24話 聖騎士団②
【善 vs シリュウ】
「はあぁぁっ!」
善は間合いを詰め、一気にラッシュを仕掛けた。
踏み込みは鋭く、連撃も迷いがない。だが――
「悪くない。スピードは評価しよう」
シリュウは涼しい顔で剣を振り、善の攻撃を次々と受け流す。
わずかな隙を突くように、肩からの体当たりが叩き込まれた。
「ぐっ……!」
吹き飛ばされる善に、追撃が来る。
「――エーテル・スラスト!」
剣に込めた“気”が、刃を離れて一直線に放たれた。
善は辛うじてかわし、距離を取る。
(このままじゃ……!)
スリングショットを構え、渾身の一撃を放つ。
「オーラショット!!」
だが――当たらない。
否、撃った瞬間、シリュウはすでに横にいた。
「ほう……それが切り札か」
低い声が、すぐ耳元で響く。
「決め技のようだが、惜しいな。スピードを売りにするなら、弾速の遅い飛び道具は噛み合っていない。技の選択が甘い」
指摘と同時に、善は剣に持ち替えようとするが間に合わない。
「切り替えが遅い。――ホーリーレイン」
無数の斬撃が雨のように降り注ぐ。
善は必死に防ぐが、完全に押し切られていた。
強い。
圧倒的に。
しかも、この男はまだ本気を出していない。
殺すためではなく、まるで実力を測る“稽古”のように、善はあしらわれていた。
(まだだ…まだ終わってない)
それでも、目だけは逸らさなかった。
【衛 vs フールー】
剣と剣がぶつかり合い、乾いた金属音が響く。
衛とフールーは互角以上の斬り合いを続けていた。
「やるな、衛! この中で一番強いのはお前だ」
「それはどうも!」
フールーは一度蹴りで距離を取り、武器を引く。
次の瞬間、手にしていたのは剣ではなく魔導銃だった。
「だが弱点もある。お前は近距離特化だ」
引き金が引かれる。
「マギ・バーストライン!!」
無数の魔力弾が一直線に撃ち出され、弾幕となって衛を包む。
近づくこともできず、回避するだけで精一杯だ。
「戦いとはな」
フールーの声が弾幕の向こうから響く。
「相手の嫌がることを、押し付け続けることだ。卑怯とは言うまいな」
一発、また一発。
魔導弾が衛を捉え、押し切られるように戦況は一方的になっていった。
【天 vs フライア】
フライアは背中の翼を大きく広げ、軽やかに宙へ舞い上がった。
羽ばたき一つで高度を取り、地上の天を見下ろすその姿は、まさに空を支配する者だった。
翼を持つ亜人――しかも飛翔術式まで併用する存在は、冒険者の中でも極めて希少だ。
「《魔法弾》!」
天は即座に四色の魔法弾を放つ。
だが弾は、空を裂く前に減衰し、フライアには届かない。
「……っ、もう! 射程外!!」
思わず声が荒れる。
地上戦を想定した戦い方が、完全に噛み合っていなかった。
「ふふ。可愛らしいわね、お嬢ちゃん」
フライアは余裕たっぷりに微笑み、くるりと空中で一回転する。
「飛んでる相手と戦うの、初めて?
それとも――私みたいな女と、かしら?」
天を値踏みするような視線。
その中には、明らかな好奇心と、からかうような色気が混じっていた。
「ねえ、私の恋人にならない?優しくしてあげるわよ」
「結構です!」
天は即答した。
「私、好きな人いるので!」
「……あら」
フライアは一瞬だけ目を細め、それから楽しそうに笑った。
「そう。じゃあ――遠慮はいらないわね」
次の瞬間、弓に“気”が満ちる。
「《アースレイン》」
放たれた矢は一本ではなかった。
地の気を纏った無数の矢が、雨のように降り注ぐ。
「――っ!」
天は咄嗟に回避するが、空からの一方的な攻撃は想像以上に苛烈だ。
足元の地面が抉れ、衝撃が全身に伝わる。
「どう? 空を取られるって、こういうことよ」
フライアは悠然と空を漂いながら、天を見下ろしている。
届かない。
追いつけない。
――でも。
天は歯を食いしばり、槍を強く握り直した。
(まだ…終わりたくない)
この不利な状況を、どうひっくり返すか。
魔法戦士としての真価が、今まさに試されていた。
【勇希 vs トータス】
重い衝撃。
空圧衝。
勇希は反射的にオーラプロテクトを展開する。
――防げた。
だが。
次。
また次。
守れる。
守れる。
それだけ。
息が荒くなる。
足が、前に出ない。
「……ふむ」
トータスの声は、興味を失ったそれだった。
「お主、この中で一番弱いな」
胸の奥が、ぎしりと鳴る。
「攻撃手段がない。
殴る? その拳、飾りじゃろ」
勇希は叫び、前に出る。
「うるさい!!」
拳を振るう。
――当たる。
だが、手応えがない。
石に触れたみたいだった。
「ほれ、この程度じゃ」
その瞬間、何かが折れた。
(……あ)
これまで、仲間がいた。
自分は“守る役”だった。
それで、良かった。
一人で、試されるまでは。
「……終わりにしよう」
トータスの術式が絡みつく。
《MTAマジック・タイム・アタック》。
「五分じゃ。
倒せねば、お前の魔力も“気”も枯れる」
静かな宣告。
「無力な盾になる。……まだ、立つか?」
勇希の視界が、揺れた。
守れない。
攻められない。
逃げられない。
――自分は、ここにいる意味があるのか。
勇希は、盾を構えたまま立ち尽くす。
心だけが、先に崩れ落ちていた。
善のメモ
Y
善
・スピードを活かした接近ラッシュ
・切り札として《オーラショット》を使用
・近接⇄遠隔の切り替えを戦闘中に試みた
衛
・近接剣技での正面戦闘
・剣による斬り合いを主軸に攻めた
天
・地上からの魔法攻撃
・飛行敵に対して正面から撃ち合いを試行
勇希
・《オーラプロテクト》による防御特化
・近接打撃による反撃を試み
W
・シリュウは完全に格上
・スピード・判断・技の噛み合わせ、すべてが洗練されている
・自分のオーラショットは「決め技としては適性不足」
・武器切り替えや判断速度が致命的に遅い
・聖騎士団は全員“役割完成型”
・フールー:近接特化の相手を、距離と弾幕で一方的に潰す
・フライア:飛翔という前提条件そのものが地上組へのメタ
・トータス:タンク型術師の完成形。防御しかできない勇希の“上位互換”
・勇希の問題点が明確化
一対一の経験不足
防御はできるが、勝ちに繋がる攻撃手段が存在しない
「盾であること」が初めて“弱点”として突きつけられた
全員が初めて「自分の限界」を直視させられた戦い
誰一人、通用していない
これは敗北ではなく、明確な“格差の提示”
T
・自分の戦闘スタイルを根本から再設計する
・スピード型なのに弾速が遅い矛盾を解消する
・武器・技・役割の再定義が必要
・全員の戦闘スタイルの形を見直す
・勇希を「守るだけの盾」から脱却するルートを用意し、一対一でも意味を持てる存在にする
・聖騎士団は“倒す相手”ではなく、“越える壁”
・今のままでは絶対に勝てない
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