表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
13/23

第13話

 (……どうするかなー)


 

 年が明けて1月4日、鈴華は翔太郎を始めとする友人達と初詣に訪れた。

 近所の神社に来てみたが、さすがの賑わいで、友人達とはぐれてしまった。

 探させるのも悪いので、メッセージで先におみくじを引く旨を伝える。

 みんなで来はしたが、何もお願い事の時まで一緒に居なくてもいいだろう。


 おみくじを引きに行く途中で、甘酒を配っているのを見つけ、一杯もらう。

 普段なら甘酒があっても飲まない鈴華だが、何故か初詣の時はつい飲んでしまうのだ。


 人の波は激しくなるばかりで、気づけば人まみれで身動きが取れなくなっていた。

 そんな中、人混みの中から、ニョキりと手が伸びてきた。

 


 「だ、誰か〜!?」



 その手から少女の助けを求める声が聞こえた。

 微かな声だったが、鈴華の耳にははっきりと聞こえた。

 鈴華は咄嗟にその手に自分の手を伸ばす。



 「捕まって!」


 「こ、これは!人の手!」



 少女は鈴華の手をがっしり掴む。

 鈴華はそのまま自分の方へと勢いよく引っ張って、少女を人の波から助け出す事に成功する。

 サッと端により、人の波から逃れる。



 「大丈夫だった?」


 「すみません、助かりました……って、うわー!?」

 

 「ど、どうしたの!?」


 「お、お姉さんの服に、私の甘酒がー!?」



 引っ張った拍子に、少女の手に持っていた甘酒が鈴華の服にかかってしまった。

 その証拠に、少女の手には空の紙コップが握りしめられている。



 「ど、どうしよー!?すぐに洗わないと!」


 「これくらい平気、あなたの方こそ、怪我とかなくて良かった」


 「良くないですよ!こんな綺麗なお姉さんの服を汚してしまうなんて!そうだ!家、ここからすぐなんで、うちで洗いましょう!」


 「ええ!?いいよ、そこまでしてくれなくても」



 あまりに突然の提案に、鈴華はさすがに遠慮の気持ちを表す。

 しかし、少女は引き下がらない。



 「ダメですよ!すぐに洗わないとシミになりますし、助けてもらったお礼も兼ねて!」


 「で、でも……」



 遠慮する言葉が喉まで出てきていたが、少女の熱意に根負けして、鈴華は提案を呑んだ。

 



━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━━




 二人は、神社を出て、少女の家へと歩き始める。


 

 「えっと、あなたの名前は……」


 「私、梓って言います!」


 「そっか、よろしくね梓ちゃん。私は南沢 鈴華です。梓ちゃんは中学生?」


 「今年中3の受験生です!普段は神頼みはしないんですけど、さすがにしておこうと思いまして」


 「そうなんだ、じゃあ、今年は大変な一年だね」



 二人で他愛ない話をしながら、梓の家に向かう。

 鈴華の梓への印象は、明るく元気で、社交的な子というイメージだ。

 誰とでも仲良くなれそうな、そんな雰囲気を感じる。



 「そういえば、鈴華さんってモデルか何かですか?」


 「ど、どうしてそんなことを?」


 「いえ、あまりに綺麗だから、そういう仕事してるのかなーって」

 

 「モデルとかはやってないかな……でも、綺麗って言われて悪い気はしないかな」



 梓が、嘘を付けない性格ということを鈴華は知らないが、その場で、、梓がお世辞でもなく、純粋な気持ちから言っている事はすぐに分かった。

 天真爛漫という言葉が、これほどまでに似合う子はそう居ない。



 「あ、着きました!」


 「……え?」



 そうこう話している内に、梓の家の前に到着する。

 その家の表札を見て、鈴華は言葉を失った。



 「鈴華さん?どうかしましたか?」


 「……えっと、梓ちゃんの苗字って……」


 「言ってませんでした?越島です。越島 梓です」



 予期せぬタイミングで、鈴華は孝太の家にお邪魔することになった。

 そして、今自分の家に鈴華が居るという事実を、孝太は知らない。

 

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ