第4話
放課後、ソウマは保健室のベッドに横たわっていた。
顔には包帯が巻かれ、腕には擦り傷の手当てが施されている。
その隣で、静かにガーゼを替えている少女――
「……痛くない?」
「うん、大丈夫だよ。ありがとう、ミナ。」
ミナ・アマギ。ソウマの幼馴染であり、学級委員長。
いつも冷静で、誰にでも公平に接する彼女は、今日もグラド教師の暴力を止めてくれた。
「まったく……教師が生徒に手を上げるなんて、許されることじゃない。」
「……うん。」
ミナはため息をつきながら、ソウマの包帯を整える。
「でも、ソウマが反論しないから、余計にみんな好き勝手言うんだよ。」
「……僕が言っても、信じてもらえないから。」
「それでも言うべきだった。……私は、信じるよ。」
ソウマは目を伏せた。
その言葉が、胸に染みる。
「……昔から、そうだったよね。ミナはいつも僕の味方だった。」
「当たり前でしょ。幼馴染なんだから。」
ミナは微笑む。
その笑顔に、ソウマはふと、何かを思い出そうとした。
――母の笑顔。
――手を握った感触。
だが、何も浮かばない。
「どうしたの?」
「今、何か大切なことが思い浮かんだんだけど・・・もやがかかってなにも浮かばない。」
「大切なことって・・・、お母さんとの約束のこと?」
「えっ!お母さんって誰?」
「えっ!お母さんだよ!ソウマのお母さん!あんなに大切にしてたのに。いつも話してくれたじゃない。
病室でのこととか、最後に交わした約束とか……『絶対リュウソウのような人々を守れる、母さんが誇れる生き方をするよ。』って約束したって!」
「ごめん、なにも浮かんでこない。」
ミナは目を見開いた。
「それって……どうして?記憶喪失なの?」
「召喚獣に聞いても代償だからっていって教えてくれないんだ。」
ミナは言葉を失った。
「そんな……どうして……」
(……馬鹿。そんなの、お母さんが望むわけないじゃない。)
ミナはうつむきながらソウマには顔が見えないようにつぶやいた。
(だったら、私が覚えてる。お母さんとの思い出、私が覚えてるから。ソウマが忘れても、私が伝える。)
ミナの瞳は、涙で潤んでいた。
「……どうしたの、ミナ?」
「ううん。何でもない!ソウマ!私はこれからも、ずっと一緒にいるから。」
ミナはソウマの手を握りながら言った。
その言葉と手のぬくもりによってソウマの胸の奥に、微かな光が灯った。




