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第9話 爺さん勉強する。


「クロスさん、そうじゃない!レムラリア大陸は時計回りでダダダ神国、ザザザ王国、ガガガ帝国です。」

爺さんは座学は苦手です。

孤児院の空いている教室みたいな部屋をかりて、朝からルーシーに怒られています。


直属の部下になったルーシーから、この国ガガガ帝国について教育を受けてます。

ルーシーが龍化できるドラゴニュートと言うのは、孤児院の中でも一部の人員しか知らない、トップシークレット。

ついでに、俺が異世界からレオに召喚されたのも秘密だが、爺さんの出自なんぞ誰も興味がないので、一応シークレットなのだが、正直、価値のない情報なんで余り言うなという扱いらしい。


ルーシーには俺はど田舎の貴族に小さな頃から仕えていたので、基礎的な知識が乏しい可哀想なお爺さんと言う設定で、この世界の事を教えて貰っている。


「うーん、クロスさんは計算はずば抜けて出来るのに、一般的な地理とか歴史については、なーんにも知らないんですねー。」

ルーシーは呆れている。

ちょっと前にこの世界に連れてこられたのだからしょーがないじゃーん!といい訳できないのが辛い。


しかし、このガガガ帝国。

今の形になんとか落ち着いたのが50年ほど前、その前は小さな国が戦争を繰り返し、国としてはかなり疲弊していたらしい。

初代皇帝のナンタラってのがこの国を平定したらしいが、絶対レオ達が関わっているな。多分裏から支援したのだろう。


最近はこのナンタラって皇帝が健康を害しの帝位継承問題で、ガタガタしているらしい。


「クロスさん!ナンタラじゃありません!ガガセオス1世様です。帝都でそんな事言ったら不敬罪で鞭打ちですよ。」

また、怒られてしまう。


「でも、ルーシー、最近はまた亜人に対する差別が復活してるみたいじゃないか。」

先日、この世界から消滅させたイシーヌ商会は亜人を奴隷として違法に売買していた。

この国は亜人に対する差別を禁止しているのだが、最近「人間こそ神が唯一この世界を統べる為に使わした種族」などと言う考えが貴族を中心に蔓延しているらしい。


「皇帝様がお元気な頃は、亜人差別を厳しく取り締まっていたのですが、体調をお崩しになってからは、統治は各領主に任せる事が多くなり、結果として亜人の割合が多い大陸北部は差別はなく、人族の割合か多い南部では差別は酷くて、収容所みたいなところに集められてる地域もあるみたいです。」


ある種の人間は同等かそれ以上の存在を自分の下と見ることで、優越感を感じるが。

大体は逆が真実で下と思っている存在の方が遥かに尊い存在だったりするものだ。


「ルーシー、南部の事までヤケに詳しく知ってるね。」

「あ、これはあの、その、レオ様がたまに教えてくれるので…。」

嘘がヘタ過ぎるが、多分、影の軍団はかなり広い範囲で諜報活動をしてるのだろう。

すげーな影の軍団。


そんな穏やかな時間が長く続く訳もなく、部屋に軍団長、じゃなくてメイド長ボボネが入ってきた。


「クロスさん、ルーシー。レオ様がお呼びです。」

「ハイっ!」

ルーシーが直立不動で返事をすり。


「ではすぐに、参りましょう。」

と、俺も席を立つ。


「それから、ルーシー、あなたはもうクロスさんの部下なのだから私にそんなに緊張しなくても良いわよ。」

「ハイっ!」

せっかくメイド長が緊張しなくていいって気を使ってくれたのに、ガチガチなルーシー。

殲滅のドラゴンをガチガチに緊張させるって、メイド長はどんだけ強いんだよ。


メイド長が部屋を出て行った後、俺とルーシーは後片付けをして、レオの執務室に向かった。

一度散らかしたまにしてボボネにめっちゃ怒られたのだ。

いい爺さんと若いメイドが正座(これはレオが持ち込んだらしい。あいつめ!)で1時間たっぷりと。

トラウマレベルだよ。



「失礼します。」

俺は仕事中のレオを丁寧に持ち上げ、来客用の椅子に座らせる。

ルーシーが目を丸くしている。

「いいかい、ルーシー。レオ様が仕事中の場合、失礼のないように、この椅子にお運びするんだ、くれぐれも失礼のないようにね。」

執事口調でルーシーに言う。


「!!」

そばにいたベイジーが吹き出すのを堪えている。


「わ、わかりました、クロスさん。」

真面目なルーシーが真面目に答える。


「やれやれ、ルーシーこれは冗談だから真面目に受け取らなくていいよ。」

レオが呆れて言う。


「あ、そう、そうですよね。クロスさんが真面目な顔で言うので、本気にするところでした。ふふふ。」

ルーシーは笑っているが、それから事ある度、俺がレオを丁寧に持ち上げて座らせるので、結局6回目からルーシーが、丁寧に座らせる事となるのだった。


「さて、クロスを呼んだのだが、用件はもうわかっていると思う。」

レオが孤児院長モードで話だした。


「レオ様、さすがに私には、わかりかねますが『先日焼き払ったイシーヌ商会の更地に幽霊がでるからなんとかしろ。』と言ったところではないかと。」

俺も執事モードで答える。


ベイジーとルーシーが目を丸くしている。

「うん、さすがだねクロス。まあ、その通り。魔物や盗賊ならなんとでもなるけど、相手が幽霊となるとねぇ。まあ無理矢理、浄化って言う手もあるけど、悪さをする訳でもないようなので、クロスに頼む事にした。」

へー、浄化なんていう魔法があるんだ。


「悪さをしないなら、放って置けば良いのでは?」

ルーシーが質問をする、当然の疑問点だ。


「うん、たまーに、うっすらと現れるくらいなら、放っておいてもいいんだか。

毎晩、暗くなるとしっかり現れて、説得しようとすると襲ってくるとなると、なんとかしろと言う話になるな。」


「え?襲ってくるのですか。」

怯える、ルーシー。

「あー、ただ襲って来ると言っても実際には危害を与えるわけではないけどね。なんでも凄い形相で追いかけてくるとか。」

レオは事務的に答えてるが、明らかにルーシーが怯えてるのを楽しんでいるな。


「ルーシー、心配はいらないですよ。私に考えがあります。善は急げだ行きましょう。」

俺は泣きそうになっているルーシーに声をかける。


「行くってクロスさん、まだ昼間ですよ?」

訝しがるルーシーを急かし、執務室をでる。


「クロスさんは、この話をご存知だったのですか?」


「ああ、レオ様の質問に答えた事ですね。そうですね、簡単に言えば、二人一緒に呼ばれた事で、前回のイシーヌ商会に関係する話だと。で対人、対魔獣みたいな想定内の問題なら我々より適した人達が対処するだろうと予想しました。まあ、そんなところでしょうか。」


「クロスさん、凄いです。」

尊敬の眼差しがくすぐったい。


「で、今から何処に?」

「ルーシー、この街で1番、昔の事を知っている人の所に案内をお願いできますか?」


「昔の事ならベイジー様が詳しいのですが、この街の事となると雑貨屋のネイルおばさんでしょうか。」


「では、参りましょう。」



クロスとルーシーが出て行った執務室。

「クロス大丈夫かしら、教会が動き出したって情報が入ってきてるわ。」

ベイジーが心配そうに言った。


「大丈夫だよ。クロに無理なら誰にも彼女を救えない。教会にだって、クロは止められないよ。」

嬉しそうにレオが答える。


「なに?その自信。また何か見えたの?」

呆れ気味にベイジーが聞く。


「見えなくてもわかるよ、だってこれ、完全にクロの本業だもの。言ってなかったね、クロは前世で諜報員かつ屈指のゴーストハンターだったんだよ。」


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