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6 ゲオグラムの詰問

 コンコッココンコンコン


 リズミカルに扉をノックする。別に遊んでいるわけじゃない。実はこれ暗号なのだ。此処は林の中の木々の迷路を抜けたゴールであるテラスへの扉。遂に私はこの扉を使うことを許されたのだ。毎回木々の隙間を這って行くのは大変だからね。シュヴァルツにお願いしてみたのだ。それにしても、暗号って…男の子はそういうの好きよねー。女の子も秘密のやり取りとかは好きだけどね。


 ガチャリと扉が少し開くと、ゲオグラムが顔を覗かせる。ゲオグラムが素早く周囲に目を配ると私を見た。


「一人か?」


「もちろんですわ」


 ちゃんと後を付けられないように確認してきた。シュヴァルツはキャーキャー騒がれるのが嫌いだ。此処には私一人で来ることにしている。


「入れ」


 漸く扉が開かれ、入ることを許された。いつも思うんだけど、念入り過ぎない?


 扉の中に入ると、すぐに扉が閉められる。歩いてテラスに向かおうとすると、私の前にゲオグラムが立ちはだかった。あの、邪魔なんだけど?私は頭一つ分上にあるゲオグラムの顔を見る。


「殿下はいらっしゃらない」


「え?」


 今日シュヴァルツ居ないの?まぁ会う約束をしているわけじゃないし、居ないこともあり得るか。でも、なんでゲオグラムは此処に居るんだろう?いつもシュヴァルツと一緒に居るのに。


「今日はお前に聞きたいことがある」


 ゲオグラムの瞳が細くなり、こちらを見下ろす顔は真剣そのものだ。なんか怖い。


「わたくしに聞きたいことですか?」


 その時、ゲオグラムの左手が跳ね上がり、私の顔のすぐ横を高速で通り過ぎ、扉にぶつかり大きなドォンと音を立てた。え?何!?私は何一つ反応できなかった。ゲオグラムの左手が動いたと思ったら、いきなり耳元から大きな音が響いてきた感じだ。怖い。


 今此処にシュヴァルツは居ない。ゲオグラムと二人きりだ。でも、そこに甘いものなんて一つもない。あるのは恐怖だけだ。怖い。私何されちゃうんだろう…。


 ゲオグラムは真剣な表情でこちらを睨み付けてくる。私は蛇に睨まれた蛙の様に恐怖で身動きが取れなくなってしまった。ただただゲオグラムの顔を見返すことしかできない。ゲオグラムの顔がぐにゃりと涙で歪む。ヤバイ私泣いちゃう。


「お前の目的は何だ?誰に頼まれた?」


 私の目的?誰に頼まれた?私の目的は王子二人を仲直りさせること。誰に頼まれたわけでもない。一体何を言っているの?


 でも、この言葉で、私の中の記憶が蘇った。そうだ!たしかゲームでもゲオグラムに同じ質問されるシーンがあった!でもアレはゲオグラムに壁ドンされるときめきシーンのはずだけど…。え?もしかしてこれ壁ドンなの!?迫力あり過ぎて恐怖しか感じないんですけど!よくコレでときめけたなヒロインちゃん!心臓に毛でも生えてるのかよ!


「答えろ」


 えっと、ヒロインちゃんはなんて答えたんだっけ?ダメだ恐怖でパニクって思い出せない。これはもう正直に言うか?でもなー…下手なこと言ったら何されるか分かんない。


「答えろ!」


「ヒッ」


 怖い怖い怖い。なんで怒るのよ!なんで私がこんな目に遭わなくちゃいけないの!ごめんなさい。言いますから許してください!


「も、目的はあ、ありますけど、誰かに頼まれたわけじゃありません」


 言ってから、しまったと思った。ゲームでヒロインちゃんはこんなこと言ってない。私からゲームのシナリオから外れてしまった。どうしよう?!でも、ゲームでヒロインちゃんが何て言ってたかなんて覚えてないよ!


「お前の目的は何だ?」


「それは…」


 どうしよう?正直に王子達の仲直りが目的だって言う?でも、攻略に影響が出たらどうしよう?最悪、王子達の仲直りイベントが無くなってしまったら、取り返しがつかない。


「い、言えません…」


「答えろ!」


「言えないんです!」


「では、お前が今後殿下に近づくことを禁じる!」


「そんな!?」


 そんなことされたら、攻略以前の問題よ!ゲームではこんなシナリオなかった。どうすればいいの!?

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