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おおかみちゃん  作者: 功野 涼し
お姉さんと……

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8.一言で悩み、一言で元気になれるおおかみちゃん

 コスプレ衣装であるセーラー服を着た私は鏡の前でポーズを取りながら、周囲に設置したカメラが映すモニターをチェックする。


 セーラー服を着て戦う少女のコスプレなのだが、この決めポーズがなかなか難しい。


 アニメでは正面からしか見えないけど、現実は360°全てが見えるわけで全方向に気を配らなければいけない。


 このキャラ、セーラー服ももちろん売りではあるが、一番の売りはワンサイズ小さいニーソックスに締め付けられたことによる、はみ出た太ももなわけだが、これがなかなかうまくいかない。


 細くて筋質な足を見つめる。


 小さくため息をついてニーソックスをずらすと、押さえつけられて付いた跡が顔を出す。


 コスプレをしていると基本的に褒めてくれる声が多い。それは容姿だったりコスプレの再現度だったりと様々だがどれも嬉しい。


 反対に似合っていない、似ていないと批判を受けることもある。

 言葉に棘があるもののもあるが、なるほどと納得できるものも多く今後のコスプレの参考になるものもある。

 コスプレされたキャラを好きだからゆえのこだわりで、本当に好きなんだろうなという言葉に向き合うとプラスになることも多い。


 ただ中には批判のみで、こっちの意見に聞く耳を持たない人も一定いる。相手にしないのが一番なのかも知れないが、それでも目に入るわけでそのときは気になってしまうものである。


 ニーソックスの少しへこんだ跡に触れる。


「こういうとこ見られてるんだよねぇ~。どうしても体に男っぽい部分があるし難しいなぁ」


 小さい頃から女の子として育てられたせいなのか、体質なのかは分からないが骨格を含め女の子寄りだが、女の子特有の柔らかさに欠ける部分があるのは否めない。


 着飾ってキャラになりきればいいと思っていたコスプレ界隈。華やかに、そして楽しそうに見えた世界も飛び込んでみて、突き詰めれば突き詰めるほど奥が深いことを知る。


「趣味を仕事にするなってこういうことなのかな? きっと」


 独り言を言って先ほどの写真をチェックするためにパソコンの画面を目の前にしたとき、メッセージ受信の通知がタイミングよく来る。


 通知からメッセージを読んだ私は笑みがこぼれてしまう。


「もうひと頑張りしよっと」


 そう言いながらモニターに表示されている文字をもう一度見る。


『お姉さんのこと、もっと知りたいです。まずはお姉さんのチャンネルを登録したので、一人のファンから始めたいと思います。                剛』


 考えることがあって気を紛らわそうと、いつもと違う道を散歩していたら偶然出会ったのは雨の中泣きそうな顔をしていた男の子。

 ほっとけなくて声を掛けたけど、運命の出会いとはこんなものなのかもしれない。


 元気をもらえた私は今の迷う気持ちを含めて頑張ろうと気合を入れる。おおかみちゃんだってときには落ち込むこともあるのだ。


 でも私を知りたいと言う一言で元気が出てきた。


 そう私はおおかみちゃん。


 愛を求めて食べちゃう男の娘なんだから!

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