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転生最弱ポメラニアン、魔王を倒す  作者: キサラギトシ
第二章 ポメラニアン暮らしと魔王の影
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33 乱暴チワワの実力

 乱暴チワワ『くーちゃん』の飼い主である老夫婦はパパさんとママさんにも謝ったあと、おじいさんとママさんが世間話を始め、その中で状況を知ることができた。


 老夫婦は「海老名さん」という近所に住む地主さん。息子が二人いるそうだが、二人とも独立して今は夫婦のみで暮らしているんだとか。


 ご主人によると、家で黒と白が混じったチワワを長年飼っていたそうだが、先月夏に亡くなってしまい、奥さんがすっかり気落ちしてしまったようだ。令和の世なら「ペットロス」と呼ばれる症状だが、平成元年当時はそんな言葉など存在していない。


 それ以降、海老名さんの奥さんはアルツハイマーの症状が出始め、家で一日中チワワの姿を探し求めていたそうだ。

 それを不憫に思ったご主人は、都内のあらゆるペットショップに電話をかけて「以前飼っていたチワワと同じ「黒と白の混じったチワワ」を探したという。


 そして今月の8日の日、六本木のワンニャン王国にいた黒白チワワを見つけ、急いで六本木まで行って買い求めたそうだ。

 奥さんは大喜びで「どこに隠れてたの、くーちゃん?」と、前に飼っていたチワワと同じ名前で読んで抱きしめたそうだ。ご主人はそんな奥さんの様子を見て、本当に良かったと喜んだという。


 そんな話を聞いて、いつのまにかママの青葉さんも泣いている。

「いいんですよ、ウチのモフちゃんは丈夫だから、あれくらい」なんて言っているけど、今でも突進された脇腹が痛いんですけど?


 まあ、この話で納得した。1月8日にこの辺りに来たばかりで、家の中で飼われている犬なら、この辺りの犬が「くーちゃん」という名前を知らなくても無理はない。この日初めてこの河川敷に連れてきたそうだし。


 それはそうと、あの黒白の震えているチワワが「くーちゃん」なら、仲間にしなくてはならない。今のところ俺が彼に向ける感情は一言「最悪」だが、そうも言っていられないだろう。


 俺はちょこちょこと海老名のおばあさんが抱いている黒白チワワに近づき、話しかけてみた。


「よお! 覚えているか? 六本木のペットショップで一緒だったポメラニアンのモフだ。よろしくな」

「……」


 ジロリ、とチワワのくーちゃんは震えながらこちらを睨む。体長は俺よりも小さいし、睨まれても正直、まったく怖く感じない。

 だがこんな小さい体なのに、俺を2メートルもぶっとばすほどのパワーを持っているのだ。いったいどうなっているんだ、この世界の動物たちは?


「実は相談があるんだ、ちょっと唐突な話なんだけど、強い敵がいてね。君にも仲間になって欲しいんだ」

「……」


 何も言わず、チワワはこちらの睨んだまま。おい、聞いてんのかよ?


「詳しく話をしたいんだけど、今度キミん家に遊びにいってもいいかな? いいとも! なんつって」

「お前のものは、俺のもの。俺のものも、俺のもの」


 話が通じていない。それどこか、コイツがこれ以外のセリフを言っているのを見たことがないぞ。幼犬だからか?


 と、次の瞬間。おばあさんの手をすり抜けて地面に落ちたチワワは、再びダッシュで俺に向かってきた。

 ヤバい! そう思って体を(かわ)そうとしたが、ヤツは素早かった。

 今度はチワワの頭突きが俺の胸にぶち当たり、俺はポーンときれいな放物線を描き、再び草むらに放り出された。


 助走が少なかったのにもかかわらず、すごいパワーだ。味方としては申し分のない実力だな。もし味方になってくれるのなら、だけど。


「あらあら、くーちゃん、ケンカしちゃダメよ〜」


 なんておばあさんはのんびりとした口調でチワワに話しかけているけど、ケンカではないんですけど? 一方的に暴力振るわれているだけなんですけど?

 肝心のパパさんやママさんは、海老名のご主人と話に夢中でこっちに気づいてないし、子供たちもどこかに行ってしまった。


 チワワはまるで闘牛士と向き合っている暴れ牛のように、前足で地面を引っ掻いている。もう一度俺に突進してきそうな雰囲気だが、冗談じゃない。次に激突されたら、もう俺の身が保たない。ぶつかってくる場所によっては骨折、いやそれ以上になってしまうかも。


 立ち上がって逃げようにも、脇腹と胸、背中がズキズキし、ゆっくりとしか動けない。これは、マズい。

 だがそんな俺の前に、1匹の大きな犬がヌッと現れた。


「モフくん、僕が彼の相手をしよう」


 現れたのは、先ほど話をした愛想の良いゴールデンレトリバーのタロウさんだった。体長は50センチほど、体重は30キロを降るまい。

 対して相手の犬は体長30センチ未満、体重は1キロ程度の震えるチワワ。負けることがあろうはずもない。


 なのに、チワワの闘志は一向に衰えた様子を見せない。再び前足で地面を2回ひっかくと、唸り声を上げながら自分とレトリバーの間にある3メートルほどの距離を走って詰めていった。


「来い、多摩川17地区の礼儀を教えてやる!」


 タロウさん、勇ましてくてカッコイイ! 惚れちゃいそう!

 レトリバーの太郎さんはガッシリと前足を踏ん張り、横綱相撲の構えを見せた。


 だが次の瞬間、目の前に繰り広げられた光景は、俺が全く予想もしない事態だった。


 綺麗な放物線を描き、大型犬のゴールデンレトリバーがポーンと宙に舞ったのだ。

 そんな、バカな!?

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