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008 かおる、ダンジョンでプリーストを拾う

 初ダンジョン攻略。パーティは組まずに無謀にもソロで魔王支配地域にある入場制限のないダンジョンに潜った。第一階層は余裕だった。モンスターもほとんどいないし、宝箱もなかったけれど。でも、ウサギ型モンスター一羽を倒すとぐっと経験値が上がるのがわかる。ただ、なぜウサギを一羽二羽って数えるのかふと疑問に思う。どうでも良いけど。気になる。元の世界に戻ったらググってみよう。


 二階層でトラブルが発生した。多くの探索者パーティがミノタウロスが出たと叫びながら、ダンジョンを走り去っていく。


「エクスキャリバー、ミノタウロスって何?」


「そこそこ強いモンスターや。こんな上の階層にいるようなモンスターではないやがな……。攻撃は単調や攻撃パターンがわかれば狩るのはそんなに難しくはないと思うやけど、ミノタウロスのハルバード、槍と斧が一体になった武器で殴られると、一発で死ねる」


「ミノタウロスを狩ると経験値がウサギの十倍は入る。今のかおるならミノタウロス二体でも十分勝てるはずや」


 一体でお腹いっぱいです。


 エクスキャリバーのアドバイスを受けてダンジョンの第三回層に潜った。で、女の子を拾った。体力切れを起こしていて、熟睡している。


 生臭い臭いがする。汚水の臭い、硫化水素の臭いかな。えづきそうだ。


「ミノタウロスが近くにいる。油断大敵だぜ」


 急にエクスキャリバーが関東弁になった。


 頭が牛で体はマッチョな男だ。ちゃんと腰布はしてくれている。ただ、咆哮ほうこうがうるさいし、息が臭い。口腔ケアをしてほしい。


 ミノタウロスが私をロックオンしたのを感じた。ハルバードをグルングルン振り回している。ミノタウロスの間合いに入ってみた。ハルバードがドンと私がいたところに振り下ろされていた。ハルバードを一回振り下ろすと、このミノタウロスはハルバードをグルングルン振り回すのが癖みたいだ。


 このミノタウロスの攻撃パターンは、ハルバードを一回振り下ろすと、ハルバードをグルングルンを二回してからハルバードを振り下ろすだ。私は、ミノタウロスの攻撃をかわして、ミスリルの剣でミノタウロスの足を斬ってみた。硬いけど斬れる。再生もしない。


 私はミノタウロスの攻撃をかわしす。ミノタウロスがハルバードを二回回す間にミノタウロスの全身を斬りまくった。一時間ほど戦うとミノタウロスが両膝を地面につけたので、両腕を斬り落とした。で、ミノタウロスの魔核を剣で貫いたら、ミノタウロスがチリになった。ハルバードを残して。ハルバードを私の皮袋に入れた。


 おお、経験値がぐんぐん増えるのがわかる。ミノタウロス君まだいないかなあ。私はまだまだ戦えるのに。ただポイントが貯まらないのはキツイなあ。こんなに頑張ったのに今日の稼ぎがゼロだよ。


 寝ている女の子の元に戻って、その子を担いでダンジョンを出て、野営地に戻った。


「ねえ、エクスキャリバー、ここって魔王支配地域だよね。ここの方が王都よりも治安が良いのってどうなのよ」


「魔王は史上最強にして狡猾にして冷酷なのだが、それは敵に対してのみ。ほとんどの魔族も現魔王に従順で魔王の命令は絶対遵守。魔王は自分を慕ってやってきた人間に危害を加えないようにと布告を出したので、魔王支配地域にいる人間は安全なんや」


「王国の領土が削られ続けているのは、魔王支配地域の方が安全に暮らせるからや。前にも言うたように農民が領主を倒して魔王に領地を寄進する。小貴族だと自ら魔王に自分の領地を寄進して、自分はその代官になる奴もおる」


「今の国王が無能ってわけではないんや。今の魔王が優秀過ぎるだけなんやで」


 私はエクスキャリバーの話を聞きながらウサギ鍋を作っている。先々代の勇者さんは石だけではなくて香辛料も集めてくれたお陰で美味しいお鍋が出来るのは本当にありがたい。


 女の子がやっと目覚めた。


「ここはどこですか? 私はミノタウロスに食べられた、生け贄にされたのでは」


「私が加入したパーティの人たちは皆、絶対に私を見捨てないって神様に誓ったのに……」


 女の子は泣き出した。


「私はかおる、お腹が空いているでしょう。ウサギ鍋だけど食べませんか?」


「ワタクシはお肉が食べられません」


「ベジタリアンでしたか。ごめんなさい」


「お肉は好きですのよ。でも、今はお肉断ちをしているのです」


「何か願いごとがあるのですか?」


 女の子がエクスキャリバーをじっと見ていた。


「あなたは聖剣エクスキャリバー様ではないのですか? みすぼらしいお姿ですが神の息吹を感じます」


「あんたは聖女か?」


「はい、ワタクシは大聖女、ラプンツェル・フロンスホストでございます」


「なんで神の定めたルールを破って勇者召喚なんかしたんや。お陰でワイはこの有り様やど」


「国王陛下のご命令に逆らうことは出来ません」


「勇者を始末した後に召喚は出来たよな」


「国王陛下は王子様を愛されておられます。始末なんか出来るはずがございません!」


「ほう、その結果が旅の剣士と鉄製の聖剣って、お前ら何がしたいねん」


「いえいえ、召喚した方に勇者の称号を買っていただければ万事上手く行くはずでした……」


「アホか、勇者やないと神の恩寵おんちょうはあらへんねん。勇者の称号なんか買えるか。ボケ。かおるの所持金は千ポイントしかなかったんやど」


「まさか……、神々がそんなにケチだったとは思いもしませんでした」


「大聖女、土下座して神々に許しをこえ! 召喚だけは認めてやたんやぞ!」


「エクスキャリバー様、勇者様は召喚の間には現れませんでした」


「魔王に妨害されて、魔王の森に飛ばされたんや」


「……、ワタクシの召喚は成功していたのですね。良かった……」とラプンツェル・フロンスホストはさめざめと泣き始めた。


「かおる、コイツ、これでもアークプリーストやから、パーティに入れたってな」


「ハアーー」泣き続ける大聖女にはまったく見えない少女を、私は見つめ続けた。


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