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011 かおる、アルバの街に潜入する

 アルバの街への道中はウサギのモンスターを飼ったり、ニワトリのモンスターを狩ったりしながら、馬に乗って進んだ。不気味と言えば不気味な森の中を通っているのだけれど、見慣れてしまうと何ということもないただの森だ。


 王都の街道よりもずっと安全でモンスターに襲われることはなかった。



 アルバの街に入った。私は頭からすっぽりローブをかぶって姿を隠したが、ラプンツェルはタヌキの首飾りをしただけで、アークプリーストですって格好で歩いている。


 トラブルに絶対あうと思ったけれど、魔族の皆さんが私たちから距離を取っているのを感じる。潜入調査どころかとっても目立っている。


 こりゃあ調査は失敗だな。


「おい、そこの魔女! お前たちこの街に何のようだ」


 イヌ頭の魔族が二人? 私たちを誰何すいかしてきた。でも、私たちが魔女ってどういうことだろう。


「観光ですわ。このアルバの街は歴史ある街ですから」とごく自然にラプンツェルが答えた。


「魔女、街の観光がすんだらとっとと出て行ってくれ。悪魔臭くてかなわない」


 そう言うとイヌ頭の魔族たちは私たちから逃げるように去って行った。


「ラプンツェル、魔女ってどういうこと」


「この人形から悪魔の臭いがふんだんに出ていますから、魔族の皆さんは悪魔の臭いがお嫌いですのよ」


 そう言うことで、魔族に襲われるどころか、魔族の皆んなに思い切り嫌がれつつアルバの街を散策した。とくだん変わったことはないように思えたが、川辺近くに行くと一気に景色が変わった。これって空爆でもされたのかって感じで何もかもが破壊されていた。


「あら、これってドラゴンがかじった痕ですわ」


 ラプンツェルはドラゴンがかじった? という石柱を丹念に見つめていた。


「アルバの街がドラゴンに襲われたわけね」


「はい、そうですね一匹ではありませんね。二匹以上で襲ったと思います」


「どうして、そう思うの?」


「ドラゴンは原則的にお仕事は大雑把なのですの。これほど完璧で丁寧なお仕事が出来ませんから」



「魔女さんたち、あんたらドラゴンを探しに来たのかい?」


「はい、大魔女様、ドラゴンの血が必要でして」


 ラプンツェルはタヌキ顔のおばあさんに大魔女様と呼びかけた。


 大魔女と呼ばれたおばあさんはキットした表情になって「駆け出しの魔女の分際で私によく声を掛けたね」


「大魔女様もドラゴンをお探しですか?」


「ああ、残念ながら一足遅かったよ。でも、手掛かりはつかんだよ。教えないけどね」そう言うとタヌキ顔のおばあさんは消えた。



「ゴーストさん、そんなに興奮しないの。どうせまた会えますから。それまでにこの人形に馴染んでくださいませ。でないと仕返しが出来ませんわよ」


「ラプンツェル、あのおばあさんがゴーストさんに呪いを掛けた魔女ってことですか?」


「ゴーストさんでなければ、気付かれるはずのない完璧な変幻でしたから。あちらもかなり驚かれたようでしたわ」


「それとですね。ラプンツェル、すぐに会えますからってどういうこと?」


「ワタクシたちもドラゴンの後を追いますから。すぐに会えるという意味ですけど」


 もうアルバの街の調査は終了しても良いはずだ。ドラゴンがアルバの街を襲ったため、物流が止まったと報告して私たちのミッションは終了のはずだから。


「でも、ドラゴンがどこに行ったのかはわからないし……」


「魔族の方はご存知ですわ。こんな目にあわされて黙っているほど魔族は大人しくはございません」


「そのうち、魔族の皆さんがドラゴン討伐に行かれるのについて行けば良いだけですわ」


「でも、大魔女が先にドラゴンを見つけて……」


「ゴーストさん、それって無理ですわよね」


「ああ、あれはいつも一足遅れになる。私が呪い返しをしておいたから、ザマあミロだ」



「ラプンツェル、私たちの依頼はアルバの街の調査であってですね、ドラゴン探しではありません」


「かおるはアルバの街についての知識はおありですか?」


「まったくありません」


「アルバの街は古都でした。アルバの魔族はそれを誇りにしています」


「成り上がりの魔王の言うことなど聞く耳は持たない。半独立国なのがアルバなのです」


「ところで、現魔王のご両親をかおるはご存知ですか?」


「すみません、知りません」


「現魔王は魔族ではございません。赤龍と黒龍のお子さまです」


「現魔王はドラゴンなんですか?」


「はい、その通りです。で、半独立国のアルバの街を襲ったのは?」


「ドラゴンです」


「現魔王はドラゴンですよね。これって現魔王の言うことを聞かないアルバへの警告だと思いませんか」


「思います」


「アルバの魔族もそう思います。しかしながらたとえドラゴンが相手でも魔族なら報復しなければ、アルバに住む魔族は臆病者と他の街の魔族から言われますの」


「アルバは人間の街に食糧を送る余裕は今後一切ありませんのよ。なぜならドラゴンと戦をしますから、爪の一欠片、鱗でも持ち帰れれば大成功でしょうね。相手は天変地異級の災害なんですから」


「だったらやはり速やかにエリオットさんにそのことを報告した方が……」


「報告したところでエリオットには何も出来ません。街が荒地になるのを見るだけですわ」


「ワタクシたちがドラゴンを狩って、アルバの皆さんには街の復興にいそしんでもらうのが最良の解決策ですのよ」


「ラプンツェル、私はミノタウロスとは戦えますが、ドラゴンは無理です。瞬殺されます」


「ゴーストさん、何とかなりますよね」


「ああ、何とかしてみせる。あの魔女を泣かせてやる!」


 魔女が泣く前に私が泣くわ!


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