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002 かおる、先代勇者の話しを聞く

「それはやな……」


「続きは何ですか? エクスキャリバー」


「一言で言うと、先代勇者は変わり者やったから」


「どう言うことですか? それは」


「先代勇者は、これまでの勇者の中でも最強や。魔王城に入って、魔王の前に立ったんやから。それまでの勇者は魔王城の入口に行くのがやっとやったんや」


「その勇者は魔王に負けて逃げたわけですか?」


「アイツ魔王と戦いよらへんかってん。不戦敗を宣言して、戦えと止める魔王を振り切って帰りよってん」


「エクスキャリバー、意味不明なんですけど」


「ワイもわからへん」


「魔王は先代勇者に攻撃をしたのですよね」


「めっちゃしてたなあ。まったく効果あれへんかったけどな」


「それって、勇者の方が魔王よりも強かったのではないの?」


「まあな……」


「だったら、先代勇者さんにお願いをして魔王を倒してもらったら良いのでは」


「アイツなあ、勇者の称号を売って隠居しよってん。まったくワイには理解できん」


「それなら、勇者の称号を買った方に魔王討伐をお願いすれば良いのでは」


「勇者の称号を買ってもやな、そいつには聖剣もあれへんし、聖兜もないし、聖鎧もあれへん。勇者の称号を買ってもやな、勇者召喚の儀式で勇者になったわけやないさかいなあ、勇者の装備一式が神々の元へ返ってしもうた」


「それでも、そいつは魔王城に行こうとして、さっきかおるがおった魔王の森に入りよった。けどな魔王の森でたむろっていた雑魚モンスターに一蹴いっしゅうされて王都に逃げ帰ってしもうた。今ではそいつは魔王討伐を諦めて勇者の称号を売りに出しとる。誰も買わへんけどな」


「その値段が五十万ポイントですか」


「正確には五十万ポイントから……」


「何ですか? 五十万ポイントからって」


「転売して差額を儲けようとしている。職業は勇者やのうて完全に転売屋やな」


「人間世界の危機なのに、転売って何それ何ですけど!」


「説明はとりあえず以上で、今後のかおるのミッションはポイントと経験値を貯めること」


「私にダンジョンに潜れって言うの?」


「アホなこと言いな。かおる、瞬殺されたいんか?」


「じゃあどうするのよ!」


 私はキレた。理不尽に呼びつけておいて、この扱いはなんなんだよ。


「今のかおるが勝てるモンスターは二種類しかおらん。二匹倒したら一ポイントのモンスターがおる。これからその二種類のモンスターを毎日狩って、せっせとポイントを貯めてええ武器を買うて……」


「聖剣エクスキャリバー、今なんとおっしゃいましたか?」


「ワイ、見ての通りの鉄製のロングソードや、ワイが勝てるのもその二種類のモンスター限定やねん」


 この自称聖剣も使えない。


「かおるがやな、勇者の称号を得たら、ワイも聖剣になれるし、聖鎧も聖兜もやって来るはずや。たぶん、きっと、祈ってんかあ……」


 私が勇者になっても装備がそろうわけではないのか。


「今回は人類史上初の事件やから、見通しが立たへんねん。ともかく、ここが、今日からかおるの拠点や。あの大樹のウロの中には先々代の勇者の生活用品が置いてある。今日からかおるのもんや」



 私は大樹のウロの中に入ってみた。木製のベッドが置いてある。マットレスはない。毛布もない。


「かおる、この世界のもんは、この大樹の周辺以外のもんを食べると理性を失うさかい気いつけや」


「ハア……」


「この世界にあるもんはすべて魔素が付いてから、異世界人には体に悪いんや」


「どうするんですか? ここから動けないじゃないですか!」


「洗えば魔素が取れるから。あっ聖水でやけどな」


「その聖水とやらはどこにあるの?」


「外にある井戸の水が聖水や。ほんでやなあ。持ち運びは、たとえて言うならネコ型ロボットのポケットになるのが、あの壁にぶら下がっている皮袋や。出掛ける時は忘れずにやでえ」


「面白くないです」


 私は皮袋を見てみた。特に変わった皮袋ではない。手に取ってみた。とっても軽い。皮袋の中に手を入れてみるとさまざまな石が皮袋に入っていた。幾つか石を取り出してみると。


「宝石! ダイヤモンドにエメラルド、サファイアって……、うん、これは穀物の種にお肉って……」


「先々代は石集めが趣味やったからなあ……。それ全部もう、かおるのもんやから。その皮袋に入っている間は果実もお肉も腐らへんし、魔素を皮袋が吸収するので、食べても大丈夫なんやで、凄いやろう」


「ほな、その皮袋に聖水を入れて、モンスターを倒しに行こうか!」



 私は自称聖剣エクスキャリバーに案内されて森と草原の境界にやって来た。そこにはいも虫とハロウインで見るカボチャがたくさん地面をはっていた。


「ここが、かおるの修行の場や、大きないも虫二匹倒せば一ポイント、カボチャを二個倒せば一ポイント、いも虫一匹とカボチャ一個を倒せば一ポイント、マイナーカードに自動的に入る」


「ハア……、いも虫とカボチャを倒せば良いのね」


 それは作業だった。いも虫君を叩く、カボチャ、パンプキンさんを叩くただそれだけを繰り返すだけ。いも虫君もパンプキンさんも無限にいるのではと思うほど、地面をはっている。


 朝ご飯を食べたら、いも虫君とパンプキンさんをひたすら叩く毎日が続いた。目標はミスリルの剣が買える一万ポイントを貯めること。


 私は自分に一日百ポイントをゲットすると言うノルマを課した。晴れの日も、曇りの日も私はいも虫君とパンプキンさんを聖剣エクスキャリバーで叩き続けた。雨の日はいも虫君もパンプキンさんもどこかに隠れてしまうので、雨の日はお休みにして、皮袋に入っていた、おそらく小麦の種を小さな畑に撒いてみた。


 この世界に来てからの主食は自生しているじゃがいもと大樹の周辺にいる鶏とウサギと野性のブロッコリーと、皮袋に入っていた何のお肉かわからないお肉で生きている。



 一万数千ポイントが貯まった。


「エクスキャリバー、ミスリルの剣を買いに行くのだけど、案内してくださいね」


「かおる、マイナーカードに出世地が登録されているはずなんや。ちょっと見てくれへんか?」


「出世地、魔王の森の中って書いてあるけど」


「で、経歴は?」


「職歴なし」


「不審者やな。第一その異世界の服は目立つ。先々代の服に着替えて……」


「お断りです。先々代の勇者様は男性にしては小柄だけどこのマッチョなセンスは無理です」


 筋肉を見せるための露出が多すぎる。先々代勇者さんはシュワちゃん、あるいはスタローンに憧れていたのだろうか?


 十七歳の少女には絶対に着ることは出来ない服ばかりだ。それになんか臭うし。絶対無理。


「先々代は、ほんまマッスルが好きやったからなぁ。とりあえずローブだけでも上から羽織って」






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