表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

17/20

016 かおる、試練のダンジョンに入る

「魔王城に行く前に、一度試練のダンジョンに潜ってもらう」


「山田、余は試練のダンジョンとやらには行ってはおらぬぞ」


「王子、あんたは魔王の森に行っただけだ。本当の魔王城はあそこにはない。先代魔王の時はあったらしいが」


「魔王城はこの世界にはない。別の世界線にある」


「山田さん、言ってることがまったくわかりません」


「現魔王を収めるにはこの世界は小さすぎるのだ。それで別の世界が用意された。魔王本人はあっちの世界にいる」


「こっちにいるのは、かおるならわかるだろう。フォログラムだ。ラプンツェルの言葉だとアバターってとこだな」


 絶対に倒せないと思う。魔王用の世界が用意される魔王ってすでに神様ではなかろうか?


「神々の間にも最低でも龍神になってもらうおうと言う案も出ている。あれはもう闘神というか、勝利の神になっても良いと思われている」とエクスキャリバーがつぶやいた。エクスキャリバーさんや、私がビビると思って黙っていただろう。ビビってるよ。マジで私、魔王になんて会いたくない。


「試練のダンジョンは選別の門と同じだ。魔王城に入れる資格がある者とない者とを選別する。魔王城に入れない者は死ぬまでダンジョンから出られない」


 私は普通の剣士だから、試練のダンジョンから出られない可能性が百パーセント。王子は称号が勇者だから五十パーセントの確率で出られないかもだ。


 山田さんとラプンツェルは平気な顔をしている。王子は何となく死を覚悟した雰囲気が伝わってきた。


「余はどこでしくじった。勇者の称号を得て、聖剣、聖鎧、聖兜を売ってしまおうと考えたのが間違いだった」



 試練のダンジョンに私たちは入った。お出迎えはバンパイヤが一体。


「皆さま、よくお越しくださいました」


「バンパイヤに魅了されると、眷属にされるぞ。心をしっかり持て」と山田さんが言う。


「お久しぶりです。ミスター山田。私もボンクラは眷属にはしません。ペットのケルベロスの餌にします」


 王子がふらふらとバンパイヤのところに行こうとしたので、山田さんに殴られて倒れていた。


「かおる、どうだ?」


「大丈夫です」


「このバンパイヤを倒さないと次に進めないんだが、どうするね。かおる」


 私への試練なのか。敵意も何もバンパイヤからは感じない。私はアスカロンを抜いた。その瞬間に濃密な殺意が私に襲ってきた。私を敵として認定してくれたみたいだ。


「超加速」一気にまわいを詰めたが、バンパイヤはすうっと私の間合いから外れた。幻影かもと思ったが、軽く打ち掛かってみた。バンパイヤの爪が伸びて受けた。が、アスカロンはその爪を綺麗に切りそろえた。


バンパイヤは「聖剣の切れ味は一味違いますね」と苦笑していた。


 目の前の殺意の塊りのバンパイヤに、あるはずの魔核がどこにもない。魔核は安全なところに保管してそのアバターが攻撃しているように思う。


 アバターと本体の繋がりを探すことに集中する。バンパイヤの爪が自由自在に伸びるので、間合いがまったく掴めない。


 山田さんは見物を決め込んでいる。ラプンツェルは私の回復役をしてくれている。バンパイヤがラプンツェルを攻撃した時はバンパイヤを睨みつけて山田さんが防御していた。


 真っ暗な天井の片隅に、置物のようなコウモリが見えたような気がした。アバターとの間に糸のようなものが一瞬だけあったように感じた。


 私はアバターの頭を踏みつけて置物のコウモリに一撃を入れたら、部屋に灯りがついた。


「かおる殿、試験合格です」バンパイヤが宣言をした。


「少々お行儀が悪かったので、ギリギリ合格ですけど」


「ミスター山田、勇者でもないただの剣士がアスカロンをなぜ使えるのですか? 経験値もさほどないのに? 私には理解出来ません」


「さあな、俺には興味がない」


「ミスター、お茶でもいかがですか? なかなか良い茶葉が手に入りました」


「時間稼ぎをしない方がお前たちのためだと思うが」


「こちらにも歓迎の準備がございます」


「ミスター山田、楽しませてもらいますよ。とくにただの剣士さんは興味深いです」


「ミスターのパーティの皆さまお通りください。山田さんは王子を蹴りながら次の部屋に入った。そこには妙齢な女性が艶然と微笑んでいた。


「お前、少しは学習したらどうなんだ」


「山田への試験じゃないのよ。あなたは魔王陛下から招待されているから。既に合格なのよ」


「そこの犬の餌の試験だから」

 

 女性は相変わらず、意識が戻らない王子を冷たい目で眺めながら言い放った。


 女性のお付きの少女が意識のない王子に点鼻薬を嗅がせた。


 ぼんやりと目の前の女性を見て一言言った。「臭い」


 艶然と微笑んでいた女性の顔がミルミル、鬼の形相になった。


「お前たち、ケモノ臭い。余は鼻は良いのだ」


 お付きの少女後短剣を振るって王子を刺そうとしたところで、私はミスリルの剣で受け止めた。


「おやめ、この部屋を血で汚すと宰相閣下からお叱りを受ける」


 王子をみるとまた気を失っている。


「さて、聖女さんの番だぜ。大丈夫かい。あんたの真っ黒な部分が全員に知られるぜ」



評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ