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小精霊召喚?

 この世の美の頂点に君臨するといっても過言ではないウェイロンが颯爽と馬車を降り、下級小間使い然としたレヴィが続き、軍人特有の抜け目ない足運びで周囲を警戒しながらイーサンとエイダンも進む。すでに一般人は排除されているため、護衛は周囲を固めるだけで4人には近づかない。精霊召喚は神聖な儀式なのだ。同行できるだけでも僥倖とされる。


 オルランの丘には古くから大きな枝を広げる古木が何本か生えており、その中でもひときわ大きいものがオルランの大木と呼ばれ人々に親しまれてきた。精霊の宿る木として数多くの伝説が残されており、月夜にプロポーズすると幸せになれるとも言い伝えられている。


 レヴィはオルランの大木の真下まで来るとローブのフードを落とした。首の後ろに両手の指をそえると髪をローブの下から取り出して流す。動きに合わせて艶が髪の上を滑り、離れた場所で控える神官たちから見ても美しい動作だった。

 ウェイロンが少し斜め後ろにたち、イーサンとエイダンは左右に分かれ片膝を落として控える。


 全員の見線が集まる中、レヴィはコソコソと大木に近づくとコンコンと幹を叩いた。

「えーっと・・ごめんください。」

よそ様の御宅を訪問する時はノックして声をかける。祖母の教えに忠実なレヴィである。小さな声でも精霊たちには問題ない。

「こんにちは。」

レヴィが再度声をかけて両手を幹にそえた瞬間、周囲の気配がぞわりと動く。

「・・ぐっ」

思わずといった感じでエイダンが声を漏らす。イーサンは声こそ上げなかったものの少し不快そうに目を細める。ウェイロンは眉ひとつ動かさない。


 大木から無数の光の玉がぶわっと浮き上がる。掌に納まる程度の青い光ひとつひとつが小精霊である。

息をのむ者、歓声をあげる者、周囲の反応を伺う者、後方からそれぞれの反応が上がるなか、無数の光の玉はレヴィの周りに集まってふよふよと浮遊する。

 

「・・人界の輝く宝石、花冠の麗人ことレヴィです・・。今日は会いに来てくれてありがとうございまーす、、。」

レヴィは死んだ魚の目をしながらウェイロンに決められたキャッチフレーズを口にした。両手を振ると光の玉がぶわわっと揺れて精霊へのウケがいいのがツライ。

「ジャムイル村からやってきましたぁ。好きな食べ物はミートパイ、特技は花輪やポプリ作りです。あとミミズのウンディーネさまと仲良しです、、えーと、何だっけ、あっ、目の色が珍しいって言われてます。」


 ちらっとウェイロンを見るとうんうんと頷いているので、ここまでOKだったようだ。そして胸元を指さす合図をくれる。ローブの胸元のポケットを漁る。


「(ゴソゴソ)・・皆に見せたいものがあります。俺が手作りしたポプリ・・。」

ポプリを出すと光がぶわわっと蠢いた。その勢いに若干腰がひけつつ、レヴィはなるべく笑顔を浮かべる。少し離れた位置からウェイロンがスマイルスマイルと人差し指を口角にあてて合図してくるのだ。


「このポプリ、今日のために作ってきました・・。この木に置いていくので、時々見に来て下さい。いい匂いがしまぁす・・。」

レヴィがポプリをウェイロンに渡す。一部の青い光がつられるようにポプリについていく。そしてウェイロンが軽々と木に登り、一般の人では辿りつけそうにないところまで上がると、魔法でポプリを括りつけた。雨除けの付与ももちろんついている。

ポプリの位置を確認すると光は再びレヴィの周りに集まってくる。

「えーっと、気に入ってくれましたかー?」

 光がざわざわとレヴィの周りを動く。


「ありがとう。俺はいま各地をまわってます。だから、なかなかここには来れないけど、これからも応援してくれますか・・?」

 答えるように小精霊たちの光がより強くなる。

「俺に会いたくなったら、ポプリのところにきて俺の気配を感じとってください。そしたらみんなの応援俺にも届くから・・!!」

 死んだ魚の目のままやけくそ気味に言うと、精霊が応援するかのようにぐるんぐるん揺れた。実はまったく何も感じとれないレヴィなのだったが、そう言っておくと精霊が思い立った時にポツポツと現れるので毎回言わされている。


「ありがとう、皆の応援待ってまぁす・・。だ、だぁいすきだヨ・・。」

 光の玉が撃ち抜かれたかのようにうっと後ろに揺れる。個の意識は弱いはずなのだが、同じような態度を取るのが面白くて「すごい!」とはしゃいで手を叩くと浮かんでいた光の玉がすべて地に落ちた。


 光る絨毯のようになった精霊を見てキョトンとしたレヴィだが、撤収のチャンスだとすぐに切り替え、手を振って別れをつげるとそそくさと退散した。レヴィがその場所を離れると光は地に沈んで消えた。時間にして10分もかからないあっという間の出来事だった。

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