間章一
― ― ― ――1993年5月23日...
一機の飛行機が青山市の上空を飛んでいた。
日本エアライン、通称NALの旅客機だ。
夢幻のソラ 間章一 「異能咲華」
澄み渡る夏空に一筋の白い線が描かれていった。
それを描いている飛行機。その中には定員には満たないがかなりの数の人、445人の乗客が乗っていた。
「あ、うみがみえるよー」
「ほんとだねー」
その中でも元気なのが幼い少女二人だ。一人は黒い髪の長く伸ばしていてもう一人は二つに髪をまとめている、所謂ツインテールだった。そして下には、青山市のほかにも周辺の市も見え、その先には海も見えていた。
「こら、そんなにはしゃいだら他の人の迷惑になるでしょ」
「「ごめんなさーい」」
その二人に母親らしき人が注意をする。しかし、ツインテールの少女はその女性にそっくりなのだが、もう一人の長髪の少女は似ていない。その理由は簡単で、その少女は女性とその子供の知り合いで一緒に乗せてもらっているだけなのだ。
そのときだった。
―――バゴォンッ!
そんな轟音が機体の右側から響いた。
当然人はすぐさま反応をし、その轟音のなったほうを向く。そして、
「エ、エンジンが爆発してるぞっ!」
誰かが叫んだ。
しばしの静寂があったもののすぐに機内は混乱に包まれた。
泣き叫ぶ子供、暴れだす女性、混乱してうろたえる男性。そんな人が続出した。
ジャンボジェット機はエンジンがひとつ故障しても不安定にはなるが飛ぶことが出来る。しかし一般人がそんなことを知る由も無く、搭乗員がそれを告げようとしたとき、自体は最悪の方向へと動き出した。
―――ドガンッ!
―――ドゴンッ!
左右から二つの轟音。見れば左右のエンジンが爆発しエンジンは残り一基、しかし爆発により機体の翼は壊れておりもう墜落も時間の問題だった。
先程の少女も母親に泣きついており、母親は母親で混乱しながらも子供を宥めている。
しかし、機体はだんだんと地面に向かい墜ちていく。もはや成す術は無く、搭乗員も諦めたような表情をしていた。
その阿鼻叫喚の騒ぎの中、先程の長髪の少女のみ目を瞑り、静かにしていた。そして・・・
―――ドッカーンッ!!
機体は青山市の山の中に頭から墜落した。
すぐに広がる機体から出た炎、そして人の悲鳴。しかしその悲鳴も次第に炎に飲み込まれ、消えていった。
そして救助隊の来たころには搭乗者のほとんどが焼け死んでいた、ただ一人の行方不明の少女を除いて。
…
夜の暗闇の中、一人の少女が森の中を疾走していた。
三、四歳かと思われるその背格好には似つかわしくない鋭利な雰囲気を纏っている。しかしその顔には何の表情も無い、無表情だった。
そして、その少女の髪は白金に、眼は黄金に輝いていた。
間章一 異能咲華/了