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おおかみちゃん  作者: 功野 涼し
体の傷は心まで抉り

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13.おおかみは一途に

 あの子はいつも元気で私に無いものを持っている。


 羨ましく思っていたけど、彼女にも抱えていたものがあった。胸に刻まれた刺青は彼女にとって私とを繋ぐ象徴であると同時に、両親から受けた歪んだ愛情の象徴でもある。


 それは彼女を縛り体だけでなく心までも傷つけるが、心の支えにもなるという矛盾の象徴。


 幼い私は飾切の象徴を見て綺麗だと言った。それは紛れもない本心から出た言葉。


「なに? じろじろ見て」


 私の隣に座る飾切がスマホの画面から私の方に視線を移す。ほんのり桜色に染まる頬の熱を感じたくて思わず触れてしまう。


 そのまま飾切を引き寄せると同時に私の顔を近付ける。


「だぁめっ!」


「えぇ~、この前ほっぺまでなら良いって言ってたじゃない」


「そもそもここはほっぺじゃないじゃん! それといきなりはダメっ」


 お互いの唇が触れそうな距離まで近付いたとき、肩を押され離された私が頬を膨らませて文句を言うと、飾切も朱色に染まった頬を膨らませ反論してくる。

 本当は飾切の言いたいことは理解してる。ようはからかっているだけだが思った以上の反応してくるからついついからかってしまう。


 笑う私の頬を柔らかいものが触れる。


「えへへ~」


 朱色から真っ赤に頬を染め直した飾切が恥ずかしそうに微笑みながら見つめてくる。


「いきなりはダメとか言って自分はいきなりするんだ。ずる~い」


「ずっ、ずるくないもん!」


「もん! だってぇ可愛いぃ~」


「もうっ!」


 私が再びからかうと飾切は怒ってソファーのクッションに顔を埋める。背中を見せる飾切に抱きつくと唇で首にキスをする。

 クッションに顔を埋めたままビクッと小さく反応する飾切が可愛くて強く抱きしめる。


 そのまま耳元で囁く。


「好き」


「ほんとにっ!」


 小さな囁きに大きな反応。埋めた顔を上げ、キラキラと輝かせた瞳で私を見てくる飾切が愛おしくて顔を引き寄せる。


「ってどさくさに紛れてキスしようとしないっ!」


「流れでいけると思ったんだけどなぁ~」


 手で押さえ必死で抵抗され私のキスは阻止されてしまう。


 飾切に「好き」だと告白され半年。私たちは宣言通りゆっくりとお互いを知って関係を構築していく。

 愛おしく感じるこの感情が「好き」で合っていて、私がそれを上手く伝えれているか分からないが感じたままを伝えれるよう心掛けている。


 肌を重ねない愛の構築はときどき不安が過るが、包み込むような安心感も覚える。


「これが愛なのだ」と自信を持って言えない私だが「今が幸せだ」とは自信を持って言える。


 心の中で幸せだと断言するおおかみちゃんは、自分の唇にとまる蝶々を優しく愛でる。

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