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転生最弱ポメラニアン、魔王を倒す  作者: キサラギトシ
第五章 ポメラニアンと魔王の邂逅
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90 プーを探して

「も、モフ……ゼエゼエ……もう、限界だ、ニャ」


 俺の後ろを走ってついてきていたサバトラが、歩道の横でパタリと倒れた。


「おい、もうすぐ長谷寺だぞ。もう少し頑張れよ」

「マジで、勘弁ニャ……」


 まあ、無理もない。かれこれ4時間は走りっぱなしだ。走るのには慣れている犬である俺も、気がつくと足が少しガクガクしていた。


「仕方ない、ちょっとここで休憩するか」

「……」


 見ると、サバトラが白目をむいて横たわっている。

 ああサバトラ、お前はいい友人だったよ。あの世でも達者で暮らせよ、と言いながら、俺は仏前に手を合わせる。


「勝手に殺すニャ!」


 横たわったままサバトラが突っ込んでくれた。ほんとコイツ、ツッコミの才能があっておもろい奴だよ。



 30分ほど休憩したあと、弁当だと賢者ソースに渡された春巻きをかじり、俺とサバトラは二手に分かれてプーを探すことにした。


 サバトラは得意とする地元の猫たちへの聞き込み。俺は長谷寺近辺をうろうろし、犬の散歩をしている人がいたら、その犬にこっそり話しかけて情報を集めることにした。


 元旦ということもあり、有名なお寺である長谷寺周辺の人手はかなり多い。ほとんどは家族連れやカップル、友人同士での初詣客だ。


 だか中には地元の人と思われる、犬の散歩をしている人もいる。俺は人の間をかいくぐり、こっそり散歩している犬に近づき、話しかけた。相手はメスのマルチーズで、ピンク色のリボンをしていた。


「あけおめ! ちょっと聞きたいんだけど、いい?」

「あけおめ……? なにそれ」


 説明しよう。

 新年の挨拶「あけましておめでとうございます」の短縮形である「あけおめ」が使われ始めたのは、一説では1996年と言われている。当時盛況だったパソコン通信「ニフティサーブ」で、ある人物が「あけおめ ことよろ 足腰ヨロヨロ」と使ったのが最初とされている。

 当然、1990年で使っている人物はいないのである。


「あれ、キミ、死んじゃった天才犬に似てない?」

「あ、よく言われるんだ。僕はポメ太、よろしくね!」

「えー、ちょっとカッコイイ!」


 ほんと、ポメラニアンになってからの俺は結構モテるぜ。これが人間時代だったらもっと良かったのに、とは思うが。


「このあたりで、アプリコット色のトイプードル、見たことないかい?」

「トイプードル……ああ、あの天パの、焦げたような犬ね」


 ひどい言い草だけど、まあ的を射ているか。


「そうそう。僕の友人なんだけど、この辺りに引っ越してきたらしいんだ」

「うーん。知らないなぁ。ごめんね」

「そっか。ありがと!」


 まあ、そんな簡単に見つかるんなら苦労はないよな。


 ◇◇◇


 そのまま、俺は夕暮れまでずっと聞き込みを続けたが、プーの行方どころか、この時代はトイプードル自体あまり人気がなく、存在自体を知らない犬も多かった。


 暗くなってきたので、俺はサバトラと待ち合わせていた鎌倉大仏まで走って戻った。


 サバトラはもう聞き込みを終えていて、どこかで調達してきたらしい干物を齧っている。おい、俺の分はあるんだろうな。


「あ、おかえりニャー」


 言うなり、サバトラは残りの干物を急いで口に入れる。こ、コイツ……独り占めしやがったな。


「ま、いいや。サバトラ、聞き込みはどうだった?」


 口をモゴモゴさせながら、サバトラが答えた。


「ニャッニャッニャッ、モフくん、このサバトラの調査能力を舐めてもらっては困るニャ」

「お! 何か情報をつかんだのか?」

「まあ、焦ることはないニャ。あ、そういえば喉が渇いたニャー」


 こ、コイツ……飲み物調達で、俺を使いっ走りにしようとしてやがるのか? 干物を独り占めしたケチ猫のくせに。


 とはいえ、何の情報も得られず1日が無駄となった俺にとっては朗報かもしれない。仕方なく俺は落ちていた缶をくわえると、手水舎で水を汲んでサバトラに持っていった。


「サバトラどの、お水にございます」

「うむ、ごくろうニャ」


 缶の口に舌を入れ、ペロペロと器用に水を飲むサバトラは実に幸せそうだった。缶の口で舌を切って怪我しちゃえばいいのに、と腹が減って不機嫌な俺は思わず考えてしまった。


「はー。では、モフくんに伝えるニャ。実は、動物がたくさん集まっているお屋敷があるという情報を手に入れたニャ」

「本当か、サバトラ?」

「そこにプーさんがいるとは思ってないけど、そこならきっと1匹ぐらいは、トイプードルの噂を聞いたことがある動物がいるはず二ャ」


 確かにサバトラの言う通りだ。飼い主にもよるだろうが、トイプードルは基本、家の中で飼う犬だ。散歩もさせるだろうが、家や庭が広ければ散歩させることは必須ではないだろう。


 でも数多くの動物、特に空を飛ぶハトやスズメたちなら、トイプードルの行方を見たことがある確率は高そうだ。


「でかした、サバトラ!」

「そうニャろ? あーモフくん、僕、甘いものも食べたいなー」

「お前、調子こくのもいい加減にしろよ!」


 俺は渾身の犬パンチでサバトラを突き飛ばすと、サバトラは「フニャー!」と叫びながらゴロゴロと転がっていく。


 よし、明日は「動物がたくさん集まっているお屋敷」とやらに行ってみよう。サバトラのおかげで方針が定まって良かった。


 だが、このお屋敷が俺もサバトラも予想すらしなかったヤバい家であることに、当然この時は気付くはずもなかったのだ。

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