27話 マザー・ローズ
聖騎士団との敗北から数日後。
一行は「一週間の準備期間」を、明確な役割分担のもとで使い切ることを決めた。
善と衛は近接主体のシングルタスク型チーム。
天と勇希は魔法主体のマルチタスク型チーム。
それぞれが、弱さと向き合うための修行に入った。
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善&衛 ――近接格闘チーム
装備屋とギルドの演習場を何度も往復する日々。
善はナックルダガーを手に、衛と向かい合っていた。
乾いた音が響き、拳と刃が交錯する。
「……っ!」
善のラッシュを、衛が最小限の動きで捌く。
「善、前よりいいぞ。ナックルダガー、だいぶ体に馴染んできたじゃないか」
「まだまだだよ」
善は息を整えながら苦笑した。
「連撃は形になってきたけど、決め手がない。
ラッシュを安定させたら、最後に“終わらせる技”を作らないと」
「焦るな。今は基礎固めだ」
一息つき、二人は演習場の縁に腰を下ろす。
しばらく沈黙が続いた後、衛がぽつりと言った。
「……なあ、善。勇希のこと、やっぱり心配か?」
「まあな」
善は即答した。
「優しいやつほど、自分を責める。
“自分が足を引っ張った”って思い込むタイプだ」
衛は小さく息を吐いた。
「あいつ、そういうところあるんだよ。
でも今回、反省会でちゃんと吐き出せたのは大きかった」
「衛が先に否定してくれたからだろ」
「……ありがとな」
衛は照れ隠しのように視線を逸らした。
善は話題を切り替える。
「ところで衛、新しい武器は考えてるか?
俺のスリングショットなら、使い方教えられるけど」
「いや……まだ決めきれてない」
衛は腰のファイアスターターに視線を落とす。
「これ、剣を出すだけじゃなくて、光も出せるだろ?
遠距離対策のヒントは、ここにある気がしてる」
善の目が光った。
「なるほどな。
“炎”じゃなくて、“光”として使うイメージか」
「それもあるし、炎自体を飛ばしたりな。あとは具体的な形だ」
「なら、イメージ固めるところから一緒にやろうぜ」
衛は静かに頷いた。
⸻
天&勇希 ――魔法チーム
一方、天と勇希はルナリスギルドを離れ、精霊教会の孤児院を訪れていた。
「私が魔法戦士の適性出た時、ここで教わったんだ」
天がそう説明する。
扉を開けた瞬間、子どもたちの声が弾けた。
「天ちゃんだー!」
「絵描いてー!」
「踊ろうよー!」
「はいはい、順番ねー」
天は慣れた様子で子どもたちに囲まれる。
奥から、白髪の老女がゆっくりと歩み寄ってきた。
「お久しぶりね、天ちゃん」
「マザー・ローズ! お元気そうで」
穏やかな再会の後、勇希が紹介される。
「この子が勇希くんね。
魔法の適性で悩んでいる、と」
「はい……」
勇希は少し緊張した様子で頷く。
マザー・ローズは目を細め、ゆっくりと言った。
「あなた、守りは十分すぎるほどできている。
問題は“どう攻めるか”ね」
少し考えた後、微笑む。
「――氷結魔法はどうかしら」
「氷……?」
「この街の冷蔵庫、実は氷結魔法の補助が入っているのよ。
あなたの料理の感覚と、きっと相性がいい」
その瞬間。
勇希の中で、何かが噛み合った。
「……それだ」
小さく、しかし確かな声。
「プロテクトを張りながら、無詠唱の牽制。
相手を動かし、制限して……
その間に、大技を仕込む」
顔を上げた勇希の目は、迷いが薄れていた。
「できる。イメージできる……!」
天が子どもたちに囲まれながら微笑む。
「うん、その顔。やっと見れた」
マザー・ローズは次に天へ向き直る。
「天ちゃん、あなたは空への対策ね」
「はい……」
「相手を先に“捉える”術を覚えなさい。
マーキングしてから追尾する、ホーミング系の魔法よ」
棚から一冊の本を取り出す。
「後で渡すわ。
あなたなら、使いこなせる」
「ありがとうございます、先生!」
天は深く頭を下げた。
善のメモ
Y
・修行期間を利用し、役割別に2チームへ分割
善&衛:近接格闘チーム(シングルタスク)
天&勇希:魔法チーム(マルチタスク)
善&衛
・装備屋とギルド演習場を往復し、実戦想定の試行錯誤
・善:ナックルダガーの練習、ラッシュ安定化を重点的に確認
・衛:ファイアスターターの応用(攻撃だけでなく“光”の利用)を検討
・天&勇希
・ルナリスギルド所属の魔法教師「マザー・ローズ」に師事
・勇希:魔法適性の相談
・天:空中戦対策の魔法指導を受ける
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W
・善&衛
・善:スピード型として、ナックルダガーは適性が高いが完成度はまだ低い
・衛:新武器は未確定だが、ファイアスターターの多用途性に伸び代あり
・勇希の精神面は大きな問題にならず、早期にフォローできていた
・天&勇希
・勇希は氷結魔法との相性が非常に良い
→ 防御+無詠唱牽制+詠唱大技の構成が成立
・勇希はマルチタスク型で、料理と魔法運用の思考構造が一致している
天は空中戦に対し、マーキング&ホーミングまほうという明確な対策ルートを得た
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T
善
・ナックルダガー戦術の完成度向上
・ラッシュ後の決め技の構築
衛
・ファイアスターターを軸にした新戦闘スタイルの具体化
勇希
・氷結魔法の実戦投入練習
・防御と攻撃を同時に回す運用の最適化
天
・ホーミング系魔法の習得と実戦検証
全体
・1週間の修行成果を統合し、超級ダンジョン(聖山エーテリオン地下迷宮)攻略へ備える
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