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カマキリを探そう

 レヴィは中庭に来るとベンチの上に昆虫図鑑をおいてカマキリのページを広げた。真剣に見つめた後、整備された庭園に膝をつけて垣根を覗き始める。


「レ、レヴィ様、どうされましたか?」

慌てたのは護衛だ。


「今からカマキリを探します。」

レヴィは短く返事をすると、服が汚れるのも気にせず這いつくばってカマキリを探す。


 護衛たちが図鑑に目を落とすと、そこにはターオに生息するカマキリの一種が紹介されていた。白色の地に黒の斑紋を持つ種類だ。胸部背面に丸い黒紋が一対だけあり、それ以外の部分はほぼほぼ白地だ。触覚や脚は黒い。


 レヴィは庭園の垣根を覗きながらちょっとずつ移動していく。中庭は関係者以外立ち入り禁止なので一般の信者はいないが、普通に散策している神殿関係者や、近道として通り抜けていく者の往来はある。通りすがりの人が不審な目を向けていくが、護衛の2人が首を振るので皆そそくさと立ち去っていく。


「うわー、レヴィ何してんの?」


 そこに偶然ナバイアが通りかかる。手にはお菓子の袋があり、市中に買い物に出かけて戻ってきた所で、見慣れた護衛と神官見習い風の人物の体格ですぐにレヴィ一行だと気づいた。


「もしかして精霊取り?」


 ナバイアはレヴィに声をかけながらも護衛2人にそれぞれ片手を鎖骨に当ててトントンと2回叩く動作を見せる。神殿関係者の略式の挨拶だ。護衛も利き手ではない方で挨拶を返す。


「違う。今はカマキリ探してる。」

「カマキリ?」

「それ。」

「それってどれ?」

顔を上げようともしないレヴィに変わって護衛が図鑑を指さす。


「うわー、何これ、人面カマキリじゃん。きっしょ。」

「お化けにそっくり。」

「あー、確かにあの伝統舞踊の仮面に似てる。レヴィが見たお化けってマジでこんなんなんだ。怖っ。」


レヴィがスッと顔を上げた。そして這いつくばった姿勢のまま、うわーっとナバイアに近寄ってくるとズボンにしがみつく。

「わっ、ちょっと。」

「そう!すっごい怖いのに皆分かってくれない!精霊だからお化けじゃないとか言ってきて、どうみてもお化けなのに。お化けなのにぃ。お化けに会いに行けって・・、みんなあんまりだと思う!」


―いやいや、精霊だから。


その場にいた護衛2人は心の中だけでツっこんだが、正直者のナバイアは「逆になんで精霊って認めないんだよ。」と言いながらレヴィの勢いを受け止めきれず尻餅をついた。お菓子の袋だけはなんとか死守している。


「あ~、まぁ怖いうえにキモいのは分かった。」

「ナバイア魔法でカマキリ探せる?」

「そんな便利な魔法ないって。それより何でカマキリの話にいきなり飛ぶわけ?」

「だって、カマキリなら怖くないじゃん。」

ようやく体を起こしたレヴィが宝石のような瞳をキラキラさせた。


「・・うわっ!危うく一瞬納得させられそうになった。あぶなっ。」

至近距離で宝石眼の威力(ただのキラキラ)を食らったナバイアが胸に手を当ててスーハースーハーわざとらしく息を整える。


「俺、ミミズ姿のウンディーネさまは怖くないから、たぶんカマキリのお化けなら怖くないと思う。だからお化けにこのカマキリ姿をお勧めする予定。」

レヴィがドヤ顔で宣言する。


「あー、そういうこと。」

「そう、だからナバイア手伝って。」


ということで、ナバイアはたまたま通りかかってしまったがために、せっかくの休息日をカマキリ探しに費やすことになった。


「世界の精霊って、レヴィのせいでどんどん昆虫化していったりしないよな・・。」

カマキリを探しながら不安そうにつぶやくナバイアであった。

ラミーカミキリをカマキリっぽくしたイメージです

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