
愚民化。
管理。
支配。
「自分より弱い存在で世界を満たせば、都合がいい。
それが、ハーヴィーの思想だ」
精霊王は、わずかに目を伏せる。
「そして――滅亡術式」
空気が、冷えた。
「精霊の力を強制的に暴発させ、国単位で滅ぼす術式だ。
各地の精霊を支配下に置き、
世界を一度“更地”にしてから、箱庭を拡張するつもりだった」
その瞬間、善は理解した。
なぜ精霊が暴走するのか。
なぜ世界が歪んでいるのか。
なぜ聖騎士団が、裏で動いていたのか。
すべてが、一点に収束する。
「私は……聖山エーテリオンの地下で封じられ、
力を吸い上げられている」
精霊王は、自嘲気味に笑った。
「この姿も仮初めだ。
自力では、もはや奴に抗えん」
静寂。
「だからこそ――頼む」
精霊王は、四人に深く頭を下げた。
「神を、止めてほしい」
その声には、王としての威厳よりも、
一人の存在としての切実さがあった。
「ただし……奴が、なぜそこまで堕ちたのか。
人として、何を背負ってきたのか――
それは、私には分からぬ」
沈黙が落ちる。
「それを知るかどうかは……
お前たち次第だ」
精霊王の視線が、善に重なる。
世界の歪みは、偶然ではない。
誰かの選択の、積み重ねだ。
そして――
それを終わらせる選択もまた、
今、この場に委ねられていた。
善のメモ
Y
・精霊王から「神」を名乗る存在ハーヴィーについての情報開示を受けた
・ハーヴィーは外界・風の国出身の転生エルフ
・精神型の“気”、特に「支配と隷属」に異常な適性を持つ
・精霊王ですら完全に支配可能な存在
・「神の箱庭」はハーヴィーが作った人工世界
・ソレスティア/ルナリスは箱庭国家として約700年間維持されている
・ステータス制度は成長促進ではなく人を数値化し、思考を止めさせるための支配装置
・滅亡術式の存在
・精霊の力を暴発させ、国単位で滅ぼす
・世界を一度更地にして箱庭を拡張する計画
・精霊王自身は聖山エーテリオン地下で封印・能力吸収状態
・精霊王は自力でハーヴィーに抗えない
・精霊王から正式に「神を止めてほしい」と依頼された
・ハーヴィーの人間的動機や過去については精霊王も把握していない
⸻
W
・世界の歪みは自然発生ではなく、意図的な設計
・精霊暴走・聖騎士団の暗躍・ステータス制度はすべて一本につながる
・「神」は秩序の象徴ではなく、管理と停滞の原因
・ステータスに頼らず、五感・思考・問いで戦ってきた自分たちの戦い方は間違っていない
・ハーヴィーは絶対悪というより、選択を積み重ね、堕ちた存在である可能性が高い
・神を止める=世界のルールそのものに挑む行為
⸻
T
・精霊王の依頼を受け、ハーヴィー討伐(または止める)を目的として行動する
・四精霊のもとへ向かい、外界での情報補完を行う
・特にハーヴィーの「人間的背景」を知る手がかりを探す
・ステータス依存の戦いを避け、五感・連携・問いを軸に戦術を構築する
・最終的な判断は「精霊王のため」ではなく、自分自身が納得できるかどうかを基準に下す




