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004 かおる、メイド喫茶でアルバイトをする

「ハンス、助かったよ。珍しい黒髪のを連れて来てくれて」


 ここはメイド喫茶だ。先代勇者がメイド喫茶が大好きでこの世界に広めたそうだ。先代勇者さん、あなたは何をしているのですか?


「マジで困っていたんだ。一番人気の娘がライバル店に引き抜かれて、この娘なら人気が取れる。間違いない」


「あのうですね。私、旅の剣士でして、近いうちに王都に行こうかと……」


「うちの店も王都に進出するから大丈夫だ」


「そう言うことではなく」


「日給は百五十ポイントで、寮費と食費を天引きするから手取り百ポイントだ。よろしくね」


「はい、よろしくお願いします」いも虫君とパンプキンさんを倒して一日百ポイント。メイド喫茶で働いて百ポイントどっちが良いか? メイド喫茶でアルバイトだ。迷う余地なし。


「かおる、経験値が入らへんのやけど」って相棒がつぶやいた。



「お帰りなさいませ♪ ご主人様」


「君、きゃわいいねえ!」


 古い。先代勇者さんがこれも広めたのだろうか?


「かおるちゃんって、両親、いないだってね? 俺がパパになってあげようか?」


 困った、どういう反応をするのが正解なんだろう。


「出入り禁止になりたいのかな、うちはそう言う店じゃないんだよ」


「すみませんでした。マスター、冗談が過ぎました。出禁はどうかご容赦願います!」



「かおるって剣士なんでしょう? 何でメイド喫茶でバイトしているの?」


「剣士って言っても私はまだまだ弱いしね。剣士ではポイント稼げないから」


「私たちって、二十歳過ぎたらメイド引退なのよね。綺麗な子なら、かおるならクラブからオファーがあるかなぁ。私はたぶんスナックだろうな」


「そうなんだ」


「うちは、どうなるん? クラブもスナックも無理だよ」


「エミは、ファストフード」


「えっ、生活できないよう。時給十ポイントじゃん」


「ハアーー」


「エミには御贔屓いるから」


「アレしかないのか。もうちょっと痩せてくれると良いんだけど……」


「かおる、疲れないの。この仕事ずっと立ち放しだし、ずっと笑顔をキープしないとダメだし、たまに触られるし」


「私の場合、生い立ちが特殊だから」生まれてからすぐに修行の毎日だったし、男との組み手はいつものことだし、完全に麻痺している。まあ、思わず反撃してお客さんの手首の骨を折りそうになったけど。



「非常呼集だ。戦士職は全員西門に集合だ」


「またですか?」


「今度はモンスターではない。魔族様がお越しだ」


「エミちゃん、僕の愛しいエミちゃん! 僕の頬にキスして」


 エミが御贔屓さんの頬にキスをした。エミちゃんの目に涙が。


「かおるちゃん、俺にも頬にキス、あっくちびるでも……」ボコ、常連さんがマスターに殴られていた。


「マスター、冗談ですって」


「かおる、お前も西門に集合だ」


「私は現在メイドですけど」 無視された。



 私はメイド服姿のまま。背中に役に立たない聖剣を背負って腰にはミスリルの剣を帯びている。


 集まっている兵士、戦士職の人たち、全員が死を覚悟した表情になっているのがわかる。若い兵士は緊張でガチガチになっている。


「斥候の報告によれば、鳥形の魔族一体がこちらに向かっている。使用する武器は不明。おそらく羽根を飛ばすタイプの魔族だと思われる。以上」


「近づけない。どう戦えば良いのか?」


「隊長、今度こそ大砲の用意を! 矢では風で飛ばされます」


「代官様は王都に出張中だ。大砲は出せない」


「そんな……」


「王都に、使者を出した。騎士団が来るはず。それまで西門を守るのが我々の使命だ」


「かおる、お前は魔法が使えるな。期待している」


「ありがとうございます」って言ったものの私の魔法は制限付きだよ。


「相棒、勝たなくても良い。時間さえ稼げれば騎士団が対応する。なんとかなる。ワイの指示通り動いてや」


「エクスキャリバー、よろしくね」



「弓矢隊、前へ! 矢を放て!」


 矢が、鳥形魔族に向けて一斉に放たれた。突風が矢を蹴散らした。


「投石隊、石を放て!」


 鳥形魔族に当たる寸前ですべての石が弾かれた。


「エクスキャリバー、あれは?」


「昔風に言うとバリアー、最近はシールドって言うみたいだな」


「ありゃあ、魔力を帯びた剣しか貫けない」


「どうするのよ。めちゃくちゃ強いじゃないの」


「勝たなくても良いんだ。かおるミスリルの剣は魔力を通しやすい。ワイが指示したら、超加速で一気に距離を詰めて、魔力を通したミスリルの剣でシールドを貫け」


「その後はどうするの?」


「逃げろ。鳥頭が追って来ればオレらの勝ちだ」


「無視されたら」


「ここにいる連中が全員死ぬだけだ」


「……」


 鳥形魔族が羽根を広げた。


「かおる! 今だ!」


 「超加速」私は一気に鳥形魔族との距離を詰めて、シールドを剣で貫いた。


「ほおーー、勇者様とお相手出来るとは俺はついている」


「かおる、門から離れろ。敵はお前に食いついた。オレらの本拠地を目指せ」


「エクスキャリバー、マイナーカードのポイントがどんどん減っていくのだけど……」


「魔力を消費するとマイナーポイントが減る。ゼロになったら……」


 なんとなくわかったその後の言葉は聞かないでおこう。

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