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転生最弱ポメラニアン、魔王を倒す  作者: キサラギトシ
第二章 ポメラニアン暮らしと魔王の影
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27 外来種の襲来

 この地(東京都世田谷区)に現れた魔王の眷属は、アライグマ。あまりの意外な答えに面くらった俺だが、先に解説だけしておこう。


 説明しよう。

 アライグマとは北米原産のアライグマ科アライグマ属に分類される哺乳類だが、1970年代頃から日本でも野生化し、東京でもその姿が見られることが多数あった動物である。

 俺も実際に飼い犬の散歩中、夜にアライグマの一家を水路で見かけたことがあり、写真を撮ったこともあるのである。


「アライグマ、ですか。それは何匹ぐらいで、どこに現れたのですか?」

「そのことは、私の方が詳しいから説明しよう」


 トラ柄の大猫の女帝、チャトランが話を引き継いだ。


「2日前の夜のことじゃ。我ら猫軍団はいつも通り、日が沈んだのちに児童公園で集会を行っておった」


 あー、あるある。夜に数匹の猫が公園で固まって何かを話し合っているシーン、俺も何度か見かけたことあるよ。まるで集会してるみたいだと思ってたけど、本当に集会だったんだね。


「夜も更けてきて、部下たちの定例報告を受けた私は、部下の一人が持ってきた餌をゆっくりと賞味しておった。だがその時、公園の出口2ヶ所から、10匹ぐらいの動物が迫ってきたのじゃ」


 一瞬、大きめの猫かと思ったというその姿は、近づくにつれて違和感を増していったという。尻尾に縞模様があり、鋭い牙を持つその動物は、すべて目が金色に光っていたそうだ。


「私はこの地でタヌキやハクビシンなどは何度も交流をしておる。だがアイツらは見たことがなかった。後日、猫たちの長老から『アライグマ』だと聞いたのだが、その時の私は、私に謁見にでも来たタヌキたちだろうと高をくくっておったのじゃ」


「そいつらが、襲いかかってでも来たんですか?」


「突然のことじゃった。奴らは問答無用で猫たちに襲いかかってきた。最近はナワバリ争いも少なく、戦闘経験が少ない若い猫ばかりの集会だったのが災いした。あっという間に奴らにすべての猫たちが傷を負わされたのじゃ」


 チャトランは振り向くと、右後ろの付け根にある大きな傷跡を見せてくれた。二日前のことなので傷は塞がっていたが、まだ痛々しさがわかるほどの大きな傷だった。


「私もこのザマじゃ。武闘派を気取っておったのだが、3匹同時にかかってこられては為す術もなかった。情けないもんじゃ」


 悔しそうにチャトランは再びこちらを向いて話を続ける。


「だがその時、猫たちの叫び声を聞いた近所の人間が公園に入ってきたのじゃ。人間の姿を見たアライグマたちは私らにトドメを刺すことなく、逃げて行ったんじゃ」


 金色の目をしたアライグマの襲来。チャトランはすぐにこのあたりの(ぬし)であるウシガエルのウシダ師匠に報告したという。

 するとウシダ師匠は、すぐに多摩川の反対側、川崎市に住むという川崎の(ぬし)と相談すると言い、翌日の朝、出かけて行ったのだという。


「その時、高い知能を持つ白いポメラニアンの話、つまりお前のことを師匠から聞いたのじゃ」

「なるほど。で、師匠はいつお帰りになられるのですか?」

「わからぬ。他の地域に住む(ぬし)がどこに住んでおるかは(ぬし)同士しか知らないのじゃ」


 ふむ。ウシダ師匠が戻らないと、それ以上の情報は得られないということか。


「チャトランよ」

 話が途切れた時、賢者ソースが大猫に再び話しかけた。


「まずはウシダの戻りを待とう。川崎の(ぬし)なら何か情報を知っている可能性は高い。あそこには数多くの『外来種』が住んでおるからな」

「かしこまりました、賢者ソース様。お主も異論なかろうな、モフよ」


 俺は頷く。そして俺たちは互いに住んでいる場所の詳細を教え合った。

 俺はもちろん日中は佐藤家の飼い犬として暮らさなくてはならないが、チャトランは近所の工場で他の猫たち数匹と暮らしていて、いつでも出入り自由だと言った。


 そして賢者ソースだが、フレンチブルの子犬という姿が目立ちすぎるため、とりあえずは都合の良い場所を他の野良犬と共に探すことになった。


「何かあれば部下のものが連絡をする」

「ありがとう、チャトラン。賢者ソース様も、また」

「うむ」


 こうして、夜の大集会は終わりを告げた。


 年号が変わるタイミングで復活するという魔王、その眷属だというアライグマたち。対するは多摩川の主ウシダ師匠とその右腕の大猫チャトラン、そしてフレンチブルに転生した賢者ソース。


 佐藤家で大人しくポメラニアンライフを満喫しようと思っていた俺だが、どうやらそう簡単にはいかないらしい。


 だが翌日の大晦日には誰からも連絡は来なかった。

 佐藤家のリビングでは紅白歌合戦が始まった。トップバッターは、赤組が中山美穂、白組が光GENJIと、これまた懐かしいラインナップだ。

 こうして、俺の二度目の昭和63年は終わりを告げた。

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