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転生最弱ポメラニアン、魔王を倒す  作者: キサラギトシ
第一章 転生ポメラニアン誕生
17/144

17 初戦

 ミニチュアシュナウザーは見た目によらず俊敏だった。

 子犬とは思えないスピードでジグザグに走り、飛び跳ねて俺の首めがけて噛みついてくる。

 一方の俺は、人生いや犬生で初めてのケンカ、いや戦いだ。

 噛みついてくるシュナウザーをボクシングのスウェイの要領で躱そうとしたが、心とは裏腹にぜんっぜん体が動かない。なんとまだ体が硬直していたのだ。


 ガブリ。そのまま俺は意識を失った……と一瞬思ったが、シュナウザーの口は俺の首筋の毛を数十本噛みちぎっただけだった。

 俺の毛を噛みちぎった勢いのまま、俺の後方に過ぎていくシュナウザー。

 ヤバかった。見えていたのに体が動かないとか、ほんとどうしようもない。


「フフフ、私としたことが。こちらもまだ子犬だということですね」


 振り向いてシュナウザーに向き合いながら考える。

「こちらもまだ子犬」と奴は言った。つまり『魔王の使徒』を名乗るコイツも、元はやはり人間なのではないだろうか。

 いや、そもそも『魔王』って何なのだろう。人間なのか、それともファンタジー世界の中にいる、魔法を使える恐怖の存在なのか。だとしたら『魔王の使徒』も悪魔の一人だとか……

 と、気づいた時にはシュナウザーの歯が目前にあった。


「キャン!」


 鋭い牙が左目の目前を通り過ぎ、左耳を掠った。思わず声が出てしまったが、今度もダメージはない。


「考えている暇はありませんよ! 必ずしも殺そうというわけではありませんから。ま、死んでもらってもこちらは構いませんが、ね」


 死んで、だと? まったくそんなことは考えていなかった。

 相手が子犬だからか、そんな血生臭い現実的なことは考えていなかったが、相手は自称『魔王の使徒』。殺されてもおかしくはないのか?


「うるせえ! お前、何のために俺をペットショップに戻そうとする?」


 俺の言葉を聞くと、一瞬シュナウザーが動きをピタリと止めた。

 その後、彼は体を震わせると、大声で笑い出した。


「ハッハッハッ! こりゃ愉快だ。お前、俺がなんのためにペットショップに戻そうとするか、知らないのか」

「なんだそりゃ? 知るわけないだろうが!」


 シュナウザーはさもご機嫌だというように尻尾を盛んに振っている。だがやがて尻尾の振りは小さくなり、ピタリと動きを止めた。


「お前には魔王様の威光が通じないとみえる。お前は危険だ、ポメ。やはりここで死んでもらうしかない」


 そう言うとシュナウザーは体を低く構え、唸り声を上げた。力を最大限に溜め、一気に飛びかかってきそうな体制だ。

 なんかよく知らんが、このままだとかなりヤバいのがわかる。心では警戒心マックスなのだが、相変わらずポメラニアンの体は震えが止まらない。

 おい、なんだよ俺の体。ちょっとビビり過ぎじゃないのか?


 それは一瞬の出来事だった。

 シュナウザーが体を起こし俺に目掛け飛びかかってきた。俺はまるでスローモーションのようにその姿を見ていたが、体が言うことを聞かない。

 ガブリ。シュナウザーの鋭い牙が俺の右足に食い込んだ。


「キャウウウン!!」


 激痛が右足から全身に広がり、俺は今まであげたことのない悲鳴をあげた。

 その声を聞き、近くにいたプーが驚いて目を覚ますのが見えた。


「なにっ? えっ!」


 寝ぼけているのか一瞬辺りを見回したプーの目が、俺と俺に噛みついているシュナウザーに向けられた。


「ポメっ!」

「プー!逃げろっ!」


 プーは一瞬躊躇ったように見えたが、すぐに素早く逃げて行った。

 あれ、こういう時ってもう少し話してから逃げるもんじゃないの……?

 いやいや、俺が逃げろって言ったんだ。無事逃げおおせてくれ。

 と、次の瞬間、俺の右足の激痛が少し和らいだ。と同時に、シュナウザーが今度はプーを追って走って行った。

 ヤバい、プーが捕まってしまう。追いかけなきゃ、と思い俺も急ぎ走り出したが、右足に激痛が走り、すぐに転げ回ってしあった。


「キャウン!」


 いたたたた。これ、走れないわ……どうしよう。

 その時、俺の頭に何かが浮かんできた。


 ――あれ? なんかネズミが走り回る音が聞こえるな?――


 これは……人間の感情だ。ということは、近くに人間がいるはずだ。

 状況は見えないが、とりあえずプーがシュナウザーに捕まるのを阻止することが、いま一番やらなければならないことだろう。

 だとすれば。俺は力の限り吠えてみた。


「ワオーン、ワンワン!ワオーン!」


 ――なんだ、犬の鳴き声か?――

 ――あれ、野良犬が紛れ込んだのかな?――

 ――勘弁してくれよ、フンとかしてないだろうな――


 周りから何人かの感情が聞こえる。

 どうやら俺の声を聞いて、警備員が集まってきたらしい。

 俺は噛まれた右足を引きずりながら、プーとシュナウザーを探して動きだした。

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