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003 かおる、街に行く

 兵士の詰所で、案の定止められた。簡易検査、マイナーカードを装置の上に置くと氏名、年齢、性別、職業が表示された。


「あんた、剣士か?」


「現在、この街は剣士等戦士系の職業の者は非常呼集が掛けられている。拒否権はない」


「あんたの腰の剣は鉄製か?」


「そうですけど……」


「非常時ゆえ、先程戦死した剣士のミスリルの剣をあんたに貸与するので、その剣でモンスターと戦ってほしい」


「すみません、まったく状況が……」


「状況は戦闘地域に行くまでに説明する」


 兵士さんの話によると、露天商の顔役二人がモンスター化したので、現在、この街はパニックになっている。こう言うことはよくあるのだが、まさか兵士でも勝てない強力なモンスターに人間がなるとは思ってもいなかったそうだ。


 現場に着いて驚いたことに、元人間のモンスター二人は槍で突かれても、すぐに傷口がすぐに再生してしまう。毒矢が刺さっても効果がない。剣士は間合いが取れない。二人のモンスターの連携が良いのと、人間離れした動きについていけないでいる。


「大砲で、頭を吹き飛ばすしかない。代官様に許可を取って来てほしい」と兵士長が同僚に言う。


「人間がモンスター化した程度では、多額のポイントが掛かる大砲は出さないよ。ドケチ代官なんだから」


「しかしだ、後二日は暴れ回ると思うがな……」


「後、二日で片がつくのなら、放置じゃあダメ何ですか?」と私は戦いたくないので言ってみた。


「突然魔物化した人間は通常なら二日程度で命が尽きるのだが、あの二人はどうも知性があるように見えるんだよ」と側にいた兵士長さんが答えてくれた。


「二日後には下手をすると、さらに強力なモンスターになっているかもしれん。そうなってからでは大砲を出してきてももう遅い」


「俺、焼き鳥を食いながら暴れるモンスターを見たのは初めてだよ」と一人の兵士さんが皆んなの緊張を和らげるように軽口を言っていた。


 確かに元人間のモンスターは二人とも戦闘を楽しんでいるように見える。



「エクスキャリバー、どうしたら良いの?」


「モンスター化したのなら、魔核がどこかにあるはず、そのミスリルの剣でそこを突けば、何とかなる。問題は二人が連携してそれぞれの魔核を守っていることや。動きを止めんと勝機があらへん」


「二人の動きを止めれば良いのね。了解です」


 私は加速の魔法を自分自身に掛けた。この世界に召喚された勇者は特典として魔法スキルが付与される。私の場合、勇者ではなく剣士なのでかなり限定された魔法スキルなんだけど。


 私は、焼き鳥を食っているモンスターの足を斬った。見事にすっ転んだ。でもすぐに再生が始まっている。その前にもう一人のモンスターを戦闘不能にしておかないと。


 焼き鳥モンスターは私以外の剣士と兵士が集団で攻撃中。それを助けようとしている、どう見ても知的なモンスターの相手を私が引き受けた。



「こいつ、元々は優秀な兵士や。無駄な動きがまったくない。かおる、油断すると一撃で死ぬぞ」


 めっちゃローブが邪魔。動きにくい。私はローブを脱いだ。モンスターが一瞬動きが止まった。私はその一瞬の隙をついって一気に斬りまくった。傷口が再生するよりも早く。


「お前、勇者だな」とモンスターが言う。うわーー会話が出来るんだ。


「残念でした。勇者見習いです」私はモンスターの肩口に光った魔核を見つけた。


「かおる、こいつの魔核を破壊するとこの辺りが吹っ飛ぶ。肩から斬り落とせ」


「了解、相棒」


 モンスターは肩口から腕を残してその他の部分はチリになって行く。


「かおる、そのモンスターの肩を皮袋に入れろ」


「えっ、やだよ」


「そこから、奴は再生する、急げ!」


 仕方なく、私はモンスターの肩と腕を拾うと皮袋に放り込んだ。


 焼き鳥を食べていたモンスターの方も魔核を壊されてチリになっていた。兵士と無理矢理参加させられていた剣士たちが勝鬨かちどきの声を上げていた。


「あんた、異世界人か?」一人の兵士が私を見つめている。そうだ、私ローブを脱いで学校の制服で戦っていたんだ。


「はい、気が付いたらこの世界にいました」と言いつつローブをまとうった。


「兵士詰所までご同行願う」


「承知しました。武器はどうしましょう?」


「今は持ったままで良い」



 私はまた兵士詰所に戻った。これって振り出しに戻ったってことだよね。借りていたミスリルの剣を兵士に返した。エクスキャリバーについは何も言われていないので、そのままだ。


「あんたは勇者なのか? いや、マイナカードには旅の剣士と表示されているし」


「ええと、王都に勇者がいらっしゃるそうなので、私が勇者なわけがありません。この世に二人の勇者は存在しないと言うことわりがございますから」


「ニセ勇者だ、でもあれも勇者なのか……」


「あんた、名前はかおるで良いのだな」


「はい、かおるです」


「かおる、あんたの生活履歴が空欄なのはまずい。俺が適当に登録しておく。ただし条件が一つだけある。俺が世話になっている人の店でしばらく働いてほしい」


 これって風俗に売られるイベントなんだろうか?


「まあ、良いですけど」風俗だったら逃げれば良いし。


「かおる、森に捨てられていたところを狼によって育てられた。知識は狼の友人である知恵のある龍より学んだ。人間の世界に戻れと、育て親の狼に言われて森を出たってこれが私の生活履歴ですか?」


「これだとツッコミどころ満載で、疑問の余地がないだろう。まさか異世界人って書くこともないだろう。異世界人と言えば勇者しかいないのだから」


「モンスター退治の報酬はさっきのミスリルの剣だ。所有者登録もマイナーカードを更新する際にしておいた」


「ありがとうございます」ただでミスリルの剣が手に入った。



 ここはたぶん風俗店に分類されると思う


「お帰りなさいませ。ご主人様」メイド服姿の女の子たちが私たちを出迎えてくれた。

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