最終話
『それでさ!今回の話で一番良かったのはさ─』
明日から高校二年生となる今日、相も変わらず孝太と鈴華は『いもなじ』の話で盛り上がり、既に一時間以上通話を続けていた。
いつもなら通話を終える時間だが、鈴華は妙にテンションが高く、話す勢いが収まらない。
それは孝太も同じ気持ちで、その理由が、
『それにしても、まさかこんなに早くアニメ化が決定するなんてね〜』
鈴華の言うように、順調に作品の人気を上げていった『いもなじ』は、この夏にテレビアニメ化される事が決まったのだ。
いつもは表立って喜ばない孝太も、これに関してはテンションを上げずにはいられない。
「まだ少し先だけど、今から楽しみなのは変わりないな」
『だねー!って、もうこんな時間!?明日早いからそろそろ寝なきゃ!』
「そうだな、それじゃあまた明日」
そう言って孝太は、鈴華が通話を切るのを待っていたが、一向に切れる気配がない。
不思議に思っていると、鈴華が小さな声で何かを口にする。
「あ、あのさ、もし明日同じクラスになれたら……」
そこまで言って、鈴華の言葉が止まる。
続きを待っていると、風切り音が電話越しに聞こえる。
「……やっぱり何でもない、また明日ね!」
そのまま通話は終わり、孝太の部屋に突然沈黙が訪れる。
そんな中、鈴華が言おうとした事が気になって、孝太は首を傾げながら考える。
「……同じクラスになれたら、か」
鈴華が言おうとしていた事を何となく察する。
奇しくもそれは、孝太が思っていた事と同じであった。
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翌日、学校に着いた孝太は、自分のクラスを確認して教室に向かう。
教室の扉を開けると、玄関に貼り出されていたクラス表にあったように、鈴華の姿がそこに会った。
まだ朝早くだからか、鈴華の周囲には翔太郎だけしかいない。
孝太と鈴華の目が合う。
鈴華は少しだけ微笑む。
その表情は、どこか寂しげに見える。
以前までなら、二人の学校での挨拶はこれで終わっていた。
孝太はそのまま鈴華の元へと近づく。
「……おはよう、南沢」
そう声に出して挨拶をする。
鈴華は一瞬目を見開いた後、満面の笑みを浮かべる。
「うん!おはよう、越島!」
今まで話している所を見たことがない組み合わせに、周囲の生徒は驚きざわめきだす。
「あれ?二人って仲良かったの?」
隣に居た翔太郎が純粋な気持ちで質問する。
「まあな、普通に友達だよ」
孝太がそう答えた事が余程嬉しかったのか、鈴華の笑みがさらに輝きを増す。
そこに、一人の女子生徒が勢いよく扉を開ける。
「孝太!やったね!同じクラスだ、ね……」
勢いよく扉を開けた眞知が、孝太と鈴華の漂わせる雰囲気を見て、眉間にシワを寄せる。
「ちょっと!何よ!この甘ったるい雰囲気は!」
「お、落ち着け!ただの友達同士の会話だよ!」
「嘘つけー!この、浮気者がー!」
眞知が孝太に噛み付く勢いで飛びついてくる。
それから孝太は逃げる。
そんなやり取りを見て、鈴華は笑っている。
孝太と鈴華は、ようやく友達としてのスタートを切った。
この先も、二人の関係は続いていく。
この話はこれにて終了とさせていただきます。
ここまで読んでくださった方には感謝しかありません。
本当にありがとうございました!
今回は、恋愛より友情関係に重きを置いてみました。
元々、短編で書こうと思っていた話を、長くしたので、無理やりになってしまった部分もあると思います。
そこは反省点です。
次回作も既に考えているので、読んでくださると光栄です。
また、私事ではありますが、以前に投稿した作品が、
第5回一二三書房Web小説大賞にて、コミカライズ賞を受賞致しました。
これも読んでくださった方のおかげです。
そちらもぜひ読んでみてください!
長くなりましたが改めて、本当にありがとうございました!
次作もなるべく早く書きます!




