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テンプレをぶち破れ、エゴイストがクソみたいな神を殴り倒して世界をひっくり返すまで。  作者: 強炭酸
2章 冒険編

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21話 スチームサウナと努力論

「さあさあ、おあがりよ!」


焚き火のそばで、勇希が少し誇らしげに声を張った。

炎に照らされた横顔は、いつもよりどこか大人びて見える。


前回と同じ食材のはずなのに、鍋から立ち上る香りはまるで別物だった。

薄く削がれた燻製ビーフがスープの中でゆっくりと温まり、燻煙の香ばしさが湯気に溶けて鼻腔をくすぐる。

椎茸の出汁がじんわりと広がり、刻んだネギと山菜が彩りと歯触りを添えていた。


焚き火の爆ぜる音と、スープの静かな沸騰音が重なり合う。


「……うわ、これ反則でしょ」


思わず本音が漏れる。


「おいし〜!」


天は即答だった。

一口含んだ瞬間、目を細めて、肩の力が抜ける。


「最高だな」


衛は余計な言葉を足さず、ただそう言ってうなずく。

クラウディアは腕を組み、ふうっと満足げに息を吐いた。


「腕を上げたわね、勇希……恐ろしい子」


「いや、まだまだです」


謙遜する声とは裏腹に、勇希の耳が焚き火みたいに赤い。

それを誰も指摘しないのが、今の距離感だった。


食後、残り火を使って簡易スチームサウナを組む。

濡らした布を吊り、熱した石に水をかけると、

「ジュッ」という音とともに白い蒸気が立ち上った。


湿った熱が肌を包み、疲労がじわじわと溶けていく。


自然と男子組と女子組に分かれる。


「はいはい男子ども、のぞきに来たらただじゃ置かないからね!」


クラウディアが指を鳴らして警告すると、火花が小さく散った。


「クラウディア、頼りになるボディガードだね」


天が笑えば、


「でしょ?」


と、妖精は胸を張る。

サイズは小さいが、存在感は誰よりも大きい。


――数十分後。


全員さっぱりした状態で、再び焚き火を囲む。

背中を伸ばすと、骨が軽く鳴った。


夜気は冷えているが、火の温もりが心地いい。

暗闇の向こうで、ダンジョンの息遣いのような静寂が広がっている。


クラウディアが、ふと思い出したように口を開いた。


「そういえば善って、変なあだ名付けるじゃない?」


「うっ……」


喉が詰まる。


「私はね、だんだんハマってきた」


天が楽しそうに続ける。


「『リア充・ザ・ダ・ヴィンチ』とか、普通出てこないよ。他にどんなのがあるの?」


「えーと……」


衛が指折り数え始める。


「ヘルマンモス相手に“重量級・高タンパク食材”」


「グランドマイアに“仲間呼ぶよ?って顔したドロドロ親分”」


勇希が補足する。


「長すぎて、途中から“ドロドロ親分”だったけどね」


「オレに対しては“炎の剣士・攻撃表示アタッカーモード


「僕は“だから行くんだ、炊き出しヒーロー”」


天が吹き出した。

笑いすぎて声が出ていない。


「ちょ、待って……!」


「もうやめて! 思い出させないでくれ!」


顔を覆うと、さらに笑いが広がった。

焚き火の火が、まるでそれに合わせるように揺れる。


夜も更け、寝支度に入る前。

俺は習慣のように、ステータスウィンドウのメモ帳を呼び出し、記録を書き込む。

その手つきは流れるようにスムーズだ。


「記録って、大事だからさ」


焚き火を見つめたまま、ぽつりと呟く。


「今の俺たちが、どれくらい成長してるのか。

 どこで足踏みしてるのか。

 それを把握しておかないと、判断を間違える」


天は、ふざけた空気を一度手放し、真剣な目で聞いていた。


「父さんの受け売りだけどね。

 “自分を正しくはかる”のが、努力のスタート地点なんだって」


火がぱちりと弾ける。


「自分がどこにいるか分からないと、目標との距離も方向も測れない。

 そして、何もしなくても、タイムリミットは向こうから来る。

 だから、いずれ来る目標を乗り越えるための足場を作る。

 それが努力だって」


一息置いて、続ける。


「学校にいた時は、テストの点が全部だったから、考えなくてよかった。

 この世界じゃ、ステータスもハリボテだ。

 だから尚更、記録が必要だと思った」


「……善って、努力のイメージがちゃんとしてるんだね」


天が静かに頷く。


「いや、高校生のガキだよ」


自嘲気味に笑う。


「目先の目標は“上級ダンジョン制覇”。

 でも、そこで終わりたくない。

 その先の“本命”は、まだ決まってないだけだ」


「それでいいと思う」


天は即答した。


「“終わりたくない”って感覚があるなら、

 きっと、まだ伸びる」


その言葉が、胸の奥に静かに落ちた。


クラウディアはその様子を眺めながら、そっと目を閉じる。

精神型の“気”が緩やかに流れ、精神感応通信チャット・ウィスプで勇希と衛だけを繋げた。


(これは……いい雰囲気ね)


(理屈ばっかりだけど、格好つけたい年頃だよな)


(はよくっつけ。はよ)


火がはぜる音が、夜に溶けていく。


キャンプはやがて明け、

一行は残る階層を一気に駆け抜ける準備に入った。


――上級ダンジョン、最終局面へ。


それぞれの思惑と成長を胸に抱いたまま。


Yやったこと

・セル・ギガス撃破後、キャンプで休息

・勇希の料理で体力と士気を回復

・クラウディア・天・皆と雑談

・自分の考えをメモにまとめた


Wわかったこと

・勇希の料理は戦闘力と同じくらい重要

・あだ名は無意識だけど、仲間の緊張をほぐしている

・努力とは「自分を正しく測ること」から始まる

•努力には「現在地を測る指標」が不可欠

•学生時代はテストの点数が自然とその役割を果たしていた

•この世界ではステータスが信用できないため、自分で記録し、考える必要がある

・今の目標は「上級ダンジョン制覇」だが、それは通過点

・天は、自分の考え方や姿勢をちゃんと理解してくれている


Tつぎにやること

・上級ダンジョン最終階層まで攻略

・今後の“次の目標”を見据えながら動く

・記録を続けて、自分たちの成長を見失わない


♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢


ここまで読んでいただきありがとうございます。


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「ちょっと引っかかった」

「考えさせられた」

「テンプレ外し、嫌いじゃない」


そう思ってもらえたら、

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