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テンプレをぶち破れ、エゴイストがクソみたいな神を殴り倒して世界をひっくり返すまで。  作者: 強炭酸
3章 世界の真実へ

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28話 祭りの露店

 一週間の修業期間を終え、いよいよ次は超級――聖山エーテリオン地下迷宮への挑戦。その準備に本腰を入れる、はずだった。


「……精霊祭?」


善が聞き返すと、勇希は少しだけ気まずそうに頷いた。


 精霊祭は、秋の収穫祭に近い行事で、毎年この時期に行われる。街全体が浮き立ち、精霊教会や商人たちが露店を並べる、ルナリスでも大きな祭りだ。その中に、マザー・ローズが預かる精霊教会――孤児院も参加するという。


「皆の足並み、崩してごめん」


勇希はそう前置きしてから、はっきりと言った。


「でも、今回だけはわがままを聞いてほしい。

 僕に自信をくれた、その恩返しがしたいんだ」


 敗北から立ち上がるきっかけをくれた場所。

 料理の才能と在り方を、肯定してくれた人たち。


 勇希にとって、精霊教会は“守られる側”から“返したい側”へ変わった場所だった。


「私からもお願い」


天が続ける。


「先生や、あそこの子供たちには本当にお世話になったから」


「俺は構わねえぞ」


衛は即答だった。


「鉄板料理なら、俺も手伝える」


善も肩をすくめる。


「超級ダンジョンに期限があるわけでもないしな。

 それに……祭り、ちょっと楽しそうだ」


こうして、精霊祭への露店参加が決まった。



「で?」


善がにやりと笑う。


「勇希のことだ。もう料理は決めてるんだろ?」


「ふふふ……」


勇希は珍しく自信ありげに胸を張った。


「『チヂミ』と《かき氷》の二枚看板で行くよ」


天が目を丸くする。


「韓国グルメかぁ。SNS映え化粧品目当てで新大久保行ったとき、友達と食べたことある!」


「市場はリサーチ済みだよ」


勇希は指を折って説明する。


「ルナリスはソーセージが名物で安い。ニラは今が旬で豊作。魚介も、アラを使えばコストを抑えられる。

 海鮮チヂミとソーセージチヂミ、あとソースで味変。食べ続けても飽きない」


「お好み焼きより利益率高いしね」


現実的な一言に、善と衛が納得する。


「決まりだな」


衛が段取りをまとめる。


「俺は鉄板担当。勇希は調理と、かき氷の氷作成。

 善と天は買い出しと呼び込み。人増えたら列整理」


「OK」


善と天が同時に頷く。


「あと、もう一つ」


勇希が言った。


「腕試しと金策を兼ねて、中級ダンジョンを効率周回しておきたい」


「いいんじゃないか」


善は即答する。


「今の実力確認にもなる」



 露店の準備に入る前、善たちは中級ダンジョンを周回した。


 以前は一日かけて一度クリアするのが精一杯だった場所だ。

 だが今は違う。


 一日で三周。


 連携も判断も洗練され、無駄がない。


「善が変なあだ名つける前に終わるくらいには楽勝だね」


天が笑う。


「ちょうどいい肩慣らしだったな」


衛も満足そうだった。


 確実に、彼らは強くなっていた。



 精霊祭当日。


 露店が並ぶ通りに、甘い香りと鉄板の音が広がる。


「チヂミここで食えるの!?」


「涼介さんの紹介なんだけど!」


「新さんから一口もらったけど、美味かった!」


 宣伝は万全だった。

 ルナリスギルドの有名人・涼介。

 ソレスティアギルドの新。


 二人には事前に試供品を渡し、ギルドや酒場で広めてもらっていた。


 その効果は絶大だった。


「デザートに、かき氷もありますよー!」


天の呼び込みに、人が人を呼ぶ。


 列ができれば、さらに人が並ぶ。

 祭りの鉄則だ。



 夕方、店じまい。


 売上は上々だった。


 勇希はマザー・ローズの前に立ち、深く頭を下げる。


「ありがとうございました。これは……僕からの投資です」


 原価分を引いた売り上げを差し出し、子供たちに向かって微笑んだ。


「僕、いずれ店を出すんだ。君たちが大きくなったら、食べに来てほしい。これは、そのための先行投資だよ」


「勇希くん、またねー!」


「ごはん食べに行くからねー!」


 無邪気な声に、勇希は何度も頷いた。



 少し離れた場所で、その様子を見ていた涼介と新が話す。


「中級ダンジョンを一日三周やて。

 キミら、会うたびバケモンになってくなあ」


新も頷いた。


「でも……今日一番すごかったのは勇希さんだよ」


「冒険者同士の暗黙の了解――“タダ働きはしない”ってのを、

貸し借りと信用の話に変えて、全部ひっくり返してる」


涼介が笑う。


「さすがやな。“だから行くんだ、炊き出しヒーロー”」


新が、ふと真面目な顔になる。


「……この世界で、それに相応しい称号がある」


涼介も同時に頷いた。


「勇者」


その言葉は、不思議と誰も否定しなかった。


勇希はまだ気づいていない。

だがこの日、確かに“勇者”は生まれていた。


――戦場ではなく、鉄板の前で。



善のメモ


Yやったこと

・ 超級ダンジョン準備期間中に精霊祭への露店参加を決断

•勇希の提案を受け、恩返しと実戦外での成功体験づくりを優先

•露店前に中級ダンジョンを1日3周ペースで効率周回し金策&実力確認

・露店では役割分担を明確化

勇希:調理・かき氷・全体管理

衛:鉄板担当

天:呼び込み・列整理

善:買い出し・全体サポート

涼介・新に事前試食を依頼し、宣伝導線を構築



Wわかったこと

•勇希は戦闘以外の場で人を惹きつけ、信用を生む力を持っている

・「タダ働き禁止」という冒険者の暗黙ルールを、貸し借りと信用に変換できるのは才能

・ チームの実力は確実に向上しており、

中級ダンジョンは作業レベルに到達

•勇希はまだ自覚していないが、

“勇者的資質”は戦闘力よりも行動と姿勢に表れる

•強さ=戦闘だけではない、という価値観がチーム内で共有された



Tつぎにやること

・精霊祭後、超級ダンジョン(聖山エーテリオン地下迷宮)への本格準備再開

・勇希の「魔法タンク+料理スキル」という独自路線をさらに伸ばす


♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢


ここまで読んでいただきありがとうございます。


もしこの物語が

「ちょっと引っかかった」

「考えさせられた」

「テンプレ外し、嫌いじゃない」


そう思ってもらえたら、

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