表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

19/20

018 かおる、魔王城に入る

 山田さんが先頭を歩いている。魔族の皆さんが出迎えてくれている。ええっと理解出来ない。どうして襲ってこないわけ。魔族の子どもたちが山田さんに向けて手を盛んに振っている。まるで英雄が帰って来たみたいだ。


 魔王城に近くになると魔族の兵士の皆さんが左右に分かれて整列をしている。何がどうなっているのだろうか?


「山田が戻って来るのを待っていたみたいだ。とくに魔王が」


 一人の魔族、あれはハーピーと名乗った鳥形魔族が道の真ん中に立って、「勇者、俺と勝負しろ」と叫んだ瞬間にハーピーの頭に特大の雷が落ちた。ハーピーは焼き鳥になっていた。


「ハーピーの馬鹿。魔王様を怒らせて、しょうがない奴だ」と言われつつ、道から撤去された。


 ハーピーが撤去されると私たちの頭には花びらが撒かれている。もの凄く歓迎されている。私たちは花びらの上をゆっくりと歩いて魔王城に入る。何となく儀式を行なっているようだ。ちなみに、ジョージ王子は魔王に不埒ふらちなことをさせない、言わせないため、縄で縛られ、猿ぐつわをされて、山田さんが引っ張って歩いている。



 広間に入ると魔王が立っていた。嬉しそうでいて、それを隠すために仏頂面をしている感じで、複雑な表情になっている。


「山田、なぜ何度も呼び出したのになぜ来なかった!」


「モゴモゴ……」


「山田、何と言ったのか?」


「かおる、俺は女の子と話したことがない。何を言えば良いのか見当もつかない。長年、二次元の世界で暮らしていたのでリアルな女の子とどう接して良いのかわからない。後は任す」


 私、大石かおる、十七歳。女子高生に向かっていう言葉がそれか。なら任されてあげましょう。


「初めまして、私は旅の剣士でかおると申します。山田さんは魔王様に何を話して良いのかわからないそうなので、私が説明したいと思います」


「山田はあがり症なのか? 私は極めて寛大なので別に何を言われても平気なのだが」


「それで、山田は何と言っているのだ?」


「魔王様に会うのが恥ずかしいと申しております」


「かおる、もう少しわかるように言ってもらえないか? 山田が私と会うのが恥ずかしい理由がわからない」


「山田さんは魔王様に恋をしておられます。魔王様に嫌われたくないので、会うのが怖かった」


「そうか、山田は私のことが好きなのか。私も山田のことが好きだ」


 山田さんが意識を失った。


 山田さんはそのまま医務室の運ばれた。山田さんが王子を縛った縄を固く握りしめていたため、王子もそのまま医務室に連れて行かれた。


「山田は体調が悪いのか?」


「いえ、魔王様から好きだと言われて、嬉しすぎて倒れたと思われます」


「ああ、あれか愛の告白と思われたのか? 私はまだ未成年だし、これまで強くありたいと修行しかしてこなかったので、異性の気持ちがまったく理解出来ない。魔族の者が求婚に来ると一度戦って、私に一撃を入れた者と付き合うと布告したら、誰も求婚には来なくなった」


「かおる、お前は勇者ではないのに聖剣アスカロンと鉄製のロングソードにしか見えないが、エクスキャリバーも持っているのはなぜか?」


「私はラプンツェルと申します。私が神々の定めを破り、勇者がいるのにもかかわらず、勇者召喚を行いました」


「あの召喚の儀式か。どうなるのかを知りたくて、ジイがその儀式に介入したらしい。あっさり森に連れて来ることが出来た。が、その後は神域に逃げ込まれてしまったので、行方知れずになってしまった。それが、かおるだったのか?」


「はい、その通りです。魔王様」


「かおる、エクスキャリバーを私に貸してほしい。さすがにその姿は哀れ過ぎる」


 私はエクスキャリバーを魔王に預けると、エクスキャリバーが輝き出して聖剣らしくなった。


「かおる、ワイ、聖剣を引退することにした。魔王に哀れまれる聖剣ってこの世界にあってはいけないと思う。ワイの後任は無口なアスカロンや」


「山田を連れて来てくれて心から感謝をする。今、私と互角に戦えるのは山田しかいないのだ」


「お前たちに望みがごとがあるのなら叶えてあげよう」


「かおる、望みは何か?」


「元いた世界に、戻りたいです」


「そんな小さな願いで良いのか?」


「はい」


「聖女の願いは何か?」


「私の願いはアルバの街からの支援がなくなったエリオットの街に食糧をお願いします」


「お前たちの願いはすぐに叶えられるが、それで良いのか?」


「王国と魔王様は敵対関係でございますから、多くは望みません」


「私としてはこれ以上、人間たちが領地を私に寄進されると、厄介ごとが増えるので、王国内の荒地を畑に変えようと思っている。その方が人間は魔素の少ない食べ物を手に入れられて安心だろう」


「私からの条件は一つだけだ。山田をここに置いていくこと」


「はい、喜んで。山田さんもずっと魔王様の側にいたいでしょうし」とラプンツェルが言う。


「それと私は人間の王国に干渉するつもりはないが、現国王はダメだ。聖女、お前が国政をとれ」


「承知しました」


「かおる、お前を元の世界に戻す。こちらでの記憶は消すが良いな」


「はいそれでお願いいたします」


「では、そこに大きな穴を開けるので、かおるはそこに飛び込め」


 縄なしバンジージャンプか? 気合いで行くしかない!


「エクスキャリバー、今までありがとう」


「終わりよければすべてよしやな。かおる元気でやりや」


 私は穴に飛び込んだ。

次話で完結です

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ