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転生最弱ポメラニアン、魔王を倒す  作者: キサラギトシ
第七章 ポメラニアンの苦悩
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132 四天王と戦士の激突

 俺と豆之助の付き合いは、実は短い。ペットショップ時代はわずか1日程度、話したといっても当時の豆之助は子犬で単なるアホ犬だった。

 その後、駒沢公園で再会し(実はその時は俺を倒せとカールに言われてやってきたと後日教えてくれた)、横浜の山下公園で豆之助自ら魔王軍を裏切り、俺たちの仲間となった。


 そしてヨコハマ決死隊として魔王軍横浜支部に突入するまでのたった数日間、それが俺と豆之助の仲間としての期間だった。

 つまり、豆之助が本当は何を考えているのかを聞く時間はなく、彼がどんな技を使うのかもほとんど知らない。

 その俺の知らない、驚くべき技が飛び出したのだった。


 俺の視界から消えた豆之助が現れたのは、くーちゃんの背後だ。対峙していた相手を俺同様に見失っていたくーちゃんはキョロキョロ辺りを見渡していたが、その左後足の付け根に、豆之助は思いっきりガブリと噛みついた。


「!!??」

「キャン!」


 だが、悲鳴を上げたのはくーちゃんではなく、噛みついた豆之助だった。


「……お前、何なんだよ、その硬さは」


 ゆっくりと振り向いたくーちゃんは、豆之助を見て言った。


「おれ からだ じょうぶ」

「バカか! 俺が噛みきれないなんて、ありえないんだよ!」


 くーちゃんは一度俺を見て、ニッコリと笑って尻尾を振った。

 そういえば俺、くーちゃんのこともよく知らない。ものすごいパワーを持っているのは、これまでの戦いで何度も見た。だけどまさか、相手に噛まれても平気なほど体が硬いなんて知らなかった。さすが『戦士』と呼ばれるだけあるってか? 体が鎧みたいに硬いということなのだろうか。


「お前、ムカつくんだよ。子犬の時から僕のおもちゃを取り上げて、放り投げたりしてたよな」

「うん? ちがう あそんでただけ」

「うるせぇ、お前は遊んでるつもりでも、俺は嫌だったんだよ! お前と一緒に戦うのは真平だから、魔王軍に戻ったんだよ!」


 ……なんだか、豆之助の行動原理が子供っぽすぎてびっくりだ。いじめられてたのが嫌だったのはわかるけど、それだけ? 魔王軍を一度辞めた時だって「命令されるのが面倒」って言ってたよな。で、いじめっ子のくーちゃんが一緒だから嫌だっていうのか?


 そこまで考えたところで、いつのまにか俺は10匹程度の犬猫に取り囲まれていた。しまった、あまりにもあっちの戦いに気を取られすぎたようだ。慌てて戦闘体勢を取るやいなや、俺を取り囲んだ魔王軍たちとの激闘が始まった。


 どこから現れたのかわからないが、この動物たち、けっこう動きが速く、連携も取れている。大猫が爪を立てて顔を狙ってくるタイミングと微妙にずらし、大型犬が後ろから足を狙ってくる。爪を間一髪かわすと同時に前に出て、足を噛まれるのを阻止する。

 すると目の前から他の大型犬2匹が同時に襲ってくる、という感じ。

 なかなか合気道でいなすこともできないし、サモエドのパワーも活かしきれない。


(これは一気に数匹倒さないと、マズイかもな……)


 と俺は作戦を考えながら、魔王軍の攻撃を避け続けていた。

 その時、遠目でちらりと見た豆之助が、再び姿を消した。


 今度こそ、微かにだがその動きが見えた。豆之助は左右ジグザグにステップを踏み、くーちゃんの直前で高く跳躍、前回転して後ろに回り込む。


 くーちゃんは再び豆之助の動きを見失っていた。

 後ろを取った豆之助は、着地すると同時に大きく息を吸った。あのモーションは、ヤバい。


「くーちゃん、避けろ!」


 俺が叫ぶと同時に、俺の両後ろ足に激痛が走る。


「ぐっ!?」


 気を取られている間に、大型犬が2匹同時に俺の後ろ足にかぶり付いていた。

 その時、俺の声に慌てて振り返ったくーちゃんに向け、豆之助の絶叫が(ほとばし)った。


「ウォーーーーーン!」


 以前聞いた時よりもパワーアップしている絶叫、それを目前で食らったくーちゃんは、まるで感電したかのように体を一瞬震わせると、クタクタと倒れ込んだ。


 俺は2匹の犬に噛まれたまま、慌てて両前足で耳を閉じたおかげで、耳がキーンとする程度でなんとかなった。

 そしてラッキーなことに、俺の両足を噛んでいた犬たちは豆之助の絶叫で耳をやられ、俺の足から牙を放し、その場で苦しんでいる。


 見ると、俺を取り囲んでいた魔王軍は全匹、その場にうずくまって耳を押さえ、あるものはジタバタと苦しみ、あるものはピクピクと失神していた。

 豆之助の絶叫はくーちゃんを倒したが、犠牲も大きかったのだ。


 まだキーンと遠鳴りするが、俺は両足をチェックする。痛みはするが、血も流れてないし、まだ全然走れそうだ。


「ざまあみろ、なんだよ。お前のこと、この場で息を止めるんだよ」


 地面にぐったりと横たわるくーちゃんに、豆之助が話しているのが微かに聞こえる。


「やめろ、豆之助!」


 俺はダッシュをして2匹の元へ向かうが、少し遅かった。


「腹を食い破ってやるんだよ!」


 豆之助は唸り声を上げ、くーちゃんの腹にかぶり付いた。

 まずい、いくら体が丈夫とはいえ、犬のお腹部分は一番柔らかいはずだ。魔王に強化されているだろう豆之助の攻撃に、耐えられるはずがない。


 だが、そのとき。

 くーちゃんに噛みついた豆之助の上に銀色の動物が降ってきた。

 その動物は豆之助の耳を思いっきり引っ掻いた。

「ギャン!」と悲鳴を上げた豆之助の牙がくーちゃんから離れる。


「間に合ったニャ! サバトラ参上の巻、なんだニャー!」


 ロイエンさんを探していたはずのサバトラだ。


「これで僕とモフ、2対1だニャ。形勢逆転だニャ!」


 悔しそうに唸る豆之助に、まるでもう勝利したかのように勝ち誇るサバトラがなんだか頼もしい。


「よしサバトラ、アイツを倒そう!」


 皇居で進化した巨大モグラの女王と戦った時以来のコンビ復活だ。

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