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テンプレをぶち破れ、エゴイストがクソみたいな神を殴り倒して世界をひっくり返すまで。  作者: 強炭酸
3章 世界の真実へ

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29話 祭の打ち上げ

 ルナリスギルドの厨房と、その奥にある小さな一室を借り切り、精霊祭の打ち上げが始まった。


 外ではまだ祭りの余韻が残り、遠くから笛や太鼓の音、人々の笑い声が微かに流れ込んでくる。

 だが、この部屋の中は不思議と静かだった。鉄板が鳴る音も、酒場の喧騒もなく、あるのは料理の湯気と、火を落とした後の落ち着いた空気だけ。


 長いテーブルの上には、温かな料理が並んでいる。

 油の照りをまとった炒め物、湯気を立てる麺、刻みネギの青い香り。

 鼻腔をくすぐる匂いに、自然と肩の力が抜けていく。


 新と涼介も席についており、普段よりも少しだけ賑やかな顔ぶれだった。


「ご飯の気配ね」


 その声と同時に、扉の隙間からひょこっと顔を出したのはクラウディアだった。

 いつものように当然の顔で、ふわりと宙に浮かんでいる。


「祭りは人が多くて苦手なのよ。音も、視線も、気配も多すぎる」


 肩をすくめながら、さっと部屋に入り込む。


「やっぱり引っ込んでたんだ。らしいね」


 天が苦笑すると、クラウディアは得意げに胸を張った。


「でしょう?」


 そのやり取りに、場が少し和む。


 そこへ、勇希が大きな皿を抱えて現れた。

 慎重に、だが慣れた手つきで料理を並べていく。


「チヂミは……さすがに飽きてきたと思うので」

 

 少し照れたように言いながら続ける。


「同じ材料で、アレンジしてみました」


 並べられたのは、

 ニラと海鮮のガーリック炒め。

 そして、湯気を立てるニラ玉うどん。


 油とにんにくの香りがふわりと広がり、空腹を一気に刺激する。


「この世界、米はないけど……うどんはあるんですね。助かりました」


 新が思わず身を乗り出す。


「うひょー……これだよ。こういうのが一番うまいんだ」


 涼介も頷きながら、箸を進めた。


「ほんまやな。勇希さん、腕、確実に上がっとる」


「ありがとうございます」


 勇希は控えめに笑う。

 だが、その声はどこか柔らかく、以前より少しだけ芯があった。


「おいし〜」


 クラウディアの一言で、場がまた和む。

 いつの間にか、二人は完全に“勇希の料理ファン”になっていた。


 皿が空になり、下げられていく。

 余韻だけが残る中、善が自然と姿勢を正した。


「……さて。本題に入りましょう」


 声色が変わる。

 空気が一段、引き締まった。


「新先輩、涼介先輩。お願いしていた調査の件、どうでしたか?」


 涼介は一度、深く息を吸った。


「超級ダンジョン――聖山エーテリオン地下迷宮や」


 その名前だけで、室内の温度が下がった気がした。


「正直言うて、情報はほとんど出回っとらん。挑戦者の大半が戻ってこん。……自殺の名所扱いや」


「……うわ」


 衛が率直に顔をしかめる。


「冒険者の手記を片っ端から漁った。分かったのは、地下十階にキャンプ地、地下二十階にドラゴンが確認されとる、いうくらいやな」


 善は静かにメモを取り、頷く。


「ありがとうございます。十分、参考になります」


 一拍置いて、善は覚悟を決めたように続けた。


「……俺たち、実は聖騎士団に会いました」


 一瞬、空気が止まる。


「聖騎士団!?」


 新が声を上げる。


「都市伝説だと思ってたぞ」


 涼介は苦く笑った。


「噂は本当や。議会も王族も逆らえん。ソレスティアとルナリスの“裏”を押さえとる連中や」


「スカウトという名目で交戦しました」


 善は淡々と続ける。


「結果は惨敗。ただ、命までは取られませんでした」


 善は紙を一枚、テーブルに置く。


『この会話は〈神〉に聞かれている。

 聖山エーテリオン地下迷宮、50階で精霊王様に会え。

 世界の真実は、そこにある』


 沈黙。


「罠かもしれません」


 善は言った。


「それでも、俺たちは知りたい。だから、挑みます」


 新はしばらく俯き、やがて顔を上げた。


「……善くん」


 涼介は大きく息を吐き、笑った。


「その心意気、惚れたで」


 そして、きっぱりと言う。


「もし聖騎士団が敵に回って、変な噂を流されてもな。ボクらが全力で後ろ盾になったる」


「ありがとうございます」


 善は深く頭を下げた。


 場の空気が少し和らいだ、その時だった。


「それと、勇希さん」


 涼介の視線が、勇希に向く。


 勇希は洗い物の手を止め、振り返った。


「はい」


「あなたはな、敗北から逃げずに、自分の弱さと向き合った」


 勇希の指が、わずかに震えた。


「そして、自分だけの武器を、もう手にし始めとる」


「……」


「このパーティの中で、一番人を惹きつけて、人を幸せにできる力を持っとるんは、間違いなくあなたや」


 新も頷く。


「飯で場を整えられる人間は希少だ。それは“才能”だよ」


 涼介が、はっきりと言った。


「あなたは、ボクらにとってのヒーローや」


 新が続ける。

「そして、この世界には、ヒーローより相応しい呼び名がある。」


 涼介と新は同時に言う。


「「勇者」」


 勇希は、言葉を失った。


 胸の奥で、何かが熱を持つ。

 これまで感じていた不安や疑念が、ゆっくりと溶けていく。


「……ありがとうございます」


 声が、少しだけ震えた。


「……あの、今さらなんですけど」


 勇希は首を傾げる。


「なんでお二人とも、僕に敬語なんですか?」


 新が即答する。


「店の常連は、マスターに敬語だろ?」


 涼介も笑う。


「店出したら、通い詰めたるさかい」


 笑いが広がる。


 善が、勇希を見て言った。


「なあ、勇希」


 勇希は、ゆっくりと視線を向ける。


「異世界に来たばかりの頃、お前が言った言葉、覚えてるか?」


 少し照れながら、善は続けた。


「『どの世界でも、どの時代でも、目指すものは変わらない。コックになる。それだけ』って」


 勇希の肩が、わずかに揺れた。


「あの一言でさ……俺も衛も、救われたんだ」


 衛も静かに頷く。


「強くなきゃ、立派じゃなきゃって思ってた。でも違った」


 善は、はっきりと言った。


「勇者ってのはな、前に出て敵を倒す奴だけじゃない。

 不安な奴の背中を、そっと押してくれる存在だ」


 沈黙。


 勇希は、視線を伏せたまま、微笑んだ。


「……そんなつもり、なかったんだけどな」


「だからだよ」


 天が柔らかく笑う。


「無自覚で人を救える人が、一番すごい」


 その言葉を、勇希は静かに胸にしまった。


 打ち上げは、穏やかに終わりを迎える。


 次は――超級ダンジョン、聖山エーテリオン地下迷宮。


 だがその前に、確かに芽吹いたものがあった。


 力だけじゃない。

 信頼と、覚悟と――


 そして、勇者という名だった。


善のメモ


Yやったこと

・精霊祭の打ち上げとして、ルナリスギルドの厨房と一室を借りて会合を実施

・新・涼介から超級ダンジョン《聖山エーテリオン地下迷宮》の調査結果を共有してもらった

・自分たちが聖騎士団と接触・交戦した事実と、シリュウから受け取った極秘メッセージを打ち明けた

・罠の可能性を承知の上で、「世界の真実」を知るために迷宮50階を目指す決断を仲間と共有

・涼介・新からの支援の約束を正式に受けた

・勇希の成長と役割を、第三者(涼介・新)から「勇者」と明言される形で認識した



Wわかったこと

・超級ダンジョンは

情報が極端に少ない

地下10階にキャンプ地

地下20階にドラゴン

それ以降はほぼ未知

・聖騎士団は都市伝説ではなく実在し、国家・議会すら逆らえない「神」の代理人

・シリュウのメッセージは罠の可能性が高いが同時に「世界の嘘」に迫る唯一の導線

・勇希は戦闘力ではなく人を惹きつけ、繋ぎ、前へ進ませる力を持つ存在

・外部から見ても「勇者」と呼ぶに足る資質がある

・新・涼介という信用力のある後ろ盾を得たことで、今後の立場が大きく変わる



Tつぎにやること

・超級ダンジョン《聖山エーテリオン地下迷宮》への本格挑戦準備

・10階キャンプ地・20階ドラゴンを前提とした長期探索

・情報遮断状況への対応策を詰める

・聖騎士団および「神」の動きを警戒

・勇希を「勇者ポジション」として前面に立てる展開を想定

・新・涼介と連携し、悪評・妨害が出た場合のカウンター体制を構築


♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢


ここまで読んでいただきありがとうございます。


もしこの物語が

「ちょっと引っかかった」

「考えさせられた」

「テンプレ外し、嫌いじゃない」


そう思ってもらえたら、

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