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第一話 少女ノ世界
「コレが上手くいけば、合うのは二年ぶりだな、霧江…」
暗い実験室で、白衣の少女は呟く。髪は黒のストレート、前髪が長く表情が読めないが、整った顔立ちをしていることは暗くても分かる。
少女は小柄で、彼女の前方には無数のレバーやダイヤル、モニターが、巨大な真空管を中心に貼り付けられた、全体的にダークな色の、ジャンクの塊のような装置がある。ダイヤルは既に彼女の思う座標に合わせられ、真空管内部には緑の粒子が充填している。あとはレバーを引くだけだ。
彼女、私立帝陵高校二年生兼天才美少女科学者、烏丸慶(16,♀)は、装置《空間チューナー》の、茶色の柄が付いた一番中央の大きなレバーに両手を掛け、思い切り引き降ろした。充填した粒子が、真空管の天辺の穴から少しずつ漏れだし、部屋の天井に溜まって、台風のような渦を描き始める。
「つ……な………が………れぇ……………!!!!」
少女は召喚する。もう《彼女ノセカイ》には居ない、彼女のそれまでの人生でたった一人の《親友》である《彼》を………………!!!!!