009 かおる、パーティを組んでダンジョンを攻略する
ラプンツェル・フロンスホスト、呼びにくいので、ラプンツェルとパーティを組んだ。ラプンツェルが生きているのを知った元パーティメンバーが、ラプンツェルに謝ってもう一度自分たちのパーティに入ってくれるように頼んできたが、神々との誓いを破った人たちとは二度とパーティは組めないと、ラプンツェルは静かに断っていた。
しかし彼らもしつこくてたまにでも良いので、自分たちのパーティにと毎度、ダンジョンで会うたびというか、待ち伏せされているのだが、助けてほしいと言い寄ってくる。無視してドンドンダンジョンに潜ると、ダンジョンのある地点に着くと彼らは弾かれて入れない。
その地点を選別の門という。ダンジョンに認められた者たちしか入れない。彼らもラプンツェルがパーティメンバーだった時は入れたらしいので、ダンジョンに認められているのは、アークプリーストであるラプンツェルだと思う。私は相変わらず職業欄は初級探索者で旅の剣士のままだから。
選別の門に入れるのは最上級探索者のみ。お陰様で宝箱を見つけることが多くなってポイントが貯まって嬉しい。でも未だ三万ポイント。勇者の称号を買えるようになるのはまだまだ先のことだ。
ダンジョンに入るたびにラプンツェルが「おかしいのです、おかしいのです」ってつぶやくのがイマイチ理解出来ないでいる。
「ラプンツェル、毎回おかしいのですって言うけど、何がおかしいわけなの?」
「ここには亡霊さんが住んでいるはずなんですの。亡霊さんはワタクシが来ると必ず浄化してほしいと言って来られるのですが、かおるとパーティを組んで以来まったく、出て来られないのです」
「成仏されたのでは?」
「あり得ません。あの凄い呪いを掛けられて亡霊にされた方が簡単に成仏なんて出来ません。ワタクシの見立てでは私が毎日浄化しても五年は掛かったはずなんですの」
亡霊が出て来ないのは私としてはとっても有り難いのだ。私はホラー系がとっても苦手なんだよ。
◇
「ラプンツェル様、お心遣いありがとうございます。私は元気にしております」
「あら、亡霊さん、いつものように出て来られたらいかがですか? 姿が見えないと浄化が出来ませんことよ」
「出たいのはやまやまなんですけど、神気が、ラプンツェル様の周囲を覆うているので、弾かれてしまいます。私をラプンツェル様と同じパーティメンバーにして頂かないと姿をお見せ出来ません」
「ねえ、かおる、亡霊さんをパーティメンバーにしてあげてほしいのですが……」
「かおる様、私は今はしがない亡霊でございますが、亡霊になる前は凄い魔法使いでございました。でも今はそれなりと言いますか、期待されるとツラいかもレベルの魔法しか使えませんが……」
「エクスキャリバー、どうしたら良いと思う?」
「ワイに振るかんかあ。ラプンツェルは亡霊を成仏させたいんやろ。聖女がそう願うなら叶えたたっら、役には立たんやろうけど。迷惑を掛けるようなら、リーダー権限でパーティから追い出せばエエンやし」
「亡霊さん、魔法使いとしてパーティメンバーにします。で、あなたの名前は何ですか?」
「名前は魔女に奪われまして、ゴーストとでも呼んで頂ければ良いかと」
「ゴーストを私のパーティメンバーとします」と宣言すると黒のローブをまとった骸骨が私の目の前に現れた。
「うわー」と私は思わず叫んでしまった。ゴーストも「うわー」って叫んでいた。
「ゴーストさん、善行を積まないと悪魔になってしまいましてよ」
「ラプンツェル、今、何と言いましたか?」
「ゴーストさん、善行を積まないと悪魔になってしまいましてよ」
「ゴーストさんは悪魔になるの?」
「はい、ゴーストさんは悪魔になる呪いを掛けられているので、それが何か問題でも」
「ゴーストさんは悪魔になっている。現在進行形で……」
「はい、もう半分は悪魔です。魔法があまり使えないというのは嘘です。一瞬で人の命を奪える魔法が使えます」
「ゴーストさん、嘘はダメですよ」
「嘘と言われるとですね、魔法は使えないとは言ってはいないわけでして」
「思考が悪魔化してきてますね。魔女の呪いに負けかけている」
「あの程度の魔女に私は負けませんよ。私の誇りにかけて!」
「まあ、私が魔女を侮ったのがこうなった原因なのです。油断さえしなければ……」
「この呪いさえ解ければ、あの魔女を地獄に送ってやるのに……」
「ゴーストさん、人を呪わば穴二つですよ」
私は半分悪魔化した亡霊をパーティメンバーに加えたけれど、良かったのだろうか? 勇者パーティに悪魔ってありなんだろうか? 悩んでしまう。
「かおる、ゴーストさんは心配ありませんから、ゴーストさんが完全に悪魔になったら一度地獄で悪魔としての基礎学習しないといけないので、当分現世に出て来れませんから」
「ゴーストさん、一応言っておきますが、殺傷性の高い魔法は使わないでください。パーティリーダーとして命令します」
「了解です。それとですね私の魔法はモンスターには効きませんから、一応言っておきます」
「エクスキャリバー、このメンバーで魔王討伐が出来るかしらね」
「不可能だ」
「私もそう思うよ」