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転生最弱ポメラニアン、魔王を倒す  作者: キサラギトシ
第二章 ポメラニアン暮らしと魔王の影
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21 予想外の住所

 家族の会話を聞いたり、家族の心を読んだり。

 俺は子犬のあざとさ満開の仕草をしながらも、心の中では必死に情報収集を行なっていた。いや必死になる必要は何もないのだが、なんとなくだ。


 ママさんの名前は「青葉さん」。パパさんよりも2つ上の姉さん女房で、仕事先で出会って14年前に結婚。一姫二太郎と子どもを作った専業主婦らしい。そしてこのアパートは賃貸で、越してきて半年ほどらしい。


 お姉ちゃんの名前は「友梨奈ちゃん」。地元の公立中に通う中1で、明るいけど実はオタク気質だ。テレビではひたすらアニメを見ている。昨日はひたすら「シティーハンター2」のアニメを見ながら何やら喚いていた。


 おかっぱの長男くんは「風太くん」。小学1年生でお姉ちゃんとは結構年齢が離れているので甘やかされて育っているが、実はそんなに乱暴でもなくいい子っぽい。


 パパさんは誰も名前で呼ばないので、いまだに名前はわからない。まあしばらくはパパさん、でいいか。


 それにしても一つだけ不思議なことがある。ママさん。友梨奈ちゃん、風太くんの心は読めるのに、なぜかパパさんの心が読むことができないのだ。

 必死に眼力を込めてパパさんの心を読もうとしても、なぜか「無音」なのだ。

 俺の能力、もしかして万能じゃないのかも。全ての人の心が読めるわけじゃなさそうだ。一家の家長の心が読めないのは若干不安ではあるが、そもそも俺を気に入って買ってきてくれたのはパパさんだし、まあ問題はなかろう。


「モフ、散歩行くよ!」

「私も行く!」


 風太くんと友梨奈ちゃんが散歩を志願した。こっちも情報収集のために外に出たい。もしかしたら電柱に住所とか貼ってあるかもしれないしな。


 パパさんが選んでくれた首輪は青色。リード紐も青だった。首輪をつけてもらうと、改めて俺って犬なんだと複雑な気分になる。うーん。ま、あまり気にしないようにしよう。首輪がないとこの時代、野良犬と間違えられる可能性もあるからな。

 これからよろしくな、青の首輪くん。


 姉弟と外に出た。家は予想通りメゾネットタイプのアパートなのだが、俺は家のドアにある仕掛けがあることに気づいた。それは「猫ドア」だ。


 説明しよう。

 猫ドアとはドアや窓の一部にあって、外と室内を出入りできる出入り口のことである。これがあれば昼でも夜でも猫は出入り自由という、飼い猫にあるまじき自由を与えられた幸せな猫を飼っている家なのである。


 もしかして、この家には猫もいるのか? よし、友梨奈&風太兄弟の心を探ってみよう。


 ――さんぽ、さんぽ。モフと散歩。どこ行こっかな?――


 風太くんの心の中はウッキウキの散歩モードだった。まあ小学1年生なんてこんなもんだよね。じゃ、次はお姉ちゃんだ。


 ――散歩、散歩。初めてのペット、モフと散歩。どこ行こっかな?――


 中学1年の友梨奈ちゃんの心も似たようなものだった。が、目的は達成だ。初めてのペットということは「猫はいない」ということだ。ならさっきの猫ドアは、以前の住人がつけていたか、大谷さんが猫好きで全部の家についているか、どちらかだろう。

 ちょっとだけ「しめしめ」感がある。夜なら、俺も出歩けるかもな。


 家の玄関の前は、お隣さんの家の敷地なのか大きな竹林がある。竹林に沿って歩道があり、建物をぐるりと回り込むと道路がある。

 道路は広くないが、車1台は余裕で2台でもなんとかすれ違えそうだ。


 アパートの敷地を出ると、周りは畑が広がっていた。畑……ということは、やはり都会のど真ん中ではない。俺は姉弟の前を歩きながら、電柱に注目する。いやオシッコをしたいとかそういうことではなく、住所が書いているか確認するためだ。


 畑をひと区画分歩くと交差点になっており、そこに電柱が立っていた。予想通り、住所が記してある。そこにあった地名は。


「世田谷区宇奈根(うなね)


 ドキン。俺の心臓が急に跳ね上がった。その地名は生前の俺、つまり人間時代の俺が住んでいて、家を建てた場所と同じだったのだ。


 俺は慌てて周囲を見渡す。俺が住んでいた令和時代は、家の周囲に畑などほんの一部しか残っていなかったが、この昭和63年12月は建物よりもむしろ畑の方が多い。人間時代に10年以上住んでいた場所なのに、ここが一見どのあたりなのか見当もつかないほどだ。


 歩きながら、何か目印になるものがないか探す。が、元々宇奈根(うなね)は陸の孤島と呼ばれるような場所だ。何しろ東京都23区なのに、この地名の場所に信号機が1箇所しか存在しないような場所なのだ。

 最寄りの駅からは歩いて30分以上かかり、通勤通学する人はバスか自転車を使うしかないという不便さだ。

 まあ、そんな不便な場所だからこそ貧乏サラリーマンの俺でも家を買うことができたとも言える。


 俺が住んでいた場所に再び住むことになるとは、これは偶然なのだろうか。いや、そんな偶然あるはずがない。これは、何かの意思がきっと働いているに違いない。それが何なのか、今は調べる術もないのだが。


 そんなことを考えているうちに、姉弟と俺は多摩川の土手に到着した。そこで俺は再び驚いた。


 そこは人間だった時の俺が、飼っていた犬のモップと命を落とした場所だった。

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