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テンプレをぶち破れ、エゴイストがクソみたいな神を殴り倒して世界をひっくり返すまで。  作者: 強炭酸
2章 冒険編

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17話 いざ上級ダンジョンへ

改めて、ルナリスギルドで上級ダンジョンを受注する。


朝のギルドは相変わらず騒がしく、金属鎧の擦れる音、依頼書をめくる紙の音、受付カウンター越しのやり取りが混ざり合っていた。

その喧騒の中で、善は依頼書に視線を落とし、指先で内容をなぞる。


――上級。

文字としては同じでも、これまでとは重みが違う。


受付が終わった、その直後だった。


「おお、キミらか。おおきに。上級行くんやろ?」


背後から、聞き覚えのありすぎる関西弁が飛んできた。


振り向くと、そこには涼介が立っていた。

先日の演習場での張り詰めた雰囲気が嘘のように、今日はやけに柔らかい表情だ。


「マッピング用の紙と松明は、ちゃんと用意しとき。

 上級は暗いし、道も罠もよう変わる。ええ子らやから、そこはケチったらあかんで」


言いながら、指で軽くトントンとカウンターを叩く。

今にも飴玉の一つでも差し出してきそうな距離感だった。


「涼介先輩、元々こう見えて面倒見いいんだよ」


天がさらっと補足する。


「見ての通りですわ」


涼介は肩をすくめ、善を見る。


「胸を借りるつもりで頑張ります」


善が頭を下げると、涼介は少し照れたように手をひらひら振った。


「まあ、無事に帰ってきぃ。ほな、行ってらっしゃい」


その一言が、背中を軽く押してきた。



ルナリス上級ダンジョン・地下一階。


一歩、足を踏み入れた瞬間。


空気が、変わった。


――暗い。


それも、ただ光がないだけじゃない。

音が吸われ、距離感が狂うような、底の見えない暗さだった。


初級や中級では、必ずどこかに魔法灯があった。

だが、ここにはそれが一切ない。


松明は持ってきている。

だが、壁際まで届くその灯りは、この広さの前ではあまりに心許なかった。


「……なあ、衛」


善は声を落として切り出す。


「ファイアスターターでさ。

 灯り用の炎、出せないかな」


「灯り用?」


「炎って、酸素と物質が化合して、熱と光が出る現象だろ。

 だったら、熱じゃなくて“光”を意識した炎、いけるんじゃないかと思って」


一瞬、衛は眉を寄せた。

だがすぐに、小さく息を吐いて頷く。


「……試す価値はあるな」


ファイアスターターを握り、意識を集中させる。


空気が、わずかに震えた。


次の瞬間、衛の手元に生まれたのは――

熱をほとんど感じさせない、淡く白い光だった。


炎というより、発光体に近い。


「……いけたな」


「いや、どういう原理だよそれ」


提案した善自身が思わず突っ込む。


照炎グロウフレームだな。

 部屋ごとに使えば、松明より実用的だ」


光は揺らぎながら、通路を柔らかく照らした。



善は、無意識に天へと視線を向けた。

彼女は今日も、黒と白を基調にした戦闘衣装だ。

黒白の衣装に、軽装。

赤いインナーカラーの入ったボブカットが、話すたびに揺れる。

機動力重視なのは分かる。分かるが――


「……なあ、天」


声を落として言う。


「その装備、初戦闘だしさ。動きやすいのはいいけど……」


天は一瞬きょとんとしたあと、すぐに意味を察したらしい。


「ああ、そこ?」


悪戯っぽく笑って、ひらりと一回転する。


「大丈夫大丈夫。一見プリーツスカートだけど、実際はショートパンツで見える心配とかないから」


「……そ、そうか」


「心配するとこ、そこなのが善らしいけどね」


さらっと流されて、善は軽く咳払いをした。


善は咳払いをひとつしてから、索敵と罠感知スキルを展開する。


「……このダンジョン、変だぞ」


「変?」


「罠の位置、通路の開閉、敵の配置……全部、流動的に変わってる」


空気の流れ、壁の継ぎ目、微かな魔力の残滓。

それらが、常に書き換えられている感覚。


「天。今見えた罠の位置、マップに書き込んでくれるか」


「了解。任せて」


天は即座にスケッチブックを開き、鉛筆を走らせる。

迷いのない線が、暗闇の中で次々と地図を形にしていく。


勇希も一度、深く息を吸った。


「上級相手に通用するか分からないけど……威圧、やってみるよ」


ここでは、誰か一人欠けるだけで崩れる。

全員が役割を果たして、初めて前に進める場所だ。


「私は戦闘できないからねー」


宙を漂いながら、クラウディアが軽く言う。


「勇希のご飯の時だけ呼んで」


「……それはそれで重要だな」


誰も否定しなかった。



最初に現れたのは、石皮のゴーレムだった。


「……初級のボスが、雑魚扱いか」


「でも、こっちは四人だしな」


衛が踏み込み、炎を纏った剣を振るう。


一撃。


鈍い音とともに、ゴーレムは粉々に砕け散った。


「瞬殺だね」


「ちょっと! 私の練習にならないんだけど!」


天が不満そうに声を上げる。


「あー、悪い。つい」


「先は長い。温存しとけ、天」


「はーい」


素直に引き下がる天を見て、勇希が小さく笑った。


「善、調子戻ってきたね」


「だな」


衛も同意する。


「天、覚悟しとけよ。

 善はハイになると、変なあだ名付け始める」


「草。ちょっと楽しみなんだけど」


「いや、無意識だからな!? 悪気はないんだ!」


過集中に入った時の癖だ。

自覚はあるが、止められない。


軽口を交わしながら、一行は歩みを進める。


暗闇の中で、光が揺れ、マップが更新され、役割が回る。


――ここからが、本番だ。


上級ダンジョンは、確かにそう告げていた。



善のメモ


Yやったこと

・ルナリスギルドで上級ダンジョンを正式受注

・衛に提案して、炎を「熱」ではなく「光」に特化させた照明術を試した

・索敵&罠感知でダンジョン構造の異常を確認

・天にマッピング役を依頼

・勇希が威圧スキルを上級相手に試行

・初級ボス級の石皮ゴーレムを雑魚として処理


Wわかったこと

・上級ダンジョンは灯り前提ではない設計

・通路・罠・敵配置が流動的に変化する人工構造

・固定マップ攻略は通用しない

・天の視野と判断力が探索の要になる

・衛の炎は「武器」だけでなくインフラ(照明)にも転用可能

・4人編成になったことで、役割分担が明確になってきた

・自分が調子に乗ると、変なあだ名を付け始める(要注意)


Tつぎにやること

・天のマッピングを基準に、臨機応変な進行ルートを確立

・衛の照炎グロウフレームを継続運用できるか検証

・勇希の威圧が通用しない敵への対処法を考える


♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢♢


ここまで読んでいただきありがとうございます。


もしこの物語が

「ちょっと引っかかった」

「考えさせられた」

「テンプレ外し、嫌いじゃない」


そう思ってもらえたら、

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