表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

8/39

7 ゲオグラムの詰問②

 いつものようにシュヴァルツを訪ねたら、シュヴァルツは居らず、ゲオグラムに詰問されることになってしまった。壁ドンである。壁ドン。正しくは扉ドォン!だった。迫力があり過ぎて怖い。こんなのでときめくなんて、ヒロインちゃんはイカレてる!


 私はゲオグラムのあまりの怖さに、頭がパニックになってしまい、ついゲームのシナリオには無いセリフを言ってしまう。そして、ゲオグラムからシュヴァルツへの接近禁止命令を出されてしまった。こんな展開、ゲームでは無かった。最悪だ。


「話は以上だ。消えろ」


 ゲオグラムが扉から手を放し、私に背を向ける。このままじゃマズイ。どうにかして、接近禁止の命令を解いてもらわないと!ゲオグラムはいつもシュヴァルツと一緒に居るから、本当にシュヴァルツに近づくことを阻止されてしまう


「待ってください!お、横暴です」


「横暴なものか。お前は怪しすぎる。これ以上、殿下の御傍には置いておけない」


「怪しい!?」


 え!?怪しいって何よ!?もしかして、刺客か何かだと勘違いされてる?


「わたくしは、シュヴァルツ殿下を害するつもりなんてありません!」


「じゃあ、お前の目的とは何だ?」


「それは…」


 ぐぬぬ。たしかに、目的不明の人物が王子に近づいて来たら警戒もするか…。でも、どうする?話しちゃう?でも私が話すことで未来が変わって、もし王子達の仲直りイベントが無くなったら…。でも、今のままじゃシュヴァルツに近づけなくなっちゃうし…。話すしかないか。シュヴァルツと会えなくなったら、何もできなくなっちゃうし…。


「わたくしの目的を話します。けれど、シュヴァルツ殿下には秘密にしてください」


「それは私が決めることだ」


 くそう。内緒にしてくれても良いじゃん。ゲオグラムのケチ。


「わたくしの目的は……シュヴァルツ殿下とヴァイス殿下の仲直りです」


 ゲオグラムがこちらを向いた。その顔には驚きがある。


「何?」


「ですから、わたくしの目的は、シュヴァルツ殿下とヴァイス殿下の仲直りです」


「分からない。何故お前がそんなことをするんだ?」


 何故、か。たしかに不思議だよね、いきなりよく分からない女がこんなこと言い出したら。でも、王子達に仲直りしてもらわないと国がヤバイのだ。


 ゲオグラムの顔が能面みたいに無表情になっている。シュヴァルツとヴァイスの不仲はとても繊細な問題だ。それはゲオグラムにとってもそうである。私みたいな良く知りもしない女が首を突っ込むのが不愉快なのだろう。人の不幸で遊ぶ下種と見られたかもしれない。でも、この問題を解決できそうなのが私以外居ないのだ。私が動くしかないじゃないか!


「それが、私にできる唯一の事だからです」


 私には政治も軍事も分からない。混乱しているこの国を導くことなんてできないし、アルルトゥーヤ帝国の侵攻をどうすれば防げるのかも分からない。そんな私に唯一できることが、王子達の仲直りだ。王子達が仲直りしても、アルルトゥーヤ帝国には勝てないかもしれない。私のしていることは無駄なのかもしれない。でも、私には他にできることが無いのだ!


「貴様に何が分かる!」


 ゲオグラムが激昂する。その整った顔は歪み、人を殺せそうな程の憤怒だ。今、私が生きているのは奇跡かもしれない。正直すごく怖い。あまりの恐怖に足がガクガク震えてしまう。でも、逃げない!


「良く知りもしないくせに適当なことを言うなよ、女ぁ!両殿下を仲直りさせるだと?そんなことができるなら、私がとうに昔にやっている!無理なのだ!私が何もしていないとでも思ったか?知恵を絞り、幾度も試みた。だが無理だった!」


「無理じゃありません!お二人を仲直りさせることはできます!できるんです!」


 足の震えは止まらないし、声は震えて裏返ってるし、堪えていた涙も流れてしまった。それでも、私はゲオグラムに負けないように、自分を叱咤するように叫び返した。


「無理だ!」


「できます!」


 お互い息を切らして叫び合う。どうして分かってくれないのかしら。ゲオグラムの石頭!減る物じゃないし、試させてくれても良いじゃない。ケチ!


「はぁ、はぁ、お前も頑なな奴だな…。その自信は何処から来ているのだ…」


 私は家族の運命も背負っているのだ。簡単に諦めるわけが無い。ゲオグラムが睨み付けてくるけど、私も負けじと睨み返す。


「……嘘を吐いている者の目ではないな。いったいどうやって両殿下の仲を取り持つ?」


「手紙です」


 言ってから、私は失敗を覚った。ヤバイ、手紙のイベントはまだ先の話だ。ヤバイヤバイどうしよう?


「何を言うかと思えば、手紙だと?そんな物、ヴァイス殿下の元にたどり着く前に側近に握り潰されるのが落ちだ。話にならんな」


 ゲオグラムが私に興味を無くしたように見えた。マズイ。ここでゲオグラムに見放されたらシュヴァルツに会えなくなる。なんとかしてゲオグラムの気を引いて信頼を勝ち取らないと!手紙のこと言っちゃったし、もう全部言っちゃうか?えぇい、言っちゃおう!

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ